前回、ほとんどの人は売買交渉に慣れていないので金額の大きな不動産を購入する前に、メルカリ・ヤフオクなどのオークションで交渉術を学び、売り買いのセンスを磨くのも1つの方法だと書きました。
僕は本・雑誌やCD・レコード・カセットテープを主にネット上でハンティングしていますが、長年のオークション経験から川上物件を手に入れるためのシステム構築を思いつきました。それを不動産投資でも活用しています。
まあ、システムというほどではないのですが、これを手に入れたおかげでかなり時間が自由になったのと、良い商品を確実に入手できるようになりました。
■ ライバルを味方にして欲しい商品を手に入れる
僕がハンティングしているような商品は、万人向けのものではありません。そこに存在する人は主に4つに分類されます。
@コンプリートに命を賭けている収集家やコレクター
A転売狙いのバイヤー
B趣味で買う程度の一般人
C足を踏み入れたばかりの初心者
非常に狭い閉ざされた世界なので、オークションで競ったりしていると、大体ああこいつか…という感じで出品する方も購入する方も相手がどんな人間か分かるようになってきます。
例えば、レコードのオークション業界には、僕から見てこの人はすごいというバイヤーが3人います。Aの転売狙いのバイヤーです。彼らは四六時中売り買いをしています。
本当に朝から晩までパソコンの前に張り付いているのではないかと思うくらいです。この人たちに張り合おうと思ったら、人生の他の部分は全て捨てなければいけないでしょう。
僕は今、このうちの二人とお付き合いがあります。最初は普通のお客さんとして商品を購入して、時間とお金をかけて仲良くなり、数年前に僕専属バイヤーともいうべき存在になってもらいました。
彼らはコレクターではないので、その商品を持っていたいという欲求がありません。利益だけが欲しいのです。ですから僕の探している商品や僕の好みを1度理解してもらえば、あとは勝手にモノを集めてきてくれます。
数ヶ月から半年に1度くらい連絡がくるので、僕はその商品をまとめて購入します。その時に、彼らがオススメしてきてくれたものは基本的に全部買います。1度に10万円くらい購入します。
おそらく彼らの利益は8割くらいでしょう。自分で探して買えば2万円かもしれませんが、その探す時間が僕には惜しいですし、彼らと同じレベルで買うこともできません。ならば競うのではなく、報酬を払って味方にすることにしたのです。
■ 入手困難な商品の捕獲は得意な人に任せる
彼らから見たら、僕が他の人よりも多くお金を払うし、安定的に買ってくれるし、用意したものをほとんど買ってくれるので、一番最初に僕に連絡してくるのです。
1度僕が2,500円で買おうか迷ったものがあって、一瞬躊躇したら次の瞬間誰かに買われてしまいました。するとしばらくして「 1万円で買わないか 」と連絡がきました。ああ、先に彼が買ったんだと思ったけれど、僕は素知らぬ顔をして1万円を支払いました。
普通なら、自分が2,500円で買えたかもしれないのにと思って、次の機会を待つ人が多いと思います。しかし、「タイム・イズ・マネー」です。欲しかった商品はさっさと手に入れて、次に狙いを定めます。
自分でもハンティングはしますが、楽しいと感じる程度で止めて、基本的に入手困難な商品の捕獲は彼らに任せています。そしてその時間を使って僕は不動産で稼ぎます。
ちなみに不動産とレコードではお金の桁が違うので、不動産で稼ぎレコードを買うということはいくらでも可能ですが、レコードで稼ぎ不動産を買うというのはかなり難しいと思います。
前回に続きオークションの話ばかりしても飽きてしまうかもしれないので、そろそろ以上の話を踏まえて不動産の話に入ります。
■川上物件を手に入れるために不動産屋さんを味方につける方法
僕が考える川上物件を手に入れるために不動産屋さんを味方につける方法ですが、コツが8つあります。
1、付き合う業者、担当者を見極め
話をしてみて自分と考え方や価値観、感覚やリズム、仕事の進め方とスピード、属性などが合う業者さんや担当者を見つけることです。僕の場合、不動産会社の社長以外とは付き合いません。
そこで働くサラリーマンの方とは感覚も価値観も違うからです。逆にいうと、サラリーマン投資家の方が社長と付き合うのも難しいかもしれません。同じ属性の方が価値観や感覚が理解し合えて良いと思います。
2、自分が好きな種類の物件を伝える
付き合いたい業者さんが見つかったら、一緒に物件を見に行って、感覚を合わせることが大切です。ここで注意したいのは、オークションの話で出たAのような転売や仲介で儲ける業者さんにだけ自分の狙っているものを伝えるということです。
@のような自分でも買いたいと思っている業者さんには伝えてはいけません。ライバルを増やすだけです。
3、長い付き合いをしたい、管理を任せると伝える
誰でも1度きりのお客さんよりも長い付き合いになる方を優先すると思います。
4、定期的に不動産会社に顔を出す
用がなくても手土産を持って挨拶をすることです。特別扱いをしてもらおうと思ったら最低でも3千円から5千円のお土産を持参しましょう。仮に5千円の手土産を年4回で5年間持って行ったとしても10万円です。5年間も続けていれば、良い物件の1つや2つは確実に紹介してもらえるはずです。
もし10万円が高いと思う方は、物件を1つ買って自分はいくら儲けることができるのかということを1度よく考えてみてください。その何倍も何十倍も自分が儲けることを考えれば、そのくらいの貢ぎ物は当たり前ですし、安すぎるかもしれません。
また、気を付けたいのが1回や2回やったくらいで止めてしまわないことです。やらないよりマシですが、最低でも3年は続けないと効果はありません。お中元、お歳暮は当たり前です。
5、何か物件はないかと定期的に連絡をする
以前、伝えているから大丈夫と思っているのは本人だけで、時間が経過すれば相手は忘れたり、もう必要ないかなと思ってしまうものです。ですから、常に、何かないですかと連絡をしましょう。
忙しい相手には電話だけでなく、たまにはメールも送ります。逆にメールばかりだと体温が伝わらないですし、相手の反応もわからないので、今の時代ですがやはり電話をメインにするのが良いと思います。
6、細かい条件交渉をしない、後からクレームは絶対に言わない、全部飲み込む
仮に10万円、損をしたとしましょう。文句を言って問題が解決しても、それ以降のお付き合いは避けられてしまうかもしれません。この人だと見込んだ人ならば、たまにはミスがあって損害が出てもうるさい事は言わないに限ります。
僕は、今まで何百万円分もクレームを言わないで飲み込んできました。逆に、先日5万円の賃料の件で何度も僕にうるさく言ってくるお客さんがいたので、その人とはもう契約上の付き合いしかしないと決めました。
7、不動産屋さんをまず儲けさせる
自分が儲けるのは5年後、10年後から。目先のお金を競うように回収しようとしたり節約しようとする人は、不動産投資に向きません。まず業者さんや入居者さんを儲けさせて、自分はその後です。
自分はその物件を所有している限りずっと儲け続けられるのですから焦らないことです。分け前をきちんと渡さないボスのために、誰もきちんと働こうとは思わないはずです。
8、電話がつながりにくい人はその時点でアウト
良い物件ほど足が早いのです。不動産会社さんからの電話をすぐに取れないと次は連絡は来なくなります。サラリーマンの方はなかなか電話が取れないかもしれませんが、そこは本当に物件が欲しいなら工夫するしかありません。
いくら電話を取れない正当な理由があろうと、物件の前ではそれは関係ありません。ただ物件が買えないだけです。僕は絶対に業者さんからの電話は逃しません。
■ 父について
最後に私的なことですがご報告させていただきます。このコラムで何度も紹介させていただいていた僕の父が、1月12日に永眠しました。
3年前に父が倒れ、ペナンに移住してからまだ半年という頃から僕の日本とペナンを往復する日々が始まりました。今だから言えますがペナンからの本帰国の最大の理由は、父との時間を過ごすためでした。
帰国してからの2年間は、週2回父とランチに行くと決めて、僕の人生の中で最も父と一緒の時間を過ごせた最高に幸せな日々でした。父のおかげで不動産をたくさん所有できるようになりました。そして不動産のおかげで父とたくさんの時間を過ごすことができました。
「 お父さん、長い間お疲れさまでした。とても疲れたでしょうし、大変だったでしょ? でも、やりたいことを思い切りやって誰にも真似できない最高の人生だったと思います。僕は心から尊敬しています。お父さんの子供として生まれ育ててもらって本当に幸せでした 」
父は30年以上、毎月地元の不動産広告にコラムを書いていました。原稿を書くのに徹夜をしていた姿を今でも思い出します。いま僕も、父が原稿を書いていたのと同じ場所でこのコラムを書いています。
この1年間は喪に服しながら父との思い出や教えてもらったことを整理し、自分の人生を見つめ直し、生き方を大きく変えていこうと思っています。そしてコロナが落ち着いたら移住生活の続きを再開できたらなと思っています。
