※引用:京王電鉄
橋本の隣駅で穴場とも言えるような多摩境駅
西東京で電鉄事業や都市開発事業などを展開する京王電鉄は、2023年の冬に京王相模原線の多摩境駅前で、新複合施設の「京王多摩境駅前ビル」を開業すると発表した。
京王相模原線は、京王線の調布駅から分岐し、橋本までをつなぐ路線だ。多摩境駅は橋本駅の1つ手前に位置している。
新宿からの所要時間は40分~50分程度で、京王本線との分岐駅になる調布駅からは20分程度の距離だ。
京王相模原線終点の橋本は西東京における都心の1つと言える街で、周辺ではリニア新幹線の新駅である神奈川県駅(仮称)の開発も進んでいる。
また、多摩境駅の東隣駅である南大沢の駅前には、三井アウトレットパーク 多摩南大沢や東京都立大学の南大沢キャンパスなどがある。
多摩境駅はもともと多摩ニュータウンの西端に位置している駅であり、ある意味ではニュータウンの名残とも言えるような駅ではある。
しかし、現在では開けた2つの街に挟まれており、穴場のエリアとも言えるだろう。
リニア新幹線の開通時期に目途が立たないことはネックだが、橋本駅の周辺で神奈川県駅(仮称)の建設が持ち上がって以降、その存在感は増している。
西東京のローカルタウンであり、生活には車が必要な場所ではあるが、新宿まで40分~50分程度の距離であることを考えればそこまで悪くはない。
ちなみに、多摩境駅の東にはコストコの多摩境倉庫店があり、南大沢のアウトレットパークと同じく、こちらも土日祝日には多くの人で賑わっている。
コストコの沿道となる多摩境通り沿いには、ホームセンターのカインズやスターバックス、トイザらス・スシロー・スーパーアルプスなど、様々な路面店が並んでいる。
このため、多摩境駅周辺の通りでは、土日には多くの車が集まって渋滞が起こることも少なくない。
多摩ニュータウンというとネガティブなイメージを持つ人も多いかもしれないが、多摩境駅の周辺では、多くの人がイメージするよりも人が集まっているのが実態だ。
倉庫やクリニック・スーパーなどが入る複合施設
京王電鉄が今回建設する複合施設の規模は、敷地面積約6,800㎡・延床面積約16,800㎡、地上5階建てだ。
郊外の複合施設として見ると敷地はそこまで広くない。しかし、延床面積が10,000㎡を超えているので、そこそこ大きな施設になるだろう。
なお、施設内には株式会社富澤商店の倉庫や本社が入る。富澤商店は、お菓子やパンなどの食品に加えて、食品製造にかかわる器具などを製造・販売している会社だ。
創業が1919年と老舗の企業であり、ホームページを見ると従業員数は2021年6月時点で1,200名となっている。
京王電鉄が発表したプレスリリースには、倉庫内業務や拠点間配送業務の一部を京王電鉄の関連会社が担うことで、富澤商店の物流業務を支援する予定だという。
多摩境駅周辺では、富澤商店の従業員が集まってくることに加えて、物流関連の雇用喚起なども期待できそうだ。
なお、新複合施設には、そのほか皮膚科・小児科・歯科といったクリニックや、食品スーパーの京王ストアなどが入る。
もともとニュータウンの一部として開発されたエリアであるだけに、多摩境駅の周辺で供給されている住宅は分譲住宅が中心的だ。
一方で、東京都立大学に加えて多摩美術大学や東京工科大学など、周辺には複数の大学キャンパスがあるので、学生の賃貸需要も見込めるエリアではある。
競争を避けるのならば、目を向けてみても良いエリアではないだろうか。
取材・文:
(はたそうへい)