もともとの僕は、全てをかき集めて自分で独占していないと気が済まない性格で、先に対価を求める生き方を好んでいたからです。でも、実際に先に手放すことを経験し、その効果を実感した僕は、大声で伝えたいのです。
それでもやっぱり、「 1度先に手放してみてください 」と。
■ どうしても先に手放せない人たちへ
僕の経験談をお話しします。24歳でレコード屋さんを開業して32歳でやめるまで、アメリカ中のレコードを集めて来ました。
店舗スペースだけでは足りず、倉庫スペースが2カ所必要でした。レコード屋さんを辞める時は、突然の決意だったため、在庫も店舗の什器も全て残ってしまいました。
アメリカから直輸入したディスプレイや棚はどれも気に入っていました。特に、妻と結婚式をする代わりに1,000万円を投入してデザイナーさんに作ってもらった渋谷店の什器は、とても思い入れのあるものでした。
レコード屋さんを閉めてから1年ほど、父のビルにこれらを置かせてもらっていましたが、ある時、父から「 いまを整理して捨てないと次に進めないぞ 」と言われました。
そして「 好きな音楽はまた、不動産が落ち着いたら始めてもいいんじゃないか 」とも言われました。1年も状況を放置して、もう決断しなければいけないという限界のところまで来ていました。
お店を閉めたのは自分で決めたこととはいえ、悔しくて現実に向かい合えない…。整理は業者さんに任せようかとも思いましたが、この光景を目に焼き付けなければと、全部自分でやりました。

レコード店の什器を処分した時の写真
店舗の什器を捨てる時はやり切れない想いが溢れました。追い込まれて決断する悲しさを味わったことで、これからは「 自分から、素早く決断しよう 」と心に誓いました。( この教訓は10年後の今も活かされています )
意外なことに、悔しい思いをしながら什器を捨てると、物事の流れが好転し始めました。それまでは次に進もうとしても、レコード時代のたくさんのものが邪魔をして、先に進めなくなっていたのです。
僕がやっと捨てる決断をしたことで、人生がスムースに流れ出しました。先に手放さないと、今あるものが邪魔をして先に進めないということは、この時に学びました。
■ 誰でも経験している「 先に手放す 」ということ
レコード店の経験は、僕だけの特別なものかもしれません。しかし、最近、僕は子供たちを見ていて、やはり「 手放す 」ことの価値を感じることがありました。
ペナンに移住する前、息子たちは「 ペナンの生活も楽しみだけれど、日本の小学校のお友達と別れるのが辛い 」と言っていました。僕も妻も転校の経験がないため、そこは申し訳ないなと思っていました。
しかし、子供達は今、ペナンでたくさんの友達を作って楽しそうにしています。

どこにいても子供は楽しいことを見つけます
僕らもそうです。小学校を卒業するときは、もうこんなに仲の良い友達は2度とできないと思っていても、中学校に行ったらもっと仲の良い友達ができた。
中学校を卒業するときもみんなと離れたくないと思っても、そんなことを忘れてしまうほどの新しい出会いがあり、高校を卒業する時には別れる寂しさの一方で、大学でどんな出会いがあるのだろうとワクワクしていたはずです。
■ 次のレベルに行くためにの投資家の生き方とは
今の僕は、不動産投資で全く同じことを感じています。今持っている物件は、確かに良い物件かもしれません。もうこんなに良い物件には出会えないと思っていても、それは今の自分のレベルにとって、です。
手放せば、また違うレベルの自分にふさわしい物件が手に入ります。ペナンに移住した僕は、物件だけではなく人生全てにおいて「 先に手放す 」ということが大切なのだと思えてなりません。
別に物件を売れとか、そういうことを勧めているわけではありません。僕はそうしてきたら自然にステージが上がってきましたというお話と、手放す必要があった時や決断に迷った時は、「 安心して手放す 」ことをしてみても良いのではと、という提案です。
以前にも書きましたが、「 鶏が先か卵が先か 」で迷ったとき、「 卵を産んでくれるから鶏を買う 」という考え方では、絶対に利益を得られません。
まず鶏を買って、卵を産んでもらえるように育てる。その後で、「 毎日卵を産んでもらってもよし、その鶏を高く売ってもよし 」とするのが投資家の生き方です。常に「 先 」なのです。

■ リタイアどころか挑戦への決意を強くしたペナン移住
さて、今年の2月1日からマレーシアのペナン島に生活のベースを移してもうすぐ10カ月になります。家族全員で生活を始めてからは、3ヵ月となりました。
少し前から、日本に一時帰国しています。義父の1周忌のためです。昨年末に義父が亡くなった時には、移住計画をストップしようかと真剣に考えました。
その後、家族での移住開始を4月の予定から8月へと延期はしたものの、無事に4人でペナン島での生活を始めることができました。妻には心から感謝しています。
ずっと願っていた家族での海外移住ですが、旅行とは違い、生活、文化、すべてが異なる異国で生活することは、想像よりも難しいことでした。
それでも皆で団結し、少しずつ成長している日々は、人生においてなかなか経験できることではなく、いつか振り返った時に家族全員の一生の思い出となると確信しています。
僕自身は、妻や子供達が慣れない海外で、家事や子育て全てに頑張っている姿、新しい学校で頑張っている姿を見て、今のままの自分で良いのかと何度も自分に問いかけることになりました。
自分が先頭に立って頑張らないといけないと決意し、ペナン島ではのんびりとリラックスどころか、毎日、憂鬱なまでの努力を重ねています。
リタイアどころか20歳の頃の気持ちに戻って、もう一度自分の人生に挑戦すると決意できたのが、ペナンに来て一番良かったことです。

事務所にあるアメリカのモントレーで買ったドラゴン。これは捨てませんでした
■ 不動産投資家のための世界一のツアー
今月末に開催する、僕主催の2018年の計画を作成する合宿とノート術のワークショップが迫ってきました。群馬の山の中に、全国の投資家さんが来てくださいます。
その時、僕の所有している物件をお見せしますが、僕の物件は驚くほど狭いエリアに集中しています。不動産投資家にとって世界中のどんなツアーよりも素晴らしいツアーになると思います。
素人同士が趣味のコレクションを見せ合うわけではなく、プロが隠していた秘策を明かすのです。そこにある戦略や思考を想像しながら味わっていただきたいと思っています。
「 覚悟を決めて一点集中することで、凡が非になっていく 」。僕がこれまで積み重ねてきたものから、何かを学びとっていただければ嬉しいです。
