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アパート共用部で事故発生!大家の責任は?

泉義孝さん_画像 第6話

今回は、賃貸しているアパートの設備の瑕疵で賃借人や第三者が怪我をした場合の大家の責任についてお話ししたいと思います。

1、共用部設備で賃借人や第三者が怪我をした場合の大家の責任

たとえば、賃貸しているアパートのエレベーターやエントランスの自動ドアの調子が悪くて、賃借人が指を挟まれて怪我をしてしまったような場合、大家は損害賠償責任を負わなければならないのでしょうか。

エレベーターやエントランスの自動ドアのような建物の設備は法律上、「 土地の工作物 」と呼ばれます。そして、民法717条1項は「 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う 」と定めています(「 工作物責任 」といいます)。

「 土地の工作物 」の「 瑕疵 」、つまり“一般的に備わっているはずの安全性( 機能や品質 )が備わっていないこと”が原因で損害が発生した場合、まずはその「 占有者 」が責任を負うことになるということです。

上記の例の場合、共用部のエレベーターやエントランスの自動ドアの「 占有者 」は大家です。したがって、原則として大家は損害賠償責任を負うことになります。

もっとも、民法717条1項はただし書きで、「 占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない 」としています。

これは、建物の設備の「 占有者 」が損害の発生を防止するのに必要な注意を尽くしていた場合は、責任を免れることができるということです。

ただし、今度は建物の設備の「 所有者 」が責任を負うことになります。この「 所有者 」の責任は、たとえ「 所有者 」にまったく過失がなくても負わなくてはならないという大変重い責任です( 「 無過失責任 」といいます )。

ですので、大家さんの立場からするととても厳しいのですが、いずれにしろ、損害賠償責任を負わなければならないということになってしまいます。

2、他に責任を負うべき者がいる場合

では、エレベーターやエントランスの自動ドアの調子が悪い原因が第三者にあるような場合にも、大家は損害賠償責任を負わなければならないのでしょうか。

たとえば、製品それ自体の欠陥が原因の場合や保守メンテナンス会社がいい加減な点検しかしなかったことに原因があるような場合などです。

そのような場合について、民法は「 損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる 」( 民法717条3項 )としています。

つまり、上記のような場合には、大家は怪我をした人( 被害者 )に対して損害賠償責任を負いますが、メーカーや保守メンテナンス会社に対して、被害者に支払った金額を支払うよう請求することができることになります。

小さな物件の場合、大家さんが自身で直接管理していることもあると思いますが、賃貸物件の管理を管理会社に任せていらっしゃる大家さんも多いと思われます。

また、賃貸物件の管理は大家自身で行っていても、エレベーターに関しては、保守メンテナンス会社と契約をしていることが通常ではないでしょうか。

このように管理会社や保守メンテナンス会社と契約している場合は、不適格な業者を管理会社・保守メンテナンス会社として選んだり、保守メンテナンス会社から設備の不備や部品交換の必要性等を指摘されていたにもかかわらず、放置していたというようなことがなければ、通常は求償権の行使ができ、大家の金銭的負担は最終的には填補されることが多いでしょう。

3、事故が被害者側の行為により発生した場合

では、エレベーターやエントランスの自動ドアでの事故が被害者側の行為によって発生した場合の責任はどうなるのでしょうか。たとえば、子どもがエレベーターでいたずらをしていて、誤って指を挟まれて怪我をしてしまったような場合などが考えられます。

まず、事故がもっぱら子どものいたずらが原因で発生したものである場合、つまり、エレベーター自体に「 瑕疵 」がない場合は、大家の工作物責任は否定されます。工作物責任は、工作物に「 瑕疵 」があってはじめて生じる責任だからです。

他方で、子どものいたずらが事故発生の一因となった場合でも、エレベーター自体にも一定程度の「 瑕疵 」があった場合には、大家は工作物責任を負うことになるでしょう。もっとも、子どものいたずらが事故発生の一因となっていますので、過失相殺の考え方が適用される余地があります。

過失相殺とは、損害賠償請求において、被害者側にも過失があったときには、その過失を考慮して賠償額が減額されるというものです。

したがって、上記のような例の場合には、子どもたちのいたずらが「 被害者側の過失 」として考慮されて過失相殺がなされ、損害賠償の金額が減額となる可能性があります。

損害賠償額の相場やどの程度過失相殺がされうるか等は、事故態様や怪我の状態等具体的な事情により異なりますので、もし賃貸しているアパートの設備の瑕疵で事故が起きてしまった場合には、一度弁護士に相談されるのがよいでしょう。

4、おわりに

以上のとおり、アパートの所有者・賃貸人である大家の工作物責任は重いものですので、まずは賃貸している物件で事故が起きることがないよう、普段から設備の安全確保のためにきちんと保守管理をすることが重要です。

エレベーター等の設備の保守点検はコストがかかりますが、管理コストを削減しようとして、安くても問題が多い業者を選定したり、保守点検の回数を極端に少なくしたりすれば、物件の安全確保が疎かになりかねませんから、注意しましょう。

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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 泉義孝(いずみよしたか)さん

泉義孝さん

弁護士・不動産投資家
「泉総合法律事務所」代表
「不動産トラブル何でも法律相談所」所長

■ 経歴

京都大学法学部卒業。
社会人生活を経て司法試験に合格し、2000年に弁護士登録。

都内にて勤務弁護士を2年間務めたのち、共同事務所を設立して独立。
その後、個人事務所を開設し、弁護士法人泉総合法律事務所を設立する。

知的財産権、渉外関係を除く民事全般、刑事事件全般に取り組んでおり、不動産関連の案件の実績も豊富。

信条は「多角的視点に立って、最後まで粘り強く戦い抜くこと」。
趣味は海外旅行で、特に好きなのはイタリア。

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