この物件に出会ったのは8号物件を購入した直後でした。以前からネットに出ていたのは知っていました。でも高いなぁ〜と思って問合せは入れていなかったのです。それもその筈、神戸の中心部で商業地といえば容積600%のエリアです。
道路付けも良ければ、土地が高くて当たり前です。ところが、ネットで晒し物になっていたこの物件の価格が、ある日急にガクンと下がりました。築年数もさる事ながら、空室が多過ぎて融資が付き難かったのだろうと思います。
価格が下がった次の日に内覧を手配してもらい、物件を見に行きました。駅からも徒歩圏、道路付けも良くて目の前はお寺さんなので高い建物が立つ心配がない。一目見て気に入り、その場で満額買付を入れました。
これまで指値して購入する事が普通だったので、満額買付を出したのは初めてでした( 笑 )。
■ 購入時の入居は16室中たったの2室!
丁度8号物件の工事が始まる直前で、ここで9号物件に手を出して良い物か悩みました。良い物件は瞬殺で売れて行きますし、取得出来るかどうかはタイミング次第です。
当時の銀行担当者にも相談し、物件価格+改修工事費の費用が空室だらけの9号物件で融資出来るかどうかを確認して貰い、行けると判断し契約に至った物件です。この当時のワタシからすれば、少し?かなり背伸びした物件だったと思います。
当時この9号物件16室中、なんと2室しか入居がありませんでした(;´∀`)
14室もの部屋を一気に改修工事を掛けて、大規模修繕もしなければいけません。それも8号物件工事の時期と同時進行です、相当な労力とパワーが必要な仕事となりました。
取得当時の9号物件です。

何の特徴もない外観でしたが、手を入れてやれば生まれ変わると確信した物件でもあります。よくお会いした方から、どのポイントを見ているのですか? と聞かれるのですが、こればっかりは口で説明しようがありません( 苦笑 )。
ワタシにもわからないのです。でも、見た瞬間絶対にこの物件は生まれ変わるとピンと来る物件はあります。この9号物件の時もそうでした。

室内は本当に築年数なりで、これといった特色もなく、このままでは募集の際に埋もれてしまう部屋です。

そしてバランス釜。まだ全然綺麗だとは思いますが、浴槽を交換したくらいでは目の肥えた賃貸仲介さんは内覧へ来られたお客様に勧めてはくれません( 苦笑 )。

この床の柄、昔良くあったフローリングなのですが、嫌いじゃありません(^^;)。でも、どうしても古臭く見えてしまうのは否めませんね。元の素材を生かすリノベーションだったら、この床のまま使っていたかもしれません。
■ 5ヵ月を要した初めての大規模修繕工事
これまで経験した事がないくらいの大規模改修工事だったので、どれだけ工期が掛かるのか見当がつきませんでしたが、結局、工事着工から完成まで約5カ月を要しました。
この物件で本当の意味で1棟マンションの大規模改修工程スケジュールを把握出来たのはとても良かったと思います。それまでは漠然としか工程を考えてなかったのですが、一度経験するとこれくらい掛るだろうとおよその日数、工程、ザックリした見積金額が計算出来る様になります。
改修工事後の外観です。

ちょっと後で失敗したなと思ったのは、外壁を先に試し塗りしてもらわなかった事です。上階部分と下階部分の色が違うのが写真でも分かります。最初に上階部分から塗っていったところ、あれ? イメージと色が違うと思い、途中でカラーを変更した為です。
カラー見本帳だけでは正確な色は分かりません、実際に下地に使用されている色によっても違って来ます。塗ってからイメージが違うということにならないよう、これ以降は最初に試し塗りで、確認するようになりました。

室内はこだわりの輸入建具を選びました。当時はまだメーカー建具で使いたいと思うようなものがあまりなかったからです。輸入建具の良い所は、無垢で発注すると自分の好きな色に建具を塗装出来る点だと思います。

しかし、輸入建具にも欠点はあります。メーカー建具より、金具類が弱いのです。何度も入居者が入れ替わり、建具を開け閉めする事を考えるとやはりメーカー建具に軍配が上がると思います。賃貸物件では丈夫な事、クレームが来ない様にする事も必須だと感じました。
■ 憧れの無垢フローリングの理想と現実
他のこだわりポイントは、全室無垢材の床を使用した事です。

この当時は良く、インテリア雑誌で無垢材を使われている部屋を見ていました。無垢の床を使用した部屋はワタシの憧れだったといっても過言ではありません( 苦笑 )。
しかし、今は賃貸物件には不向きだと感じます。堅いハードウッド系の無垢材は材料費が高く、安いパイン材等は柔らかくキズが付きやすい。キズが素材の味になってくれる様な物件なら良いのですが、そうではないケースも多いのです。

この写真はこの9号物件で退去した部屋の後のフローリングです。傷だらけになっています。実は隠れてペットを飼っていた入居者が退去した後の部屋です。

この場合は、無垢のフローリングを削るしか方法がありません。専門業者に依頼し、大型のサンダーで削ってもらいました。

この上から更にクリア塗装を掛けています。合板フローリングではこの様な原状回復は出来ませんので、無垢材フローリングのメリットだといわれるとそうかもしれません。
しかし、賃貸物件用リフォーム、リノベーションのポイントは1点のみ、原状回復しやすいこと。そのため、無垢材のフローリングはもう、使用しなくなってしまいました( ;∀;)
■ 賃貸住宅では「 原状回復のしやすさ 」が重要
原状回復といえば、古い物件で見掛ける和室の砂壁をシーラーで固めて、その上からクロスを貼っている手法を見ます。堅い丈夫な壁なら問題ないのですが、ボロボロの砂壁にクロスを貼って、次に原状回復する時はどうでしょうか?
きちんとシーラーで固まっていない壁がボロボロ剥がれ落ちて、結局下地のやり直しになる事もあります。この事から、和室を洋室化する場合、真壁よりも大壁を選択する様になりました。コストとのバランスを考えつつですが、下地だけはやり直すように意識しています。
賃貸住宅では原状回復しやすいリフォーム、リノベーションが必要だと思います。その事を考えずにリフォームをしてしまうと、退去毎にリフォーム費用が必要となり、結果高くコストが掛かってしまう事になり兼ねません。
その為には、しっかりとコスト意識を持って手助けしてくれる職人さんや工事業者さんの協力が必要不可欠です。協力してくれる工事業者さんや職人さんとWinWinの関係を築ける様に普段から意識しておく事も大事だと思います。
今考えると失敗だらけだなと思う9号物件ですが、それでも立地の良さが全てカバーしてくれています。常に満室稼働してくれているとても良い物件で、建替えるまで長期保有する予定です。今もずっと回ってくれています。
本日も最後までお読み頂き有難うございます。次回は「 業者さんから水面下情報の10号物件、競売取得の11号物件 」の登場です。ではまた次回、お会いしましょう〜(^^)/