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無断で塾やテレクラに使われていた部屋。用法遵守義務違反による契約解除は可能?

泉義孝さん_画像 第11話

住居として物件を貸したのに、実は借主が住居として使用せず、貸室内で商売をしていた、ということが後で発覚することがあります。そんなとき、大家は「 契約違反 」として賃貸借契約を解除することができるでしょうか?

今回は、このような借主に用法遵守義務違反があった場合の契約の解除についてお話ししたいと思います。

1、借主の用法遵守義務とは

賃貸借契約において、借主は契約またはその目的物の性質によって定まった用法に従い、賃借物件を使用・収益しなければなりません( 民法616条 594条1項 )。

この借主の義務を「 用法遵守義務 」といいます。たとえば居住用の建物の場合、契約書で使用目的として「 住居として使用すること 」などと規定していることが多いと思います。

契約書上に明記されていなくても、建物の構造や所在地,周囲の環境などから、居住用であることが前提であるという場合もあります。

このように居住用として賃借している物件であるにもかかわらず、別の目的で物件を利用している場合に、借主には「 用法遵守義務違反 」があることになります。

では、借主に用法遵守義務違反があった場合、それを理由として貸主は賃貸借契約を解除することができるでしょうか?

2、重要なのは「 信頼関係が破壊された 」かどうか

以前のコラムでもお話したことがありますが( 第8話「 ペット可物件のトラブルにどう対処するか 」 )、賃貸借契約は継続的かつ貸主と借主の信頼関係を基礎とする契約です。

そのため、契約を一方的に解除できるケースは非常に限定されており、裁判例では客観的にみて、「 貸主と借主との間の信頼関係が破壊された 」といえるような場合でなければ解除できないとされています。

借主の用法遵守義務違反を理由に賃貸借契約を解除する場合も、この考え方があてはまります。

つまり、借主に用法遵守義務違反があった場合でも、それだけで直ちに賃貸借契約を解除できるわけではなく、それによって貸主と借主との間の信頼関係が破壊されたといえなければ解除はできないということです。

では、信頼関係が破壊されたといえる程の用法遵守義務違反には、どのようなものがあるのでしょうか。裁判例をもとに具体的にお話していきたいと思います。

3、用法遵守義務違反が問題となった裁判例

1つ目のケースは、住居で学習塾を経営した事例です。

契約書上は使用目的を通常の住居としての使用に限定する旨の記載はないものの、少なくとも貸主・借主の間の了解としては、比較的小人数の家族が通常の用法に従って使用することが予定されていた賃貸家屋でした。

ところが、契約後まもなく借主がその建物の一部屋( 6畳間 )で学習塾を始めたという事例で、貸主が用法遵守義務違反を理由に学習塾開設から2か月で契約解除の通知を出しました。

この解除の可否について、裁判所は「 生徒数は6名程度に過ぎず、借主はじゅうたんを敷いて建物を傷めないように配慮していた 」として、用法遵守義務違反はなく、これを理由とする解除はできないとしました。

この事例では、貸主は学習塾開設の説明会の開催等について使用目的に反するとして中止を求めたのに借主が反発する態度をとったことや、合意解除交渉において借主から不当な要求があったことを理由に、信頼関係が破壊されていると主張しました。

これについて、裁判所は借主がそのような態度をとった原因は貸主側にもあること、現在は学習塾をやめて住居専用として使用していることなどの事情を考慮して、信頼関係の破壊に至っていないと判断しました。

2つ目は、借主が建築資材販売会社の事務所として使用すると説明して賃借したビルの一室を、テレホンクラブとして使用していた事例で、用法遵守義務違反を理由とする貸主の契約解除の有効性が争われました。

裁判所は、テレホンクラブの営業によりビル全体の品位が損なわれ、警察の捜索がなされたりするといったビル所有者にとって由々しき事態が生じるおそれがあること、借主がテレホンクラブを営業するとわかっていれば貸主は借主に当該物件を賃貸しなかったこと。

また、他の入居者から苦情や退去の申入れがあることなどの事情をふまえて、借主の用法遵守義務違反は貸主との信頼関係を破壊しているとして、解除を有効としました。

4、裁判例をふまえて

裁判例をみてみると、用法遵守義務違反を理由とした賃貸借契約解除の有効性については、たんに使用目的を守らなかったというだけにとどまっていません。

契約締結までの経緯や用法遵守義務違反行為が賃貸物件に及ぼす影響の大きさ、用法遵守義務違反に関する貸主と借主の交渉の経緯、貸主・借主双方の事情などを総合的に考慮して判断していることがわかります。

借主が使用目的に違反して貸室を使用していることが判明した場合は、まず実態を把握し、借主と話し合うことが重要となります。

その上で、貸室を損傷したり、建物全体の住環境を乱すような営業をしているなど、貸室や建物全体に及ぼす影響が大きく、将来的に賃貸借契約を継続していくことが難しい場合には、用法遵守義務違反を理由とした賃貸借契約の解除を申請すると、認められやすいといえそうです。

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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 泉義孝(いずみよしたか)さん

泉義孝さん

弁護士・不動産投資家
「泉総合法律事務所」代表
「不動産トラブル何でも法律相談所」所長

■ 経歴

京都大学法学部卒業。
社会人生活を経て司法試験に合格し、2000年に弁護士登録。

都内にて勤務弁護士を2年間務めたのち、共同事務所を設立して独立。
その後、個人事務所を開設し、弁護士法人泉総合法律事務所を設立する。

知的財産権、渉外関係を除く民事全般、刑事事件全般に取り組んでおり、不動産関連の案件の実績も豊富。

信条は「多角的視点に立って、最後まで粘り強く戦い抜くこと」。
趣味は海外旅行で、特に好きなのはイタリア。

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