物件の購入ってご縁だと思います。いくらでも購入できるだけの潤沢な資金力があればいいのですが、そうもいきません。それに、ワタシが検討する物件は取得して終わりではなく、必ずけっこうな工事が付いて回りますから、その分の費用やタイミングも考慮する必要があります。
こちらの物件も、追加費用が必ず発生するだろうなと思った物件でした。ただ、駅からも徒歩で駅近、物件自体もそれほど悪いわけではない。そんなわけで、このままスルーしてしまうのには惜しい物件でした。
■ 3つの空室で実験! 異なるリノベーション工事で入居者のニーズを探る
この物件は当初、ワンルームの3点ユニットという間取りで、3室の空室がありました。これをそれぞれ、以下のようにリフォームして欲しいと依頼が来ました。
①表面リフォームのみ( 3点ユニットはそのまま )
②キッチン入替、その他表面リフォームのみ( 3点ユニットはそのまま )
③3点ユニットをバストイレセパに分離、キッチンも入替
②キッチン入替、その他表面リフォームのみ( 3点ユニットはそのまま )
③3点ユニットをバストイレセパに分離、キッチンも入替
実際のビフォー写真がこちらです。
平成初期位の物件によくあるタイプの3点ユニットです。ワタシも過去何度も、この手の3点ユニット物件を手掛けた事がありますが、やはり集客力に弱いと感じています。
これをどう分離工事するのか? まずは、間取をご覧下さい。
上の画像が既存間取です。このトイレを分離させるには、押入れの場所に持って行くしかありません。
こちらが変更後の間取です。見てわかるように、収納スペースが極端に少ない部屋になってしまいます。ここにどうやって収納スペースを作るのか、いくらワンルーム物件でも収納が全くない部屋は好まれません。
まずはトイレの分離工事です。
お見苦しくてスイマセン。トイレを外した後はこんな風に、ユニットに穴が開いてしまいます。床下を通る排水を押入れ側に持って行く配管工事を行い、ユニット内部の穴を塞ぐ作業が必要になります。
押入れスペースをトイレスペースに造作してもらったところです。
丁度良い写真がなかったので、これは他の物件で3点ユニット分離をした際の床を塞いだ写真です。基本的には排水の穴を他の箇所へ切り替え、ユニット内部の穴を塞ぎ、上からユニットの床を貼り換える作業になります。
完成写真がこちら。床に貼ってあるのは浴室専用シートで「 NSシート 」という種類の防水用シートです。
分離して完成したトイレスペースがこちら。ちょっと狭いかな~?と思いますが、分離してないよりマシですね( 苦笑 )。
新たに作ったトイレの後ろに造作した収納スペースです。でもこれだけだと収納スペースが小さ過ぎます。
そこで、部屋中にあった梁の下側にハンガーなどを吊るせるようにポールを設置しました。ワンルーム物件なので、このポールがあるのとないのとじゃ大違いです。新しく造作してクローゼットを作るより断然安いです。費用対効果も抜群!
そしてキッチンですが、交換しなかった部屋のキッチンがこちらです。全室同じタイプのキッチンが設置されていました。キッチンを入れ替えた部屋はこちらです。
同じサイズなのですが、こんな風に足元が空いていると、色んな物を足元に置けるメリットがあると思います。女性目線的にいえば、キッチンの足元にはゴミ箱を置きたいです。
また、この物件は間取を見るとわかるとおり、玄関を開けてすぐにキッチンがあります。このキッチンと部屋へ繋がる通路が、内覧へ来たお客様が最初に目にする場所になります。
玄関を開けて直ぐの第一印象ってとても重要です。内覧へ来たお客様が一番に目にする箇所でグッとハートをつかめるかどうか。それにより、成約率が変わってくるといっても過言ではありません。
■ 「 工事をするより家賃を値引きした方がいい 」は本当か?
さて、3つあった空室の申し込み状況はどうなったでしょうか。リフォームの種類は3つ。①~③の中のどれが人気だったかを調べることで、今後、空室が出た時のリフォームの方針も決まってきます。
募集した部屋のデータです( 実際の数字と少し変えてあります )。
間取:ワンルーム3点ユニット
部屋の広さ:約20㎡前後、駅徒歩5分圏内
築年数:平成初期築RC
元の募集状況:敷金ゼロ、礼金2ヵ月、賃料48,000円
①表面改装のみの部屋、賃料ほとんど上げず
⇒募集賃料49,000円
②表面改装+キッチン交換のみの部屋
⇒募集賃料55,000円
③フル改装、キッチン交換、バストイレセパ工事、室内前面貼替
⇒募集賃料60,000円
部屋の広さ:約20㎡前後、駅徒歩5分圏内
築年数:平成初期築RC
元の募集状況:敷金ゼロ、礼金2ヵ月、賃料48,000円
①表面改装のみの部屋、賃料ほとんど上げず
⇒募集賃料49,000円
②表面改装+キッチン交換のみの部屋
⇒募集賃料55,000円
③フル改装、キッチン交換、バストイレセパ工事、室内前面貼替
⇒募集賃料60,000円
さて、どの部屋が最初に決まったかと言うと、、、答えは③。お客様は正直です( 苦笑 )。この結果から、次からの入退去の度にガッツリバストイレのセパレート工事をかけていけば、入居率が良くなる事がすぐにわかりますね。
ここでいつも出てくる意見に、「 そんな大きな工事をするより、家賃を値引きした方が良いのでは? 」というものがあります。リノベーションやリフォームをしても、家賃の値上げが期待できないエリアなら、それも戦略としてあるかもしれません。
しかし、この物件のエリアは賃貸需要も高く、最寄り駅は人気駅ですし、駅からも近くです。元々の物件力が非常に高い物件だと思います。そういった物件は入居率改善もそうですが、なにより入居者の質が重要になって来ます。
そして、安かろう悪かろうの物件にはそれなりの入居者しか集まりません。そういう物件は、管理に手間がかかることになります。そうなると、管理会社さんの足も遠のき、物件は荒れていきます。
きちんと手を入れることで、「 この物件はオーナーがきちんとお金を出してメンテナンスしていて、退去が出てもすぐに埋まる 」と、管理会社さんに感じてもらうことも、オーナーの大事な務めかと思います。
管理会社にとってイヤなのは、「 こうしたい 」と管理会社側から提案をしても、お金を出そうとしないオーナーさんです。それなのに「 部屋が決まらない 」としつこく言われると、彼らもやる気をなくしてしまいます。
実は、この物件は、①と②の部屋も今後、バストイレのセパレート工事を行う予定です。仲介業者さんがセパレートの部屋を一度見ているので、「 セパレートの部屋空いていませんか? 」と問合せが来るのだそうです。3点ユニット部屋はやっぱり人気薄いのが良く分かります(^^;)
ちなみに、③のお部屋に入居されたお客様は女性でした。「 この物件は今まで男性シングルの方しか申込みが入らなかったのに、女性のお客様にも選んで頂ける物件になった 」と、オーナーさんに喜んでいただけた時はホッとしました。
これからも仲介さんが好んでご案内したくなるようなお部屋、入居待ちができる物件を作っていきたいと思います。本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。ではまた次回、皆様お会いしましょうね~(^^)/