夜逃げされた物件が、鼻が曲がるほど犬くさかった。
複数の犬を飼っていた。
おまけに、猫も飼っていたようで、目と鼻にツンとくるオシッコの臭いが4LDKに充満している。
咳が出るし、喉が痛い。
室内は乱れている。
どんな生活をすれば、こんな状態になるのか。
九カ月分の家賃を滞納されたうえ、この現状。
人間として、アレだ。
退去ギリギリまで、部屋に入れることを拒否していた理由がわかった。
恥ずかしかったからだ。
まあ、気を取り直して、リフォームを実施。
バカくさい仕事だ。
■作戦その一
・クレゾール消毒液散布
とにかく臭くて、衛生的ではない家だ。
殺菌・消毒・消臭が必要だと思った。
そこで、決戦に備えて温存していたクレゾール消毒液を希釈して散布。
濃度は十分の一から二十分の一がいいと思ふ。
この方法は、ワタクシが勝手に編み出した作戦なので、正しい方法かどうかはわからない。
最初に、交換予定の壁紙と床に散布。
霧吹きをいちいち購入するのもバカくさいので、使い切ったファブリーズの容器を代用。
壁紙は、どうせ剥がして張り替えるので、この方法がいい。
台所のフローリング。
ここ掘れワンワン状態で、使い物にならない。
四年前、屯田兵一号と三号が張ってくれた床だ。
もったいないとは思いつつ、消毒液を大量に散布。
クレゾール臭くなるが、犬くさいよりマシだ。
木の奥まで染み込むので、いい。
削られた場所には、大工のジョーがパテを盛り、乾燥させる。
六畳全面にボンドを貼り、クッションフロアーに変更。
壁紙もフンパツして全面張り替えたので、ニオイは消えた。
剥がした壁紙
■作戦その二
・ステイン
リビング八畳のフローリング材は、2005年の物件購入時、高級素材を使って張り替えた。
二平米分、表面のクリアー塗装が剥げ、犬か猫に削られて、本来の木目が露出していた。
そこで、メープルという色のステインをLONGして、塗る。
進路が決まって、四月から女子大生になるマッピを現場に投入。
剥げたフローリングと、柱とドアの周辺も塗る。
美術が得意で絵が上手なマッピに最適な仕事だった。
「 おじちゃんのリフォーム、テキトーだね 」
とケラケラ笑いながら床を塗っている。
破格のアルバイト代を途中で支払う。
あと数日は入ってもらう予定。
■作戦その三
・床用油性ニス
粘度があって、厚みがある。塗りやすい。
ステインで着色、乾燥後、このニスを塗る。
一ミリ位削れた箇所も、回復する。
艶もあるので、WAX不要だ。
予定使用量の二倍あると、作業中に切らさない。
二缶に分けて買うと、保存も効く。
ニス用のハケは、一本150円から300円。
細いハケと太いハケ、種類が何本かあると便利だ。
予定使用数の三倍買っておく。
暖房を入れ、室内温度を上げると乾燥が早い。
労働力投入中のマッピ
■作戦その四
・軽トラック&タモリ
滞納者が残した残置物。
大きな家具は専門業者に持って行ってもらった。
四万円。少し高いか?
全部持っていくと、プラス六万円で如何かと提案されるが、自分で処理することにした。
まず、軽トラックを雪の中から掘り出す。
五速スティックなので、脱出しやすい。
エンジンの回転を上げ、クラッチをエイッとつなぐと、一発で脱出シタ。
タモリ氏( 仮名 )と、CASHFLOW202( 妹 )夫妻、年老いた母に、アルバイトを依頼。
皆、お金がもらえるとなれば萌える。
朝食を終え、ワタクシが到着すると、すでにタモリ氏は軽トラックで二往復。
三杯目の荷物を積んでいた。
主に、ピンクの袋に入ったゴミと大量のエロビデオだ。
このピンクのゴミ袋は、ワタクシが二十袋、配給した。
ゴミ袋に詰めただけでも、少しだけ、やる気があったようだ。
作業途中だったが、この時、破格のアルバイト代を先に支払う。
皆、さらに、頑張る。
四杯目で終わり。
合計、約十二立米だ。
市のごみ処理代金は重さから算出され、合計三千円弱だった。
軽トラックの荷台に、ゴミをダイレクトに積めるので、効率がいい。
さて、今回の損失、高級中古車一台分である。
しかし、物件が手元に戻ってきたことが喜ばしい。
退去勧告から一年半、その間、時々支払う。
敵の遅滞作戦だ。
堪忍袋の緒が切れたのが、三カ月前に、新しい中古車として、黒い大型ミニバンに乗り換えた時だった。
最初は友人にもらったと言い訳していたが、後に、購入していたことが判明。
家賃を払わず、新しい中古車を買う。
人間として、アレだ。
リフォーム後
電話、メール、面接で転居を話し合ったが、次第に、返信が来なくなった。
電話にも出ない。
仕方がないので、ドアに貼り紙をした。
「 テクノ様( 仮名 ) 」
と名字を大きく書き、筆ペンで、家賃の件で、大至急ご連絡くださいと書く。
他の人からは見えないように、名字の下で紙を折り曲げ、ドアと壁の間に養生テープで貼る。
帰宅していれば、この紙は剥がされているので、
住んでいることが確認できる。
数日後、連絡アリ。
案外、恥ずかしがり屋である。
そして、よく話し合って、退去日を決めた。
年末の忙しい時に、家を出されるとは……、とブツブツいっていた。
「 家賃をちゃんと支払ってくれれば、何でもなかったのですよ 」といふと、会話が止まった。
もう拝むしかない
CASHFLOW101
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2/7/2019