物件は戸建て1戸、ファミリータイプ区分所有8室、ワンルームアパート16室、いずれも築20〜50年の築古物件だ。ワンルームは年に1〜3室の入退去があるが、他はここ数年退去がない。
クレームは給湯機やエアコンの故障と、排水のつまり程度で年に数回だけだ。私が「 楽ちん大家 」なのには理由がある。今日はそれをお伝えしたい。

私のアパート
■ 退去の理由を考えて、回避する
厄介で面倒でお金がかかるのが入退去。退去を減らせばずいぶん楽になる。私の物件は退去が少ない。退去が少ないのは理由がある。退去の理由を考え、それに対して工夫をしているからだ。
スーモ調査の「 引越し理由ランキング 」によると、引っ越しの理由は次のようになっている。
1位:前住んでいた物件に不満があったから 22.0%
2位:前よりよい条件の物件を見つけたから 20.0%
3位:結婚したから 18.8%
4位:転勤になったから 17.3%
5位:賃貸の更新時期がきたから 16.8%
※参照:http://suumo.jp/journal/2015/06/17/92384/
2位:前よりよい条件の物件を見つけたから 20.0%
3位:結婚したから 18.8%
4位:転勤になったから 17.3%
5位:賃貸の更新時期がきたから 16.8%
※参照:http://suumo.jp/journal/2015/06/17/92384/
5位の「 更新時期 」は更新料がかかることがきっかけ。福岡にある私の物件は更新料というものがない。しかし、更新料がかかるエリアではこれをなくせば退去理由5位が理論上はなくなる。
3位と4位の結婚と転勤は、大家から見たら不可抗力にも思える。しかし、ファミリーがターゲットであれば、3位の結婚による退去は回避できる可能性が高い。
4位の転勤も子供の転校を嫌って転居しないかもしれない。こういったことからファミリーをターゲットにすると退去理由の3位と4位は回避可能となる。
1位と2位は物件力によるものだ。不満のない物件であったり、よそより良い物件であれば回避可能だ。また、住んでいる部屋が満足いくものであれば、3〜5位の理由があっても引き続き入居してもらえるかもしれない。
これらから考えると、「 いい部屋 」であれば長期入居が狙えるということになる。そこで、私はDIYで「 いい部屋 」を作りこんでいる。いい部屋だということを理解して住んでくれる人は、高めの家賃を納得して払ってくれるし、クレームも、滞納もない気がする。
■ 入居者にとっての「 いい部屋 」を提供する
いい部屋とは何か。ネットで部屋を探すとき、オートロックやフローリングなどで検索できるが、これらは探すときの条件であって、住んでいくうえでのいい部屋とは別だと考えている。いい部屋は「 不満のない部屋 」と考えている。
株式会社LIXIL住宅研究所の賃貸住宅の不満に関する調査報告によると、賃貸住宅の不満は、防音( 遮音 )性と、断熱効果や湿気だ。そして、不満を持っている人の35.2%が引っ越しを検討しているという。
※参照:https://www.lixil-jk.co.jp/pdf/150630chintai.pdf
大家としてこれを考えると、@防音性の高い部屋、A断熱性の高い部屋、B湿気のこもらない部屋を作れば、不満のない部屋、すなわちよい部屋ということになる。そして、私はそこに重点を置いた部屋作りをしている。
私の持つ区分所有物件は昭和50年代築が主流だ。断熱材は入っていても薄かったり、コンクリートがむき出しだったりする。結露でカビだらけだったこともある。
そこで、結露しそうな壁は既存の壁の上に断熱材を取り付ける。これによって部屋は狭くなるが、断熱性能は向上する。さらに、若干だが防音性も向上する。

既存の壁の上に断熱材を追加
また、石膏ボードを既存の壁に追加で張ることで、音が柔らかくなり、若干だが、断熱性も向上する。この、若干の差が、実は大きな差になったりする。

既存壁に石膏ボードを追加。防音性の向上を図る
これらの差は内覧時に現れる。「 あら、このお部屋、なんだか音が柔らかいわね 」と、ちょっとした差に気づいてくれる。
そこでこれらの工夫を説明する。「 だから少し家賃がお高めなんです 」と言っても納得してくれればほぼ決まり。クレームのない長期入居になる。
ワンルームアパートも、退去があれば、石膏ボードを既存の壁の上に追加施工し、次回の長期入居を狙っている。
■ クレームを出さないためにできること
予防措置で入居前にドアの調整、水栓・トイレなどのパッキン交換を行う。場合によっては水栓やシャワー交換も行う。さらにエアコンが古い場合は交換する。これにより、クレームはかなり防げる。
入居後にこれらに不具合が出ると、まず入居者さんに大きな迷惑をかける。そのうえDIYで対応するのは難しい。緊急性を要したり、時間が合わなかった場合は業者手配となるし、割高だったりする。また入居中のDIYは緊張する。クレームの芽は入居前に摘んでおくに限る。
それでも、設備故障などのクレームは発生する。その場合は速やかに対応する。誠意ある対応は入居者さんの信頼を高めることも可能だ。

フローリングにするときは断熱材を入れ、断熱性・防音性の向上を期待
■ 空室を埋めるために大切なこと
それでもやはり、退去は発生する。この場合は管理会社の出番だ。普段から管理会社と良好な関係を築くべく努力する。
私は、「 すぐに判断し、約束を守る大家 」を目指している。退去後に業者さんから「 ここをこうして欲しい 」などと提案があれば、期限を聞いて、必ずそれまでには実施することを心掛けている。
「 赤尾さんの物件は最優先です 」。そんな管理会社との関係こそが「 楽ちん大家 」になるための最大の秘訣かもしれない。