第24話 
2009年ビル市況は中小規模に注目、東京は悲観論までいかない ( 20 )

昨年後半からオフィスビルの空室率悪化が取り沙汰される報道が目立っている。 09年 1月末時点の都心 5区の空室率はCBREが 3.4%、三鬼商事が 4.93%だった。 3.3平方メートル当たりの平均募集賃料はCBREが 1万5,310円、三鬼商事が
2万1,943円。この両調査会社の空室率の数字には差異が認められるが、これは、三鬼商事は、テナントから解約予告が出た時点で空室としてカウントするほか、未竣工物件のビルでもテナント募集を始めている場合も空室として認識するからだと思われ、言ってみれば予見性を持った数字になっているからだろう。三鬼商事の調査対象は 2,602棟 ( 新築ビルは 42棟 )。CBREは情報を開示していない。

こうした調査機関によって違いがあるものの、大手証券の不動産アナリストは、
「 今年はビルマーケット全体としては 2 〜 3ポイント空室率が上昇する 」 という予測を立てている。各企業とも景気先行きに不安があるので、オフィスにかけるコストを抑える傾向は依然として強いのが背景だ。現状で言えば、高額な賃料ビルが嫌われているのは事実。しかし、その一方で、業界関係者は物理的に需要が衰えたわけではないという見方を持っている。

改めて 2009年のビル市況を展望すると、前半は大型ビルの空室が目立つものの、後半から来年はじめにかけて大型ビルに需要が戻ってくる見通しが根強い。トレンドとしては、ビルの築年数が経過しているものの、立地条件がよく割安な賃料が注目される 1年という見方ができる。ただし、SクラスやAクラスといった高いグレードのビルが賃料を下げてくれば、一時的に中小規模ビルに 避難 していたテナントが
グレードの高いビルに戻ることが考えられ、中小型ビルが注目をされるのも今年限りだろうという見方が強い。

複数の専門家からのヒアリングによれば、前述した空室率が 2 〜 3ポイント上昇することによるビル保有企業の収益への影響についても限定的だ。事業環境が厳しいことは確かだか、分譲マンションなど開発事業専業のようにバタバタと倒産することはない。東京の場合は、ビル賃料には下げる余地が残っているので、賃料を下げさえすればテナントを確保することが可能だからだ。ただ、東京圏で市況が厳しいエリアはある。それは横浜。横浜は 2009年の供給量が多く、今年は相当に空室率が上昇し市況が荒れる可能性をはらんでいる。

一方、地方の場合は、賃料を下げるのりしろがほとんど残っていない。大阪は、最もグレードが高いビル賃料でも坪当たり 3万5,000円程度。東京の賃料と比較するとおおよそ半分だ。たとえ賃料を下げたとしても事業量自体が限られているので、テナントの入居も限られる。名古屋は 2013年まで大量供給が続く。福岡も当面、大量供給が続くので、この 2つの都市の空室率は相当高まる。仙台も 2010年まで大量供給が続くので、市場は悪化の一途をたどる可能性が高い。比較的、地方において市況がいいのは札幌。札幌は新規ビル供給が今年はないからだ。広島と岡山は 2棟ずつ新規供給があるものの、これまで供給がほとんどなかったことで低迷が続いていた。供給不足が広島・岡山のビルマーケットの停滞につながっていたから、逆に 2棟の供給によって活性化につながると見られる。

いずれにしろ、東京と地方都市の事業環境の差が大きいことが改めて浮き彫りになるとともに、今後さらに都市・街ごとの格差が拡大する方向性にある。

これまでビル賃料上昇の牽引役だった外資系金融機関の動向については、業務縮小の動きは出ているが、日本から完全撤退という話は出ていない。おそらく欧米などと比較すれば総体的に日本のマーケットが傷んでいないことと、日本の不動産が有望なマーケットであるという認識が働いているからだと思われる。とはいえ、欧米系の金融機関の手持ち資金が乏しくなっているのも事実で、事業自体はセーブしていく方向性にはある。サブプライムローン問題や金融市場の混乱が収まれば、資金を日本に再度投下する可能性は高く、必ずしも東京のオフィスビルマーケットに関しては悲観論まではいかない。

2009年2月17日掲載

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