前編に続き、岡本日出世さんにお話を伺います。東京の6室のアパートと戸建1戸を現金で購入し、FIREした岡本さんは、50歳の時にタイのパタヤへ移住され、すでに10年目といいます。不動産からの月30万円のキャッシュフローで十分に足りるというタイでの暮らしや、遠方からの日本の物件の管理、そしてこれからの目標等についてうかがいました。
編集部
会社を早期退職された後、タイのパタヤに移住されたそうですね。パタヤの魅力はどんなところですか?
岡本日出世さん
まず、人が優しいと思います。困っている人がいれば、みんな助けてくれますね。あと、食事がうまい。これも非常に重要ですね。
それから、私が住んでいるパタヤ南部は、豊かな多様性が魅力だと感じています。まじめなロシア人が多い地域なのですが、ビーチを10分も散歩していると、オランダ語、ドイツ語、イタリア語、フランス語、いろいろな言語でしゃべっている人とすれ違います。
世界各国、いろんな地域からいろんな人が集まってくる場所なのです。イスラムの布を頭に巻いたスーパーのレジ係がいたり、ニューハーフのウェイトレスがいたりしますが、ごく当たり前の存在として、誰も気にも留めません。
多様性があるということは、「 自分が何かに合わせないといけない 」という同調圧力がないため、すごく楽です。そういう多様性が面白くて楽しい、魅力的な部分ですね。
外国人向けの住居はプール付きが珍しくない
編集部
日本国内への移住、例えば軽井沢や沖縄といったリゾート地を選ぶという選択肢はなかったのでしょうか?
岡本日出世さん
私は石川県の出身で、暖かい南国への憧れというのがありました。お金があればオーストラリアという選択肢もあったかと思いますが、経済的にはタイが手ごろで現実的でした。
日本国内という選択肢は考えませんでしたね。海外に行けば、世間体とか同調圧力というのは一切ありません。仕事を完全に辞めてリタイア生活をするなら、精神的にも自由になれる海外への移住がベストだと、私は思います。
編集部
現在の日出世さんの1日の生活サイクルを教えてください。
岡本日出世さん
朝は6時台に起床し、1時間かけて6キロのウォーキングをします。もしくは1キロのプール水泳です。プールはマンションに普通についています。タイではプールのないマンションのほうが珍しいんですよ。
その後、朝ごはんを作って食べます。その後は、本当に一日を自由に過ごしています。近隣に住む外国人の友達と食事に出かけることもありますね。そのほとんどの方がリタイアされた方です。
投資で成功された方が多いと思うのですが、そういった話はしません。仕事の話や投資の話をするのはダサいという感覚があるんです。
編集部
タイといえばマッサージも有名ですね。マッサージ店もよく利用するのですか?
岡本日出世さん
私一人では行きませんが、友達が訪ねてくると、みなさんをおすすめのマッサージ店に連れて行きます。パタヤビーチでは波打ち際で全身マッサージしてもらうというサービスもあって、非常に快適です。ビール飲みながらパラソルの下で、波の音を聞きながらマッサージを楽しめるんですよ。
編集部
1カ月の生活費はいくらぐらいかかっているのでしょうか?
岡本日出世さん
トータルで12~15万円ぐらいです。タイの物価はだいたい日本の3分の1ですね。ですので、私は日本からの家賃収入だけで生活的には何ら問題なく暮らせます。貯金も積み重なっていきますし、その中から、ドルコスト平均法で毎月一定額を中国株へ投資しているので、純資産は少しずつ増えていると思います。
タイに移住後に購入した埼玉の区分所有物件
編集部
タイ・パタヤの治安はどうですか?
岡本日出世さん
それに関しては人によると思います。私は襲われにくいタイプで、夜更けの裏道でも怖いと思ったことは一度もありません。それは、私の背が高めで、中高年のアジア人男性だからだと思います。外国人が襲われると、警察も新聞も大騒ぎしますから、泥棒も狙いにくいのではないでしょうか。
ただ、自宅には一度泥棒に入られました。それはどうやら、警備員が泥棒に情報を流しちゃったみたいで……。同様の被害に遭った団地の有志たちで団結して、防衛策を講じ、問題の警備員を排除し、治安を回復しました。正直、世界一治安の良い東京の感覚をそのまま期待して移住してくる人は、1カ月も持たないでしょう。それでもトータルで見て、タイ暮らしは圧倒的に快適だと思います。
編集部
海外に住んでいると、なかなか所有物件に駆けつけることはできないと思います。物件の管理はどうしていますか?
岡本日出世さん
3つの物件はいずれも売買の仲介をしてくれた不動産業者がそのまま管理をしてくれています。すべて任せているという状況です。とはいえ、コロナの前は年に2回ぐらい日本に戻って、部屋が空いていたらそこを見に行ったり、泊まったりしていました。
そうすると細かいトラブルも見つかるので、何かあれば管理会社と打ち合わせして対策を立てていました。最初の一棟アパートに関しては当初トラブルが続出したのですが、管理会社は一つ一つ対処してくれました。いい関係を築けていると思います。
パタヤビーチ
■ 「 準・英語圏 」の土地に住むメリット
編集部
今後の人生の目標を教えてください。
岡本日出世さん
ビジョンは特にないんです。あるとしたら、この先1か月ぐらいかな。穏やかに暮らしていけたらいいなという程度です。コロナも全く予想ができませんでしたし、何かあればそれを受け入れていくという感じです。
なんとなく考えているのは、将来はイタリアとタイの2拠点で暮らしていけたらなということです。タイは、アジアでいちばん遊ぶのに楽しい国だと思います。一方、ヨーロッパでいちばん楽しい国と言われるのが、イタリアです。だから両方を行ったり来たりしたら楽しそうだなと。
編集部
なぜ英語圏ではなく、イタリアなのでしょうか?
岡本日出世さん
私は最初の海外経験が香港だったのですが、香港というのは英語が通じる人が1/3とそれほど多くないんです。そこに住んでみて、「 準英語圏 」というのは面白いなと思いました。
100%英語圏の国となると、まともな英語の勉強をしたわけではない私は、カタコト感が目立ってしまい、かなりハンデがあります。流暢な英語を話せないといけないというプレッシャーがすごくある。
一方、今住んでいるタイのパタヤもそうですが、準英語圏の地域なら私のレベルの英語で十分です。イタリアの観光都市も準英語圏の地域ですよね。もちろん、それだけが理由ではありませんが、そんなことも関係しています。
編集部
これから不動産でFIREして海外で生活したい人へのアドバイスをお願いします。
岡本日出世さん
4つあります。一つ目は、メンターを見つけること。私の場合は2人いました。自分より10~20歳年上で、自分も将来こういうライフスタイルを送る人になりたいなという人を見つけて、「 あなたのようになるにはどうしたらいいですか 」と普通に聞いちゃう。それだけです。
二つ目は宅建を取ること。これは絶対に必要というわけではありませんが、私のように40代後半からの遅いスタートを切った場合、何も知らずに「 教えてください 」じゃ教えるほうも困っちゃいます。だからせめて宅建ぐらいは身に着けておくといいと思います。
宅建は過去問を繰り返す機械的な作業をすればだいたい受かりますが、勉強する時間を作るのが大変。ですから、宅建に合格したということは、やり抜く力を自分に対しても周りに対しても証明するという意味もあると思います。
三つめは英語をマスターすること。不動産の勉強をしたうえで、それに何か一つを組み合わせれば、自分の強みになります。私の場合も、最初の中野のアパートをゲットできたのは、不動産に加えて英語という武器があったからでした。
英語がなければ、インド人入居者とスムーズにやりとりはできませんでした。ユダヤ系アメリカ人の先生にかわいがってもらえたのも、英語でコミュニケーションをとれたからでしょう。
そして四つ目は、タネ銭をコツコツ貯めることです。始めるときのお金はデカければデカいほどいいのです。給料天引きの感覚で、少しずつ貯めていってください。
パタヤビーチ
編集後記
岡本さんの日本の常識にとらわれない自由な考え方がとても新鮮でした。キャッシュフロー30万円で生活費と投資に回すお金があるというタイでの暮らしに、興味を持った方も多いのではないでしょうか?岡本さん、ありがとうございました。