ギャラリー、レストラン、マンションが同居
前橋市は、上越・北陸新幹線の停車駅ではないが、群馬県の県庁所在地である。あの世界文化遺産である富岡製糸場より先に日本初のイタリア式製糸場が作られ、絹産業で栄えていた。関東圏初として昭和19年に開設された日銀支店もある。
そんな前橋で、昭和の感じがするレトロな繁華街や地方百貨店、商店街など懐かしい雰囲気の通りを歩いていると、突如、ガラス張りの開放的な1階が緑のツタの下がる白い箱を支えるようなモダンなビルが建っている。
この「まえばしガレリア」は、1階には有名ギャラリーやフレンチレストランが入っている。そして2階から4階にかけては全26戸の分譲マンションという複合施設になっているのだ。
開業したのは2023年5月。「発見がある暮らし。創造がうまれる場所。」をコンセプトに設計は、東急プラザ原宿の外装や屋上のデザインが話題の建築家・平田晃久氏が手掛けた。
プロデュースは、空間デザイナーとして著名な谷川じゅんじ氏。緑が伸びやかに垂れ下がる白い住戸のユニットが高低差をつけて屋上を囲む。こんな斬新な建物が商店街にと驚かされる。
著名建築家が設計した建物が集結する前橋
前橋には、実は著名建築家による建物が目白押しだ。300年の歴史を誇る旅館「白井屋」の躯体を活かして藤本壮介氏が生まれ変わらせた「白井屋ホテル (SHIROIYA HOTEL)」、その隣には建築家の谷尻誠氏と吉田愛氏(SUPPOSE DESIGN OFFICE)が設計したサテライトオフィス、カフェ、店舗、住戸の入る重厚な複合ビルが建っている。
白井屋ホテルの事業に着手したのは地域活性化を支援する前橋出身の株式会社ジンズホールディングス代表取締役の田中仁氏。ばばっかわスクエアには、同社のサテライトオフィスが入る。
そのほか、すぐ近くの商店街「前橋中央通り」には、これまた気鋭の建築家が設計した和菓子店やカレー店などが目白押しで、クリエイターを引きつけていることがうかがえる。
地方だから試せる先端の建築やデザイン
なぜ前橋に?と驚かされるが、それには様々な理由がある。
歴史的に前橋は民間人の『前橋二十五人衆』が県庁を誘致するなど民間主導の街への取り組みがはかられて来たこと。前橋がアートや建築を中心とした創造的な街づくりを市と民間の共創で推進してきたこと。
そうした、背景の中で生まれた白井屋ホテルは、建築内装設計の藤本壮介氏をはじめ、客室デザインやアート作品をレアンドロ・エルリッヒ氏など世界の著名クリエイターが手がけたことが、後続の建築家やデザイナーを誘引したこと。
そして、やはり地価も安く、進出して来やすかったことなど。昭和の面影も濃いなかに、創造性の高い施設が多いのが実に刺激的だ。
商店街で一際目立つまえばしガレリアの26戸のレジデンスは、30㎡から85㎡まで。うち数戸は賃貸として活用されている。
3階のロフト付きワンルームは、専有面積26.98㎡でロフトが7.11㎡。10.24㎡もある広々したテラスがあるのが特 徴。賃料は128,000円(共益費6,000円別)。数戸は民泊活用の準備を進めている。
独立性を感じる住戸構成、白を基調した室内、ステンレスのワークトップのみで収納部などは自由にアレンジするシステムキッチン、大きく取られた窓から外光の入るバスルーム。こんなところに住んでみたいと思わせるデザイン性の高さだ。
2024年3月末日現在、空き住戸の分譲価格は3,480万円、間取り1DK、専有面積35.05㎡でテラスが14.30㎡。購入後はサテライトSOHOとして使用しているオーナーもいるとのこと。
クリエイターを引きつける街で、ちょっと過ごしてみたいという気をそそられる。
執筆:
(おのあむすでんみちこ)