前回のコラムでは、私が不動産投資を開始した際に身の丈に合わない大規模物件を購入してしまい、月最大40万円の赤字を垂れ流していたことを書かせていただきました。
今回のコラムでは、外国人賃貸に注力するきっかけとなった2棟目の物件についてお話ししたいと思います。
■ 前オーナーがエレベーターを自主廃止したきな臭い物件との出会い
私が本格的に外国人向け賃貸を始めるきっかけとなったのは、栃木県足利市にある2棟目の物件に出会ったことでした。当時の状況は大家列伝でも書きましたが、ここでも少しご紹介します。
参照:https://www.kenbiya.com/ar/cl/retsuden/tc-fushimi/65.html
2棟目に私が購入することになった物件は、私と同い年の旧耐震オジサンマンションでした。購入前に見学した印象は、昔の団地のようで、少々ボロくて、そして“きな臭い”雰囲気が漂っている物件だなということでした。
この物件は5階建てなのですが、1階のエレベーターに、「 このエレベーターは、オーナー様の意向により、9月1日を持ちまして運転を休止しました 」という張り紙がされていました。
エレベーターの管理費が支払えないほど、資金繰りに困っていたということだったのですが、当時の私には何の知識もなかったため、そんなことまで想像できませんでした。
「 へー、英語とスペイン語で書いてあるから外国人の人が住んでいるんだ! 」と、海外が好きな私のクセの強い興奮脳回路で間違ったメッセージを受け取ってしまいました(笑)
この物件を購入後に、先輩大家の中島亮さんが見学しに来たことがあるのですが、「 エレベーター動かないね。伏見さんがエレベーターを止めたんでしょ! 」と冷やかされました。
「 止めたのは私ではなく、前の前のオーナーです! 」と伝えたのですが、今でもお会いすると、「 エレベーターの運営費って高いよね! 私も伏見さんのように、勇気を持ってエレベーターを止められればなぁ 」とイジられます(笑)
ただ、事実としてエレベーターの運用費は高いですし大家に毎月のしかかってきます。前のオーナーは運営コスト的に追い詰められたのでしょうが、それにしてもエレベーターを止めるとは、斬新な発想だと思います。
話が脱線しましたが、この物件は共用部にも色々なものが置いてありました。その中で、謎だったのが以下の写真のものでした。
さて、これは何でしょうか?(笑)持ち主が不明で残念ながら未だに答えが見つかっていないのですが、おそらく、何かの丸焼き器かなと思います。
この物件のある群馬県から栃木県にかけてのいわゆる"両毛エリア"は、バブル期の労働力不足の時代に日系ブラジル人やペルー人を数多く受け入れて、今も彼らが定住しているという歴史があります。
代表的なのが”日本の中のブラジル”といわれる大泉町です。こんな記事も話題になりました。
そして、彼らは家族や仲間と集まってBBQをすることをこよなく愛しています。
例えば、私がお世話になっている外国人専門の家賃保証会社の日系ブラジル人の社員さんが自宅マンションを購入する際も、「 BBQ場がマンションに付属していた 」ことが決め手になったと言っていました。
昔、名古屋に仕事で行っていた頃に、よく通っていた大須のブラジル料理屋「 オッソ・ブラジル 」の鳥の丸焼きのような感じかなと勝手に想像しています。
■ 外国人が住む場所に困っているという「 発見 」
この物件は価格は4,000万円台中盤で表面利回りが約16%とそこそこ高利回りでしたが、今振り返ってみるとよくこんなきな臭い物件を購入したなと思います(苦笑)
ただ、海外旅行が好きで、東南アジアなどのB級エリアを見るのも大好きだった私にとっては、とても好奇心がそそられる対象というのも事実でした。さらに面白いことに、こんな怪しげな物件なのに、レントロールを見ると、ほぼほぼ満室でした。
5階まで階段で上がらなければならない地方のボロ砂壁物件がなぜ満室なのか? 自分が知らないことはいくら考えてもわかりません。だったら住んでいる人に聞いてみるしかありません。
本当は購入前に入居者を訪問したらダメだと思うのですが、好奇心が勝ってしまい、思わず居室の扉を叩いてしまいました。すると、半裸で下半身に長い布を巻いた南アジア系と思しき若者が出てきました。
最初は私のことを怪しんでいたようです。後ろの方から他にも2名、半裸の男たちが出てきました。私は多少ビビりながら、「 ここの住心地はどう? 」と質問してみました。
すると、こんな答えが返ってきたのです。「 いやー、この物件しか住む場所がなかったんだよ 」
え!?と思いました、なぜなら周りのアパートは空室だらけで、ホームズの「 見える賃貸経営 」を見ても、足利市の空室率は当時30%近くあったからです。物件ならいくらでも余っているはずです。
その若者は続けてこう言いました。「 仲間が住む物件もなかなか見つからない。だから、山の上の熊が出るエリアのマンションに住んでいる 」
■ 外国人向けの賃貸物件オーナーを目指して大家歴1年で脱サラ
実はこの物件、入居者の多くが外国人でした。それもベトナム、バングラデシュ、ペルー、スリランカ、インドと実に多種多様な国籍だったのです。
私はずっと外国人や海外とビジネスをしたいと思っており、実際サラリーマン時代には海外出張などもある仕事をしていました。そのため、「 こんな場所に、外国があった! 」と興奮しました。
「 なるほど、空室がこれだけ多い中でも外国人は入居に困っている。だったらその需給ギャップを埋めて、外国人によりよい住環境を提供すれば商売として成り立つんじゃないか? 」
そう思い込んだ私は、「 よし、サラリーマンのうちに金融機関から借りれるだけ借りて、物件を増やそう! 」と考え、この物件を即購入! そしてもう1棟購入したあとにサラリーマンを卒業してしまったのです。
それが大家業開始から約1年というタイミングでした。もともと会社員としての自分に行き詰まりを感じて不動産投資を始めたとはいえ、今思えば勢いで脱サラしてしまった感は否めません(苦笑)
■ 入居者との継続的な交流で「 物件の酋長 」に
後日、大家仲間5~6人が、「 外国人がたくさん住んでいる物件ってどんな物件なのか見せてほしい 」ということで、二棟目の物件の見学にやってきました。
満室でしたので入居者さんにお願いして、男3人の暮らす小汚い部屋を内見させてもらいました。その際、彼らが渋々私のお願いを聞く様子が面白かったのか、大家仲間から「 伏見さんは、この物件の酋長だね 」と言われてしまいました(笑)
管理会社さんの中には、外国人入居者に対して及び腰になっているところもあります。しかし、私はこちらから進んで交流の機会を増やすことで、彼らと良好な関係を築くことができました。
次回以降、大家さんがどう動けば外国人に入居してもらえるのか、管理会社の協力を引き出せるのかについて、悩みながら行動してきた、私の経験をお話ししていこうと思います。