4月に入り東京も葉桜になってまいりました。日本人の入居者向けの賃貸繁忙期は過ぎつつありますが、留学生を中心とする外国人入居者の住まい探しは、GW頃まで続きます。
来日当初は、友達の住まいなど、一時的な宿を確保し、それから自分たちの住まいを見つける外国人の方々も多いからです。つまり「 3月の繁忙期にうまく客付けできなかった 」という大家さんも外国人入居者に目を向ければ、満室の可能性が近づくかもしれませんね。
また、すでに外国人入居者さんを受け入れている大家さんは、別の新しい入居者さんをつれてくるようにお願いすることも検討する良いかもしれません。( この件については第4話で詳しく紹介しています)
参照:平凡な中古物件でウェイティングリストができる。外国人入居希望者が殺到する賃貸物件の作り方
簡単にお伝えすると、新しい外国人入居者さんに入居の御礼の挨拶をしにいき、「 もし住まいを探している友だちがいれば紹介してほしい 」と伝えればいいのです。必要に応じて謝礼を払うことで、外国人入居者さんも喜んで友達を紹介してくれます。
営業でも、成約したお客さまのご紹介は成約率が高いといいます。賃貸経営でも同じで、大家さん主導の外国人満室経営を行う鍵となる重要な行動なのでぜひチャレンジしてください!
■ 意外な場所で増えている外国人
皆さんが「 外国人街 」といって、思い浮かぶのはどこでしょうか?おそらくは、横浜や神戸の中華街や大久保のコリアンタウンと答えるのではないでしょうか?
少し在留外国人に知見がある方々であれば、群馬県大泉町のブラジル人街や高田馬場のミャンマー人街、鶴見のブラジル人を中心とする日系人街が思い浮かぶかもしれません。ただ、これ以外にも特定の外国人が集まる地方都市というのがあります。
私が物件を保有している都市を例にあげましょう。1つ目の都市は、第3話でご紹介した2棟目に取得したエレベーター停止マンションがある栃木県足利市です。
参照:外国人向けの賃貸物件オーナーを目指して大家歴1年で脱サラしました
ベトナム・ミャンマーに強いコンサルタントVAC社のサイトによると、栃木県足利市にはスリランカ人が多数住んでおり、2017年に中国人を抜き、国籍別でナンバーワンの在留外国人となっています。
最新の足利市の人口統計( 令和3年度 )では、最近では全国的に増えているベトナム人が1位( 928人 )となりましたが、それでもスリランカ人は2番目( 840人 )という多さです。
私の物件の管理会社の客付け担当の方も、外国人客といえば、ひたすらスリランカ人がやってくるとおっしゃっていました。
余談ですが、スリランカ人は、仏教を崇拝するシンハラ人( 多数派 )とイスラム教を信じるタミル人( 少数派 )がいるのですが、足利市内にはエリア別に両方の人種がおり、タミル人が集住する場所の近くにはモスクやハラルフードの店が近くにあります。
また、足利市と隣接する群馬県桐生市には、シンハラ人の僧侶がいる寺院もあります。余談ですが、私の物件には料理が得意なシンハラ人入居者がおり、大きな集会の際には、20~30人分のスリランカ料理を作っています。
スリランカ料理はスパイシーで独特の匂いがするため、先日は大量のスパイスの匂いに慣れていないご近所にお住まいの日本人入居者さんから「 匂いがキツい 」というクレームを頂いてしまいました…( 苦笑 )
【料理が得意なスリランカ人入居者さん】
もちろん、スリランカ人が集うスリランカ料理のレストランも複数あります。また、足利市にはベトナム人が数多く運転免許を取得しに来る自動車学校があります。
2つ目の都市は、第7話でご紹介した群馬県館林市です。館林市というと、毎年夏になると全国最高気温を記録してテレビでよく放映されていますよね。
参照:「外国人賃貸」を売りに担保評価の低い中古アパートの満額融資付に成功した話
朝日新聞デジタルによると、この街にはミャンマーの少数民族であるイスラム教を信じるロヒンギャの方々が270名ほど住んでいます。
ロヒンギャの方々は、残念ながらミャンマー政府から国民とは認められていないため、難民として日本に来日し、工場で労働したり、独立して中古車屋を営んだりしています。
参照:集英社オンライン
足利でスリランカ人が多く集まりだしたのは、2010年代に入ってからです。ロヒンギャの方々は館林市に住み始めてからすでに30年ほどと歴史は案外長く、すでに日本で生まれ育ち成人して東京などで働いているいわゆる2世の方々もいらっしゃいます。
ちなみに、ロヒンギャの方々は、館林市以外の遠方で住んで働いているケースもあるのですが、そういう方々は週末やラマダンの季節などのイベントの度に、足繁く館林市に戻ってくるといいます。
私の物件の入居者さんも、平日はさいたま市周辺で仲間と一緒に住んでいるのですが、休日になる度に館林市に戻り、モスクで仲間と再会する、というような生活をしています。そう、本当の故郷に帰れないロヒンギャの方々にとって、館林市は第二の故郷なのです。
■ 今のうちに外国人入居者を受け入れるのに慣れましょう!
「 日本人の人口に比べると、在留外国人の人口ってまだまだ少ないでしょう。入居者ターゲットとして十分なのだろうか? 」と思われる方もいるかもしれません。
たしかに足利市の人口は、全体の144,595人に対し、外国人は4,889人で、外国人の人口比率は約3.3%です。これを見ると、ターゲットボリュームが少ないというご懸念は当たっています。
しかし、私はこれからの日本で不動産賃貸業をするなら、在留外国人向け賃貸はやるべきだと結論づけています。
私は足利市に複数の物件を保有しており、入居者さんはスリランカ人とベトナム人の方ですが、市内在住の人口は1768人( 足利市の人口の1.1% )程度であるにも関わらず、満室経営を維持できているからです。
つまり、競合が少ないんです。特に地方においてはその傾向は、顕著だと思います。第4話で書かせていただいたとおり、「 地主系や相続系の大家さんは、外国人入居者を敬遠する傾向がある 」んですね。一方で、これから生産年齢人口が急減するのも地方です。
現在、大抵の地方都市では、在留外国人の人口比率は5%以下なのですが、岐阜県美濃加茂市のように、やがては外国人比率が10%に近くに迫ってくるのは、そう遠くない未来だと私は見ています。
参照:岐阜県美濃加茂市HP
そして、就労のためにやってきた外国人が家族や奥さんを呼び寄せ、家庭が日本に根づいていくと、やがては東京都新宿区のように、8人に1人が外国籍、小学校のクラスの半分近くが外国にルーツのある子どもになっていくというのも10年以内に現実化する可能性が高いです。
参照:bigissue-online
このような背景から、今から外国人入居者を受け入れておけば、これから激増していく在留外国人をスムースに受け入れられる大家さんになれますよ、と皆さんにお伝えしたいなと思っています。
特に地方都市においては、足利市のスリランカ人コミュニティや館林市のロヒンギャコミュニティのような、特定国籍・人種の新しいコミュニティが形成されていくでしょう。
そうしたコミュニティの強い横のつながりを入居者募集の場所として利用していくことは、今後の地方で賃貸経営をしていく上で、プラスに働くことになると感じます。
まずは近くにあるモスクや寺院、エスニック料理屋に集まってくる外国人にむけて、自分の物件の募集図面を配布することから始めてみるといいと思います。