はじめまして。今月から数回にわたり、「 高齢者向きアパート 」についてのコラムを書かせていただく赤尾宣幸です。初回は、「 高齢者向きアパートって何? 」 という方のために、その特徴や普通のアパートとの違いを説明します。
高齢者向きアパートは、融資を受けやすいという特徴や、社会貢献できるという魅力もあります。全国の賃貸物件で年々、空室が増える一方で、高齢者は増え続けています。本コラムを通じて、一人でも多くの大家さんに興味を持っていただければ幸いです。

■ 初心者が利回り30%を達成
空室率が40%を超えているという茨城県土浦市。がら空きアパートが乱立しているような感がある。
その土浦市でアパート経営は初めてという大家が、2年間でがら空きアパート2棟を購入して満室に再生、利回り30%を実現した。
一棟目は築40年。土浦駅から徒歩50分。購入時は8室中5室空室で利回り8%。駐車場は4台しかなく、リフォームしたうえで格安家賃2.4万円にしても決まらないというありさまだった。
部屋の家賃を3.7万円で募集をかけ、満室にして利回り27%を実現した。これは取得経費、修繕費を含めた「 総投資額 」に対する利回りだ。取得経費を含まない買値に対する表面利回りは41%にもなる。
担保価値は期待できない物件だが、買値を上回る金額を、返済期間15年、金利1.5%、しかも固定金利での融資を受けた。
一棟目が満室となり、入居待ちも出たので、翌年に2棟目を購入。2棟目は築30年、荒川沖駅から徒歩70分、10室中5室空室で当初利回り12%。
こちらも駐車場が4台しかなく、リフォームして家賃2.5万円で募集しても入退去が激しかった物件。これを家賃3.7万円にして満室とし、利回り30%を実現した。
融資額は購入費用を含めたほぼフルローンとなる金額を、固定金利1.15%、15年間返済という好条件での融資を受けた。諸費用を除いた買値に対する表面利回りは37%にもなる。
なぜアパート経営初心者なのに、このような高利回りが実現し、好条件の融資が可能になったのか? これを可能にしたのはもちろん本人の努力だが、もう一つの理由は「 高齢者向きアパート 」だからだ。
※この事例については、鈴木かずやさんの大家列伝で詳細を確認できます。
■ 高齢者向きアパートとは?
高齢者向きアパートは、私の16年に及ぶ介護事業の経営と、25年に及ぶ不動産賃貸業のノウハウを集大成したものだ。私は介護事業を通じて多くの高齢者の生活を身近に見てきた。
住まいに困って、仕方なく老人ホームに入る高齢者も見てきた。一方で空室で困っていても、高齢者には貸したくないと考える多くの大家がいる。これらをうまく結びつける仕組みはないかと考え続けた成果が「 高齢者向きアパート 」だ。
高齢者向きアパートの定義は、「 高齢者が暮らしやすい工夫を施した、入居を高齢者に限定しない多世代居住のアパート 」だ。特徴としては以下の5つになる。
1.高齢者も安心して生活できるアパート
アパートの部屋には「 高齢者も安心して暮らせる 」工夫を行う。高齢者が暮らしやすい部屋ならば、築年数、面積、戸数、立地等は大きな問題ではない。
2.入居者は高齢者に限定しない
入居者を高齢者に限定しないことで大家力が発揮できる。高齢者市場を取り込むことで賃貸の窓口が広がる。また、高齢者と若者が一緒に暮らすことで「 多世代入居のメリット 」が出てくる。
高齢者にとって、多世代と接点を持つことは元気を保つ力になる。また、火災などの非常時に若者が出火を通報してくれるだけでも、被害は確実に、しかも大幅に減らすこととなる。
3.食事・介護は提供しない
食事や介護などを提供すると老人ホームになる。老人ホームは届け出が必要だし、行政の指導も入ったりする。大家は食事や介護を提供せず、賃貸事業経営のみであれば、単なるアパートなので、老人ホームの届け出は不要だ。
4.バリアフリーへの改修はしない
バリアフリーへの過剰な投資はせず、将来の転用を容易にすることで、投資を増やさずに済み、経営リスクを減らすことができる。多くの高齢者にとっても、バリアフリーは必須ではない。むしろ、段差があれば転倒に注意するので、転びにくくなり、大けがをしにくく健康に長生きできる。
5.年金生活でも払える家賃
家賃は生活保護の家賃と同等に設定する。豊かな老後をすごせる家賃で住まいを提供する。掃除や洗濯など、自分でできることは自分でやれば、老人ホームより安いコストで生活できる。
節約できたお金を、趣味や旅行、孫への小遣いなどの楽しみに使うことで、より良い老後が過ごせる。

■ 高齢者向きアパートに必要なこと
上記の5つを実現するために、以下の3つをアパートに取り入れる。
1.高齢者が暮らしやすい最低限の設備を確保
手すり取付けや、危険個所の明示、転倒時の衝撃緩和対策、防火、防犯などへの工夫を行い、安全・安心な生活ができるようにする。
2.介護事業者等と提携した見守りを確保
介護事業者と提携することで、高齢者の健康管理がしっかりできる。介護事業者は、利用者さん( 高齢者 )の体調が悪いときは受診を勧めたり、家族に連絡したりする。これにより、孤独死のリスクがほぼ解消される。
3.高齢者だけでなく若者も入居する多世代入居
入居者は高齢者に限定せず、若者の入居も受け入れる。これは空室対策上有利なうえ、非常時には若者の支援も期待できる。例えば、火災の発生を知らせてくれるだけでもかなりの支援だ。これにより、高齢者や障害のある方も安心して暮らせる。
高齢者向きアパートは、社会貢献ができる「 事業 」だ。だから担保価値より事業性が重視され「 融資が受けやすい 」。公的補助にたよらないので「 自由に経営 」できる。さらに、成功すれば「 儲かるだけでなく社会貢献 」もできるので、大家としての喜びも大きい。
次回以降はさらに詳しく、「 高齢者向きアパート 」について紹介します。お楽しみに。