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借主が長期不在で連絡が取れない!合鍵で入室してもよい?

泉義孝さん_画像 第10話

賃貸している物件の借主が長期間家賃を支払わずに不在にして連絡が取れないような場合、大家さんとしては室内がどうなっているのか心配ですね。

今回は、そのような場合に大家さんが借主の承諾を得ないまま合鍵で部屋の中に入ることができるのかどうかについて、お話ししたいと思います。

1、借主の承諾なしに貸室に入れる?

まず、賃貸借契約中はたとえ大家さんであっても、借主の承諾がない限り室内に立ち入ることはできないのが原則です。これは、借主側に賃料不払いなどの事情があっても同様です。

契約書の中には「 賃貸人は必要がある場合には、賃借人の承諾なく貸室内に立ち入ることができる 」という条項を設けているものもあります。

しかし、貸室は借主にとって極めてプライベートな空間ですから、たとえこのような条項があったとしても、賃貸人が貸室内に立ち入るには借主の個別の承諾が必要とされています。

2、緊急事態のときは?

もっとも、賃貸人はどのような場合であっても借主の承諾なしに貸室内に立ち入ることができないというわけではありません。

たとえば、貸室内で火災やガス漏れなどの緊急事態が発生しているような場合でも、事前に借主の承諾を得ないと入室できないとなると、借主に連絡して承諾を得るのを待っている間に損害が拡大してしまい、賃貸人にとっても借主にとっても困ったことになってしまいます。

そのため、火災やガス漏れなどの緊急事態が発生している場合は、賃貸人は借主の承諾なしに貸室内に立ち入り、消火活動やガスの元栓を閉めるなど、貸室を保存するのに必要な行為をとることができます。

このような賃貸人の行為は「 緊急事務管理 」として認められます。「 事務管理 」( 民法697条 )とは、法律上の義務のない者が、他人のためにその他人の事務を処理することを指します。

なかでも、他人の身体や財産に急迫の危害が生じている場合に、これを免れさせるために事務を処理することを「 緊急事務管理 」( 698条 )といい、上記のような賃貸人の行為はこれにあたるといえます。

3、賃貸借契約の解除と明渡請求訴訟

上述のとおり、借主が長期間家賃を支払わずに貸室を不在にしているような場合であっても、ガス漏れなどの緊急事態が生じていない限り、大家さんは借主に無断で合鍵を使って貸室内に立ち入ることはできません。

では、大家さんとしてはどうすればよいのでしょうか?
借主が戻ってくるのをひたすら待つしかないのでしょうか?


借主が戻ってきて、滞納していた家賃を支払ってくれればよいですが、戻ってきても滞納した家賃を払ってくれないかもしれませんし、夜逃げなどでそもそももう戻ってこないかもしれません。

大家さんとしては、そんな状態でいつまでも借主が戻ってくるのを待っているわけにはいかないでしょう。

そこで、大家さんができることとして、借主の賃料不払いを原因として賃貸借契約を解除し、貸室を明け渡してもらうことが考えられます。

具体的には、家賃滞納を理由とする賃貸借契約解除に基づく建物明渡請求訴訟を提起するということになります。

賃貸人が賃貸借契約を解除する場合、まずは内容証明郵便により期限を定めて未払い賃料の支払いを催告し、支払いのないときには賃貸借契約を解除するという意思表示をするのが通常です。

ところが、借主が長期不在で連絡が取れなくなっているような場合は、内容証明郵便を出しても郵便が到達しません。

そこで、建物明渡請求訴訟を提起し、その訴状の中で支払期限を定めて未払い賃料の支払いを催告し、支払いのないときには賃貸借契約を解除するという意思表示をすることになります。

訴状の場合は、借主が不在で受取がなされなかったとしても、「 公示送達 」という方法により借主に送達してもらうことができます。

公示送達は被告( 借主 )の住所や居所が不明のため訴状等を送達する場所がわからないときに申し立てることができ、裁判所の掲示場に訴状が掲示された日から2週間経過後( 民事訴訟法では期間の計算は初日不算入なので、厳密には掲示された翌日から2週間後 )に訴状が相手方に到達したことになります。

4、明渡の強制執行

公示送達がされるような場合、借主が裁判に出てくることはほとんどないでしょうから、それほど時間がかからずに賃貸人の主張どおり、賃貸借契約の解除と貸室の明け渡しを認める勝訴判決が下されることが多いでしょう。

もっとも、勝訴判決が出たからといって、賃貸人がすぐに貸室内に立ち入ることができるようになるわけではありません。

勝訴判決を得たうえで裁判所に明渡しの強制執行の申し立てをする必要があり、強制執行により初めて貸室内に立ち入ることができるようになるのです。

なお、建物明渡の強制執行については、私の以前のコラム( 第3話「 家賃滞納!から建物明渡請求までの正しい進め方 」)でもう少し詳しく説明しているので、ご参照いただければと思います。

このように、借主の承諾を得ないで貸室内に入るにはかなりの手間と時間がかかるわけですが、このような手続きを踏まないで緊急事態でないのに借主の承諾なしに無断で貸室に立ち入ると「 住居侵入罪 」( 刑法130条 )という犯罪にもなりかねませんのでご注意ください。

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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 泉義孝(いずみよしたか)さん

泉義孝さん

弁護士・不動産投資家
「泉総合法律事務所」代表
「不動産トラブル何でも法律相談所」所長

■ 経歴

京都大学法学部卒業。
社会人生活を経て司法試験に合格し、2000年に弁護士登録。

都内にて勤務弁護士を2年間務めたのち、共同事務所を設立して独立。
その後、個人事務所を開設し、弁護士法人泉総合法律事務所を設立する。

知的財産権、渉外関係を除く民事全般、刑事事件全般に取り組んでおり、不動産関連の案件の実績も豊富。

信条は「多角的視点に立って、最後まで粘り強く戦い抜くこと」。
趣味は海外旅行で、特に好きなのはイタリア。

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