今から4年前の2012年7月1日に、僕の運命を決定付けたビルを手に入れました。昭和51年に建てられた鉄骨2階建のビルで、4つのテナントと1つの住居がある物件でした。
僕にとっては3棟目の物件です。このビルから色々なことを学び、この後から一気に不動産を大量に購入できるようになりました。もしこのビルを手に入れていなかったら今頃僕はどうなっていたのだろうと考えることがあります。今日はそんなビルについて紹介します。
■ ボロボロガラガラで融資が厳しいビルを発見
この物件は相続が原因で2,200万円で売りに出されていました。2つのテナントからの家賃が毎月23万円あり、残り3室は空室でした。1階の1番良い場所にあるテナントが数年間空いているというのが不思議でした。
現況利回りは12.5%、表面的には面白くない物件です。それでも既に、この近くに1棟目と2棟目を所有していた僕は、買う気満々でした。それだけでなく、購入後は利回り30%近くにできる予感がしていました。
とはいえ、築35年のボロボロで、入居率40%のガラガラビルですから、僕以外の人にそのイメージを共有してもらうことはかなり厳しく、そんな物件なので融資がかなり難しい状況でした。
それでもかけあったところ、当時の担当者のHさんが僕の話を熱心に聞いてくれて、フルローンで期間10年、金利は変動で2.475%ならという返事をもらいました。こちらの希望とは大きく離れています。銀行としてはあまり気乗りしないが、仕方なく貸すという雰囲気でした。
10年で返済するためには、毎月の返済額は利息も合わせて約23万円。購入時の家賃収入と毎月の返済額がほぼ同じで、税金や保険料などを考えるとマイナスです。これでは買えないと思ったのですが、その時にある方のおかげで買うことができました。
■ 購入前にNさんから2テナントに申し込みが入る
隣町でビジネスを大きく展開しているNさんという飲食店オーナーがいました。Nさんは僕の1棟目のビルのテナントさんの知り合いで、僕の町で事業展開をしようと視察に来た時に、そのテナントさんから僕のことを聞いて、電話をかけてきてくれました。
既に夜10時近かったのですが、僕はすぐにNさんに会いに行きました。Nさんは僕よりも若く、しかし20店舗以上の飲食店を経営している若手実業家でした。
当時、僕は仲介業もしていたのですが、しばらく話した後、Nさんは「 この町での不動産の契約をするときは全て広田さんを通します 」と宣言してくれました。
そして、Nさんは本当に、この町の1号店のテナントを購入する時、わざわざ仲介を僕に依頼してくれ、その後も自分で見つけた物件情報についても、僕を通して相手の不動産業者さんと交渉をしてくれたりしました。
そんなNさんから、僕がこの3棟目のビルを購入しようかというタイミングで連絡がありました。「 3号店を出すので、テナントを探して欲しい 」というのです。僕がこのビルの話をしたところ、すぐに見に来てくれることになりました。
翌日、このビルを見たNさんは、「 広田さんがこのビルを購入したら、2つのテナントを借りたい。1つは店舗、もう1つは従業員専用の事務所スペースとして」と言い、「 早くこの物件を押さえたい。だから早くこのビルを購入してほしい 」と僕に伝えました。
この話を銀行のHさんに伝えたところ、「 この話の通りになるのならば、融資はより前向きに検討できると思います。この話の内容を事業計画としてまとめて提出して下さい 」と言ってくれました。
そうして、Nさんという次の借り手が見つかった状態で無事に融資が実行され、僕は3棟目となるこのビルを購入することができたのです。価格は売値より100万値引きしてもらい、2,100万円になりました。
■ 毎月30万円が入ってくる「 油田 」のような物件だった
何年も空室が続いていたそのビルは、僕が購入して1カ月もしないうちに満室となり、家賃合計は毎月53万円になりました。ローン返済後も30万円が残るため、銀行口座に安定して現金が積み重なっていきました。一度埋まってしまうと、どんどんお金が増えていく感覚です。
僕はまるで、油田を掘り当てたような気持ちでした。
購入後しばらくして、このビルを狙っていたという不動産業者さんがやってきて言いました。「 ドル箱を手に入れましたね。このビルはこれから永遠に、あなたの会社を潤してくれるでしょう 」。この業者さんは元付の業者さんと仲が悪く、この物件を買えなかったそうです。
その後しばらくして、Nさんはビジネスパートナーとのトラブルにより、この地域から撤退することになりました。その時に僕はNさんへのお返しの意味も込めて、退去告知期間はゼロの即退去を認め、敷金を満額返却することにしました。
僕が仲介したNさんが所有していた物件も、Nさんが希望した数百万円の金額で居抜きとして購入することにしました。入居後に内装に1,000万円以上をかけていたことを知っているので、値切ることはしませんでした。
僕にとってはリスクの高い行動でしたが、Nさんとの出会いで3棟目のビルを買えたことへの感謝の気持ちを示したかったのです。その時に僕ができることを損得抜きで、精一杯やろうと思いました。
この3棟目は、Nさんとの別れの後、テナントの入れ替えがありながらも、現在までに購入額を上回る家賃収入を僕にもたらしてくれています。購入から4年経ち、借入は残り6年となり、金利も変動で0.94%にまで下がりました。
商業物件は怖いという人が多い中で、僕がとても面白いと思うのは、この油田ビルのようにとんでもない好条件のものが突然出てくるからです。しかも、テナントさんもNさんのようにリピーター( 一人でいくつも借りてくれる人 )が多いため、普通の住居のように毎回、ゼロから営業する必要がありません。
しかも、テナントはビジネスオーナーばかりなので、彼らと接することで、様々なことを学ぶことができます。お金をもらいながら学ばせてもらっている感じです。
■ 購入も損切りも即断即決
Nさんのビジネスをサポートさせていただきながら学んだのは、決断をその場ですることの重要性です。Nさんは、家賃が数十万円もする物件を、初めて案内した場で「 これ借ります 」と即決しました。そして、何も細かいことやうるさいことを言わないのです。
合計で4店舗の契約をサポートさせてもらいましたが、全てが一瞬でした。退去の判断も驚くほどあっさりしていました。これだけ投資したからもう少し粘るとか、そういうことが一切ありません。ビジネスで一番難しいのは損切りです。Nさんの華麗なる損切りは、僕にとっては衝撃でした。
Nさんが即断即決できるのは、日頃からあらゆるパターンを想定し、シミュレーションしているからなのではと僕は思います。既に頭の中で成功の公式ができていて、物件を見た瞬間に答えが出るから、迷いがないのしょう。
この油田ビルのあと、僕はどんどん物件を買えるようになり、毎日がフル回転でした。今はあまり無理をしないで、お金と与信を蓄えつつ、次のビッグウェーブに備えるフェーズと捉えています。そして次のチャンスが来た時には、現金で一気に集中的に買うつもりです。そのときはもちろん、即断即決です。