前回に引き続き、元郵便局員で不動産投資を始めセミリタイアした木村さんにお話を伺います。セミリタイア直後は嬉しかったけれど、1カ月もするとやることがなくなったという木村さんはその後、どのようにして生きがいを取り戻したのか? 経営難のサウナ付き銭湯を1億円以上の借金をして購入した理由は?「 フリースタイル投資家 」と自負される木村さんの人生観もお伺いします。
■ 温泉が湧く銭湯の再生
編集部
セミリタイアされた直後は、どのような生活を送っていましたか?
木村真之さん
会社員を辞める少し前にゴルフにハマり、会社の休みは毎週ゴルフに行っていました。会社員を辞めたら毎日ゴルフに行こうと決めていたので、会社を辞めてからは一人で打ちっぱなしに行ったり、カートを引っ張ってゴルフをやったりしました。
映画も好きで、毎日のように見に行っていましたが、その生活には一カ月で飽きました(笑)。自分だけで楽しむ生活は飽きてしまうみたいです。いつでもできると思った途端、ゴルフも映画にも行かなくなり、ゴルフは3~4年やっていないですね。
編集部
セミリタイアされた時の周りの方の反応はいかがでしたか?
木村真之さん
奥さんに関しては、3年で目標の家賃収入に達したので、納得してくれました。同僚からは、「 会社員を辞めてどうするの?」と言われていました。辞める直前、木こりの仕事に興味が有り、木こりになるための資格を取りに札幌に通っていました。資格を取ったので、半分冗談、半分本気で「 次は木こりになります 」と告げて辞めました。
実際、辞めた後に同僚から「 本当に木こりになるのか?」と聞かれたので、実際は不動産投資でセミリタイアしたのだと何人かに話しました。実は勤めている時も30人くらいに不動産投資の話をしたんです。やり方も伝えたのですが実際にやったのは3人だけでしたね。
150万円で買った空き家
編集部
大家の会の代表やセミナー講師も務めているそうですね。
木村真之さん
やってみて不動産投資は良い仕組みだと思ったので、多くの人に伝えたいと思い大家の会を発足しました。月一の勉強会を無料で開催し、約7年間続けました。ただ、3年ほど前から休止しています。
そのうち、私の話を聞きたいという人が出てきたので、頼まれてセミナー講師を務めるようになりました。
■ お金と時間に縛られない生き方を提案していきたい
編集部
現在の年商はいくらでしょう?
木村真之さん
個人の不動産収入と、民泊、セミナー講師、また昨年取得した銭湯( サウナ付き温泉 )経営の収入を合わせて約1億円あります。銭湯の方はほとんど収益になっていないのですが、個人の家賃収入で生活できているので問題ありません。銭湯は趣味の延長といったところです。地元の人がたくさん来てくれますし、儲かっても儲からなくても続けていきます。
編集部
銭湯の経営を始めたきっかけを教えてください。
木村真之さん
銭湯は約1.4億円で事業承継の形で買い取りました。元々、銭湯経営をやろうと思ってやったわけではなく、知り合いの不動産屋から「 経営が厳しくて売却したいという銭湯があるんですが、一度見てみませんか?」と紹介されたんです。
帯広の「 ひまわり温泉 」という所です。住宅街にあり、名前は知っていたのですが、私は行ったことがありませんでした。行ってみると、スーパー銭湯程の規模の温泉施設で、露天風呂やサウナもありました。館内にレストランまでついていました。
設備も充実していて、味の良いレストランも入っているのに「 これはもったいないな 」というのが第一印象。「 自分なら上手くやれるかもしれない。もし、融資が通ったらやってみよう 」と考え、融資が通ったのでやることになりました。
編集部
すごい決断ですね。その後のお客さんの入りはいかがですか?
木村真之さん
大変ありがたいことに認知度も上がり、客数は約1.5倍になっています。昨今のサウナブームで、若い人やサラリーマンの方が仕事帰りに寄ってくれるようになりました。コロナ渦が明ければ、もっとお客さんが増えると思います。
編集部
銭湯の売上はどのくらいあるのでしょう?
木村真之さん
売上は月に500万円前後です。しかし、不動産経営と違って銭湯経営は経費率が非常に高いんですよ。人件費や清掃費用、燃料代など、細々とした経費が多くかかり、あまり儲かりません(笑)。
編集部
ひまわり温泉は、サウナが充実していると話題になっているそうですね。
木村真之さん
去年の6月にフィンランド式サウナを導入しました。ひまわり温泉にフィンランド式サウナを導入するか検討していた時に、帯広で一番早くにフィンランド式サウナを導入した北海道ホテルの社長に相談しに行きました。
すると、「 絶対に導入した方がいい。一緒に十勝でフィンランド式サウナを盛り上げよう」 と言われました。私はサウナが好きではなかったんですが、この社長から、「 木村さんはサウナの正しい入り方を知っている?今から入らない?」と誘われ、正しいサウナの入り方を伝授していただいたんです。
いわゆる「 サウナ、水風呂、休憩 」を3セット行う入り方です。そしたら、見事にはまってしまいました(笑)。水風呂の後でゆっくりしていると不思議な感覚に包まれて、「 この感覚は何なのでしょう?」と訪ねると、「 これが ” ととのう ” だよ」と教えてもらいました。
そこから私もサウナにどハマりし、サウナスパアドバイザーとサウナプロフェッショナルという資格も取得しました。去年の10月から毎月サウナ講座を開催していて、延べで60人くらいの方に受けていただきました。テーマは「 宇宙と繋がるサウナ 」です。
ひまわり温泉のサウナ
編集部
宇宙と繋がるとは、一体どういうことなのですか?
木村真之さん
サウナでととのっている時は副交感神経が働いており、脳の中が瞑想しているのと同じ状態になるんです。自分の中の宇宙、つまり潜在意識に繋がれる講座ということで、「 宇宙と繋がるサウナ学 」という名前にしました。
「 サウナに入って気持ちいいな~ 」と感じるだけではなく、サウナを通して潜在意識に自分の願望を働きかけることで、なりたい自分になれる講座です。ご興味がある方はぜひ、ひまわり温泉にお越しください(笑)
■ フリースタイル投資家という生き方
編集部
木村さんは不動産投資を始めてから3年で引退されたとのことですが、なぜ早期に引退できたと思いますか?
木村真之さん
「 自由に人生を謳歌したい 」いう想いが強かったからだと思います。実際、30歳まで好きなことだけをやって生きてきました。郵便局での営業成績はよかったのですが、会社に一日の大半を縛られている状態を長く続けるのは厳しいと思っていました。
人に指図されるのも苦手です。モーグルもフリースタイルで自由な競技です。昔、ラジオのDJをやっていたのですが、その時のタイトルも「 俺たち自由人 」でした(笑)。自分のことを「 フリースタイル投資家 」と名乗ることもあります。
編集部
これからのお金の面で目標はありますか?
木村真之さん
銭湯も人が来るようになり、サウナ界隈でも有名になってきたので、自分の中では満足しています。特別に売上を増加させたいとも思わないです。とにかく、多くの人に楽しんで、喜んでもらえる施設になればと考えています。
不動産に関しても、資産の組換えはしていこうとは思っていますが、物件を増やす予定はありません。現状で生活もできているので十分だと感じます。それよりも、嫌な仕事に縛られ、嫌々うつ病になりながら働いている人たちに、「 お金と時間の自由を自ら作ることができること 」を伝えていきたいです。
編集部
素晴らしい考え方だと思います。木村さんのこれからの人生の目標はありますか?
木村真之さん
コロナが収まれば、グローバルに行動していきたいと思っています。それが不動産なのか、その他なのか分かりませんが、お金と時間に縛られない生き方を広める活動を世界中に広げていきたいです。
十勝の上士幌町にて
編集部
最後に、セミリタイアを目指す人へのアドバイスをお願いします。
木村真之さん
セミリタイアすること自体はいいことだと思っています。ただ、セミリタイア後の生き方として、「 自分さえ儲かればいい 」という考え方の人は長続きしないですし、いずれ失敗すると思います。
自分がセミリタイアできた経験を他の人に伝えたり、みんなでセミリタイアを目指す方向に考えを向けていったりすれば、良い循環になるのではないでしょうか。SNSでの情報発信や、活動をシェアするグループを作るなど、方法はいろいろあると思いますよ。
編集後記
不動産に関するビジネスに留まらず、セミナー講師や銭湯経営などで多くの人と交流することで、日々充実しているとお話しされていた木村さん。「 自分が良いと思ったことは、多くの人にも知ってもらいたいんです 」と笑顔で話す姿に、木村さんが様々な分野で成功されている秘訣があるように思いました。木村さん、素晴らしいお話をありがとうございました!