なぜ住宅の家賃には消費税がつかないのか?  33,633アクセス

第7話では、「 消費税の納税の仕組み 」について説明しました。要は、各物流段階において、事業者は納税するが、事業者は、預かった消費税を全部納税する訳ではない、ということですね。

これを税法では、【 多段階課税+仕入れ税額控除 】といいます。この2つは消費税において、一対=表裏をなす、根幹の仕組みということになります。

今回のコラムでは、同じ大家さんでも「 事務所を賃貸している大家さんと、住宅を賃貸している大家さんの違い 」についてお話します。

■かつては家賃にも消費税がついていた

多くの大家さんがご存じないのですが、実は消費税導入当時( 平成元年 )は、住宅家賃も事務所家賃と同じく、【 課税 】の対象でした。当時の消費税率は3%でしたので、消費税導入前の家賃が10万円ならば、10.3万円を入居者様から預かりました。

その後、平成3年の10月より税制が改正され、住宅家賃については【 非課税 】となり、今日に至っています。つまり、10.3万円の家賃+消費税を、10万円の家賃に下げた、ということですね。

前回、説明した【 多段階課税+仕入れ税額控除 】というのは、間接税としては「 完璧な制度 」といえます( 零細企業が売価に5%を転嫁出来ない、預かった消費税を納税できない、というのは運用上の問題といえます )。ところが、ここに非課税という例外がはいると話は別になります。

■赤ん坊は消費税を払えない

もともと税の世界には「 担税力 」という言葉があり、「 税金を払えるものが払う 」という考え方があります。ですから、所得税は「 累進課税 」となっていますし、諸控除後の課税所得がゼロであれば、納税義務はありません。
間接税についても、基本的に「 間接税が掛かっているアイテムを購入する担税力がある 」と見なされます。つまり、タバコを吸うカネがあるなら、納税しろという考え方です。

ところが、消費税の場合は全く収入のない赤ん坊も、ミルクを飲む際に消費税を負担させられる、という状況が発生します。そこで、現消費税法は、

1、消費の概念にそぐわないアイテム
2、社会政策上、消費税を掛けないもの

とに限定して、【 非課税 】という制度を取り入れています。

住宅家賃については、既述のように平成3年から社会政策の一環として、非課税となりました。これにより、どのようなことが起きたかをこれから説明します。

■消費税率が上がるととキャッシュが減る現実

まず、簡単な質問です。

Q:消費税導入前に家賃が10万円だった場合、入居者の負担額は、消費税課税ならば10.5万円です。それでは、現行の課税の場合、家賃はいくらに設定すればいいでしょうか?”

A:家賃は非課税だから、10万円!


ほぼ100%の大家さんが、そう答えるでしょう。でも、そうなると、第6話でお話したように、仕入れに関わる税率が変わると、どんどんキャッシュが悪くなってしまう・・・。かといって、10万5000円とするのも、図々しい気がする・・・?
実はこの答え、両方とも間違いではありません。この問題に、決まった回答はないのです。

ここまで読んで、
「 あれ? 事業者って、消費税の納税義務者ではあるけれども、税負担は無いはずだけど・・・? 」
とお気づきの方も多いでしょう。
確かに、その通りです。しかし、驚くことに、住宅大家は「 事業者ではない 」ので、話がややこしくなります。

■住宅貸し大家は「 最終消費者 」と同じ?

正確に説明すると、今まで私が「 事業者 」と書いてきたのは、「 課税事業者 」に限定され、我々のように住宅向けに部屋を貸している家賃の収入しかない大家は、「免税事業者=事業者ではない」という位置づけに置かれています

もっと簡単に言えば、住宅用として家を貸している大家は消費税法上、最終消費者と同じ
、ということです。だから、仕入れに関する消費税は自分で負担しろ、と。

実際、我々のような住宅を貸している大家は、一般の消費者と同じように「 納税義務 」がありません。しかし、一般の消費者は、自分で購入したものを販売しません。全部、自分で消費します。だから、「 最終消費者 」なのです。

ひるがえって、我々はどうでしょうか? 賃貸物件が壊れれば修理し、修繕費+消費税を払いますよね? でも、これって【 自家消費 】ですか? ちがいますよね? 家賃という収入を得るためのコスト( 仕入れ )ですよね?  つまり、入居者様にその修理代は家賃という形で【 再販売 】しているんです。

ちなみに、事務所向けの部屋を貸している大家の場合は・・・何も問題ありません。事務所貸し大家は「 課税事業者 」ですから、消費税の仕組みが完璧に機能します。

■表が良ければ、裏は知らない?

このコラムの冒頭で、消費税の仕組みを【 多段階課税+仕入れ税額控除 】と説明し、この2つは一対=表裏一体のもの、と説明しました。ところが、【 非課税 】という例外においては、その表裏一体が裏目に出ることになります。

なぜなら、その場合には「 多段階課税のみ課し、仕入れ税額控除を認めない 」という不合理がまかりとおる、まさに「 表側だけを見て、裏は知らない 」状態になってしまうからです。

この話、もう少し続きます。

不動産投資の収益物件

落合淑彦さんのご紹介

落合さん

4棟50室管理の専業大家
行動する大家さんの会スタッフ
全国大家ネットワーク会員

行動する大家さんの会のHP
行動する大家さんの会スタッフのブログ
全国大家ネットワークのHP

1959年生まれ、東京都出身

早稲田大学卒業後、事務機メーカーに入社、海外営業および国内マーケティングを担当。

2006年、相続をきっかけに23年間勤めた会社を退社し、専業大家に。

2011年、不動産賃貸業を取り巻く環境や法律の理解と改善を目的に「 行動する大家さんの会 」を大家仲間6人で設立。

話題の更新料問題、消費税問題などに真正面から切り込むちょっと過激で真摯な姿勢が、大家仲間から珍しがられている( 「 珍しがられている 」の部分は本人談 )

■所有(管理)物件

・RC4階建て14戸
 ( 築40年の木造アパートを建て替え )

・RC3階建て12戸
 ( フルリノベーション中 )

・RC4階建て20戸
 ( フルリノベーション中 )

・軽量鉄骨4戸

場所はすべて静岡市内。
5年前に物件を引き継いでからの平均空室率は3.7%。


全国大家ネットワーク

   10. なぜ建築費は還付できてボールペン代はできないのか?   ( 5,708 アクセス )
   9. 号外!過激な大家は【TPP参加議論】をこう考える   ( 5,856 アクセス )
   8. なぜ住宅の家賃には消費税がつかないのか?   ( 33,633 アクセス )
   7. 築23年RC一棟にかかった1部屋当たりの消費税金額は?   ( 6,239 アクセス )
   6. 皆の知らない「大家と消費税」の微妙な関係   ( 7,352 アクセス )
   5. 企業でも消費者でもない「大家」って何者?   ( 4,727 アクセス )
   4. 被災地の大家はみんな悪者?   ( 5,608 アクセス )
   3. 素人大家が空室率3.7%を実現できたワケ   ( 5,748 アクセス )
   2. やられっ放しでいいの?大家さん!!!   ( 5,580 アクセス )
   1. 過激な大家、のっけから吠える!   ( 5,787 アクセス )