今回のFIREインタビューは、郵便局員時代に不動産投資を始め、3年でセミリタイアされた木村真之さんにお話を伺います。セミリタイア後はモーグル競技、大家の会の代表、セミナー講師、地元のサウナつき銭湯の運営など多岐にわたって活躍されており、年商は約1億円といいます。セミリタイアから10年、現在の心境等をお聞きしました。
■ 自由な20代を経て30歳で郵便局に就職
編集部
自己紹介をお願いします。
木村真之さん
はじめまして、北海道帯広市在住の木村真之と申します。2008年に不動産投資を始めて、2011年、40歳の時に専業大家になりました。今はアパート経営や民泊といった不動産の仕事を基盤に、様々な活動をしています。全て合わせた年収は約1億円です。
編集部
もともとはサラリーマンだったのですか?
木村真之さん
はい、郵便局に10年勤めていました。ただ、最初からそうだったわけではありません。「 30歳までは好きなことをやろう 」と思い、学校を出てからしばらくは就職をせずにモーグルというウインタースポーツに取り組んでいました。
夏はフリーターや派遣社員をして、冬はニセコや富良野、白馬等に住み込みで働きながら大会に出ていましたが、30歳になったタイミングで、就職をしないと結婚もできないと思い、郵便局員になるための試験を受けました。
無事に採用され、地元の郵便局で保険と貯金の外交員をやりました。ただ、仕事にはノルマもあり、中には汚いことをする人もいて、「 こんな仕事はずっと続けられない 」と思っていました。ストレスのせいだと思うのですが、35歳の時に大きな病気に掛かってしまい、一ヶ月くらい仕事に行けない時期がありました。
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編集部
大変なご経験をされているのですね。
木村真之さん
はい。それをきっかけに、「 いずれは辞めなければ 」と考えていたものを「 早急にやめないと 」と切り替えました。ところが、奥さんに「 会社を辞めたい 」と相談すると、「 次の収入を得るあてがないでしょ 」と大反対されたんです。
「 どうしたら仕事を辞めてもいい?」と訊いたら、「 今の郵便局と同じくらいの収入を稼げるなら辞めてもいい 」と言うので、その日から給料以外の収入を増やす方法を模索するようになりました。
編集部
うまくいきましたか?
木村真之さん
いえ、遠回りをしました。最初は株、FX、セドリとサラリーマンにできそうな副業を一通りやりましたが、儲かったり損したりと安定しませんでした。リーマンショックの時は株で200万円も損失を出してしまいました。
別の道を探す中で、不動産投資の本に出合いました。「 サラリーマンは大家に向いている 」と書いてあったので、「 これだ!」と思い、それから半年程、ポータルサイトを見て物件を探し、半年後の2008年10月に1棟目を購入しました。
編集部
1棟目はどちらで購入されたのでしょうか?
木村真之さん
釧路市にある築7年の木造アパートを買いました。価格は3,300万円で、利回りは13%です。最初は地元の帯広周辺で探したのですが、高くて買えませんでした。帯広は農業が産業のメインで景気に左右されにくいため、北海道では札幌の次に土地が高いんです。
それで、妻の出身地である釧路の物件をチェックしていたら、釧路は土地が安いのに帯広よりも若干家賃帯が高いことに気づきました。当然、利回りも高くなります。車で2時間ほどかかる場所ですが、いい物件があれば週末を使って見に行きました。その甲斐あって、37歳で1棟目を買うことができました。
編集部
買ってみていかがでしたか?
木村真之さん
買ってよかったです。毎月の家賃収入が43万円で銀行への返済が20万円だったので、残りの23万円が毎月貯まっていくんです。株やFXと違って、仕事中に値動きを気にする必要もありません。1棟目のキャッシュフローを頭金にして、2棟目と3棟目を続けて購入しました。
編集部
2棟目も釧路ですか?
木村真之さん
いえ、2棟目は札幌の新築アパートを買いました。価格は5,000万円で、利回りは10%です。3棟目はようやく地元の帯広に、築35年の18戸のRCマンションを買いました。こちらは3,700万円で、利回りは22%です。この3棟目は購入時、4戸しか入居していなかったんですが、全面改修して半年後に満室にしました。
2棟目の物件
編集部
サラリーマンをされながら3棟目でほぼ全空のマンションを購入されたのは、チャレンジングですね。
木村真之さん
大きな挑戦でしたが満室にできて自信に繋がりましたし、銀行からもプラスに評価してもらえたと思います。おかげで、念願のサラリーマン卒業も果たすことができました。
当時の郵便局の給料が、手取りで約25万だったんですが、3棟目が満室になると家賃収入の手残りが60万円程になったんです。妻の言っていた「 辞めてもいい条件 」をクリアできましたし、自分の中で考えていた基準も超えたので、2011年に40歳でセミリタイアしました。
■ 自分の目が届く範囲内で投資
編集部
セミリタイア後も物件取得は続けられたのでしょうか?
木村真之さん
はい、セミリタイア後も年に1棟ペースで買い続けています。自分の目が届く範囲で投資したいので、その後は100室を目指して、帯広、釧路、札幌、北見に買い進めました。今はそれより少し多くて120室を保有しています。平均利回りは20%強です。
編集部
投資エリアが幾つかに分かれていますが、物件は各地の管理会社さんに任せているのでしょうか?
木村真之さん
はい。とはいえすべて北海道ですし、定期的に見に行くようにしています。
■ オーナーが困っている物件を安く買い、安く貸す
編集部
物件を購入される際のポイントはありますか?
木村真之さん
セミリタイア後は空室が多い物件を安く買い、100万円ほどかけて修繕を行い、その地域の最安値の家賃で募集するという手法をとっています。家賃は安いけれど部屋がきれいなので、生活保護受給者やシングルマザーの方が長く住んでくれています。
安く買うコツは、オーナーが手放したい物件を狙うことです。空室の多い築古物件を自主管理している年配のオーナーに、「 安くなりませんか?」と交渉して買ったこともあります。築古が多いですが、ほとんど融資を使っています。
130万円で買った空き家
編集部
平均利回りで20%を実現できているのは、他の人が買えないエリアだからということもあるのでしょうか?
木村真之さん
お金持ちが買いに来ない地域だから安いというのはあると思います。私は十勝に住んでいるので、釧路や北見の物件にも融資がつきますが、いくら利回りが高くても東京や大阪の人が融資を付けるのは困難でしょう。そういった意味では地方在住であることがメリットになっていますね。
そういえばスルガ銀行の問題が表面化する前は、スルガ銀行が地方物件にも積極的に融資をしていたので、東京や札幌の投資家が帯広にも物件を探しに来ていましたが今はピタリと止まっています。
編集部
売却はしますか?
木村真之さん
そうですね。保有物件は築35~40年で買うものが多いので、古くなりすぎないうちに売却しています。アパートの場合、買う時に入居率半分だったものを売るときに満室にしておけば、買値の1.5~2倍で売却することも可能です。
編集後記
35歳で職場のストレスが原因で大病をされ、セミリタイアを志した木村さん。ご自身の目の届く範囲で投資活動を行う堅実な姿は勉強になります。後編ではセミリタイア後に始められた銭湯経営のお話等を伺います。