学校を卒業してからも同窓会で顔を合わせたり、個別にも連絡を取ったりしていました。おまけに、なんと! 彼女と旦那さんは私の開催した飲み会で知り合ったそうです(笑)。よくよく縁が深いと言えます。
彼女は私の職業を知っている数少ない友人の1人です。私が住んでいるのは田舎エリアですが、不動産をやっていると言って良い顔をされた事がありません。その為、それほど親しくない相手にあえて自分の職業を伝えることはしません。
この友人とは、実家が近く、今も遠くない場所に住んでいますが、頻繁に会う事はありませんでした。それが偶然、昨年末に道で出会いました。その時は挨拶だけして別れたのですが、年が明けてから相談の電話がありました。
■ ダンス教室の移転先に、ウチの空き物件がぴったり!?
彼女は職業ダンサーで、ダンス教室を運営しています。今借りているダンス教室の建物が老朽化で解体に入るため、3月末までに出て行って欲しいと退去を迫られているが、代わりの教室になる場所が見付からないという相談でした。
市内でも人気駅の徒歩圏内で、教室面積20坪を超える場所はなかなか安くは借りられません。ましてやダンス教室は、大音量の音楽と共に、ダンスによる騒音や振動なども問題になり得るため、普通の貸主さんだと嫌がられます。
希望を聞くと、1階か地下の物件、もしくは1棟物件で倉庫のようなものが良いとのこと。既に探し始めて1年以上経つのに、全く見付からないという話でした。確かに、条件を聞く限り難しそうな案件だと思いました。
しかし! 丁度、彼女が探している駅の徒歩圏内にあるウチの物件がありました。しかも、1階の倉庫部分が、貸し出しもせずに空いています。なんという偶然!そんな事って、普通はあり得ません。

購入後ずっと空きだった倉庫部分
その物件を貸していない理由は、物件1階の奥にあり、使用用途が思い浮かばなかったからです。倉庫として貸し出すには、車が入らない場所なので現実的ではないと思いました。
バイク車庫もいいかなと思いましたが、大型バイクは入らないサイズでした。小型バイクなら置けますが、シャッター付きのバイク置き場を借りる方は高級大型バイクに乗る方が中心なので、厳しいです。
「 ここをダンス教室に改装すれば使えるんじゃないか? 」と考えて、彼女へ提案しました。すると、場所を気に入り、是非とも見積をして欲しいという事になりました。
■ 高額な防音工事と、オーナーとテナントの工事費負担割合
ダンス教室にする為には、完全防音室にしなければいけません。この物件の上階は住居系ですので、万が一にも入居者クレームが出ないように、音楽室レベルの防音性能が求められます。
ここからは余談ですが、カラオケレベルの防音室と、音楽教室レベルの防音室では防音性能が異なります。
部屋の防音性能は、Dr値という遮音性能の等級で評価されます。Dr値と人の聞こえ方( 感じ方 )の対応は下記表のような関係になっています。音楽教室防音工事では、Dr-60〜Dr-65が目標値となります。

昔、防音室仕様の賃貸物件に見学へ行った事があるのですが、非常に高かったです。その分、物件数が少ないので、退去になり難いというメリットがあります。
しかし、それも近くに音楽大学があるとか、音楽的な需要がある場所の話だと思っていました。ダンス教室でも防音が求められるとは、全く知りませんでした。
また、ダンス教室の場合、騒音対策だけでなく、振動対策も必要となります。上階への振動を予防する為に、ゴムを敷いて吸収させたり、そのための専用部材が必要となったりします。
その為、工事費は非常に高額になります。サッシ1枚、扉1枚からして防音仕様の材料は普通の住宅用の物と違います。また壁には全て緩衝材を使用し、天井は二重天井の上にさらに空間を空けて、音漏れと振動を最小限に抑えます。
更に、もともと上下水道などがない場所にトイレや手洗いは作らなければいけません。道路から下水道を新たに引いて来る必要があります。考えれば考えるほど、高額になりそうな工事内容です。
その後、これら躯体に関する工事を「 A工事 」としてオーナー負担とし、内装と防音設備に関する工事を「 B工事 」としてテナント負担とする事で、工事内容を分けて見積書を作成しました。
「 A工事 」をオーナー負担としたのは友人である彼女を応援する気持ちです。
■「 最長15年 」の定期借家契約で合意
そのため、契約の内容に関しては、かなり柔軟に取り組みました。しかし、どうしても譲れなかった内容があります。それは、昭和52年築の物件ですので、建替えを視野に入れているという点です。
この事は最初から友人に伝えており、自分たちの年齢から考えても「 最長15年 」という条件で、定期借家契約を結ぶ事で合意しました。同級生で同じ歳ですので、15年後は私も彼女も63歳です。
定期借家契約の場合、最初から契約終了期間が決まっていますので、その時点で必ず解約となります。さすがに体を使うダンス教室を63歳になっても出来るかどうか、彼女もわからないということでした。
また、私から「 空いている時間をレンタルスタジオとして貸してみてはどうか? 」と提案してみました。そのためには最初から契約書の内容に「 転貸可 」の特約が必要となります。
その結果、友人はレンタルスタジオの運営も始めることになりました。私はもちろん、友人の利益に繋がるように転貸を許可しました。これで使ってない隙間時間も有効活用できます。どんどん、スタジオ貸しが出来ると良いと思います。
親しき仲にも礼儀として、契約はキチンとさせていただきました。契約期間中、私と友人との間だったら何かあっても話し合えば済みますが、万が一、私や友人の体に異変が起こり、お互い賃借人が変わるような事があれば話が違ってきます。
その為にも契約書の内容は、とても重要です。どちらかに偏った契約内容でもいけません。お互いに納得できる内容になっているか、きちんと確認し、説明した上でご契約頂きました。
■ 友人の夢を応援できるという幸せ
今回、たまたま偶然が重なったことで、ウチの物件で友人がダンススタジオを開業する事となりました。偶然も重なれば、それは「 必然 」となるのだと思います。
いつもテナントさんの開業は、同じ事業者として、全力で応援して行きたい気持ちになります。ましてや今回、開業するには友人です。自分のスタジオを持つ事は、彼女の夢でした。
その夢を応援できたらと思っていたところ、偶然が重なり、ウチの空き物件を気に入ってくれて、晴れてダンススタジオをオープンする事になりました。本当に嬉しいですし、これからが楽しみです。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ではまた次回、皆様お会いしましょうね〜(^^)/