複数の大学を誘致し、街の活性化をめざす四日市市
県庁所在地である津市を押さえ、三重県でもっとも多くの人口を有する四日市市。
現在同市は、近鉄四日市駅前の巨大バスターミナル『バスタ四日市』を含む中央通りの再編事業や、新図書館を備えた複合施設整備など、複数の市街地再開発プロジェクトを推し進めている。
その一つとして検討され近年注目を集めているのが、JR四日市駅前への新大学誘致だ。
同市は大学誘致の方針を策定するため、有識者による「四日市市大学構想策定委員会」を設置。2023年5月からこれまで5回の有識者会識を開催してきた。
同会議が2024年3月にとりまとめた基本構想によると、誘致主体として想定しているのは、国立大学をはじめとした公立大学の設置や既存の私立大学の移転等。
一つの大学の枠を超え、 複数大学の設置・協力によるシナジー効果を得られるよう、今後検討を継続するとしている。
四日市市によると、同市の18 歳人口のピークは1966年で、約249万人。これが2022年には112万人にまで減少し、2041年には約 79 万人になると予測されている。
一方で大学進学率は上昇しているが、三重県では身近に大学を含めた高等教育を受ける環境が少ないうえ、学べる分野も限定されており、大学選択の幅が狭い。
また、四日市は名古屋までのアクセスが良いため、学生が県外に流出してしまうという課題も抱えているという。
もしJR 四日市駅前に三重県内や東海圏の既存の大学にない分野を学べる環境が整えば、県内外から学生を呼び込むことができ、街の活性化にもつながるという考えだ。
三重大学が工学系を中心とした学部設置を検討中
2024年2月16日、四日市からの設置要望を受ける形で、三重大学と同市が「JR四日市駅前における三重大学新教育研究拠点の設置に向けた検討着手の連携協定」を締結した。
この協定はJR四日市駅前における新教育研究拠点の設置を相互に連携・協力して進めることを目的としたもので、新拠点の設置に向けた具体的な検討を開始し、2024年度末を目途に結論を得ることをめざしている。
具体的な構想はこれからだが、三重大学は四日市駅前に工学系を中心とした新しい学部を設置することを検討しているとのこと。
もしも実現すれば、津市以外で初の三重大学キャンパスが誕生することとなる。
ちなみに四日市市の玄関口となっている近鉄四日市駅の1日の平均乗降者数が3万7287人なのに対し、JR四日市駅の平均乗降者数は3536人で、約10分の1に留まっている。
また、家賃相場も近鉄四日市駅が1Kで6.01万円、1LDKで8.02万円なのに対し、JR四日市駅は1Kで4.75万円、1LDKで7.05万円(LIFULL HOME’S調べ)と、割安だ。
今後JR四日市駅前に三重大学のキャンパスおよび新大学が複数設置されることが決定すれば、同駅近辺の賃貸住宅市場にとってかなりの追い風となり、格差縮小につながる可能性もある。
今後の四日市市と三重大学の話し合いはもちろん、新大学誘致計画の行く末にも注目していきたい。
健美家編集部(協力:
(さいとうかずみ))