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「建て直したいから出て行ってもらえる?」は可能か。-賃貸物件の老朽化と立ち退きについてー

泉義孝さん_画像 第7話

今回は賃貸物件の建替えと立退き・明渡請求をテーマに、賃貸借契約の更新拒絶の方法や立退き料などについてお話ししたいと思います。

1、建替えを理由に出て行ってもらえる?

賃貸しているアパートが老朽化してきたので立ち退いて明け渡してもらいたいとき、借主に対して「 建物を立て直すから出て行って欲しい 」と言えるのでしょうか?

結論からいうと、建物を建て替えざるを得ない事情があり、貸主が一定の手続きを踏んだ上で、借主に対して然るべき金額の立退き料を支払えば可能といえるでしょう。

以下では、どのような手続きになるのか、立退き料の支払いなどについてお伝えします。

2、法定更新と更新拒絶

まず、借主にアパートを立ち退いて明け渡してもらうには、賃貸借契約を終了させなければなりません。契約期間の途中でも、借主が了承してくれれば合意解約により終了させるということも可能ですが、通常は契約期間満了のタイミングで契約を更新せず終了させることが多いでしょう。

ところで、アパートなどの賃貸借契約では、契約期間の満了に伴って契約を更新する場合、改めて更新契約を締結するのが通常です( これを「 合意更新 」といいます )。

ですが、更新契約を締結し忘れてしまう、条件面で折り合いがつかず更新契約を締結できない、といったことも実際には少なくありません。

そして、このように更新契約を締結しないまま契約期間が満了した場合でも、何もしなければ借地借家法の規定により、自動的に従前と同一の内容で契約が更新されることになります( 借地借家法26条1項 )。これが「 法定更新 」です。

つまり、更新契約を締結しなければ、契約期間が満了したら借主に出て行ってもらえるということにはならないのです。

したがって、契約期間が満了したら借主に出て行ってもらおうと考えているのであれば、合意更新をしないだけでなく、法定更新がされないようにしておかなければなりません。

法定更新を防ぐには、「 更新拒絶 」をする必要があります。具体的には、契約期間が満了する1年前から6か月前までに、借主に対し、「 契約期間満了後は契約を更新しない 」という内容の通知をすることになります( 借地借家法26条1項 )。

「 契約期間が満了する1年前から6か月前まで 」という制約がありますので、タイミングの見極めが重要です。

なお、更新拒絶をしても、契約期間満了後に借主が建物の使用を継続しているときには、これに対して貸主は遅滞なく異議を述べることが必要とされていますのでご注意ください( 借地借家法第26条2項 )。

3、正当事由がなければ更新拒絶ができない!

更新拒絶はタイミングが重要という話をしましたが、重要なのはそれだけではありません。更新拒絶はただ通知をすればいいというものではなく、「 正当事由 」が必要とされています。

貸主と借主のそれぞれの事情を比較して、賃貸借契約を更新しないことが相当といえなければならないということです。正当事由があるかどうかは、次の5つの基準で判断されます( 借地借家法28条 )。

@建物の賃貸人及び賃借人がそれぞれ当該建物の使用を必要とする事情
⇒例えば、新しいマンションに建て替えないと賃料収入が安定的に得られず生活が成り立たない、という場合は、貸主にもその建物を使用する、つまり建替えの必要性が認められやすくなります。

A賃貸借に関するそれまでの経過
⇒賃貸借に至った事情はもとより、家賃不払いや信頼関係を破壊する行為の有無がポイントになります。

B建物の利用状況
⇒借主が建物をきちんと使用していたか? という借主の利用状況が考慮されます。

C建物の現況
⇒老朽化による建替えの必要性が本当に生じているか? といった点です

D貸主が建物の明渡しの条件として立退料の支払いを申し出た場合にはその申出
⇒然るべき金額の立退き料が支払われたのか? という点が考慮されます。

これら5つの点を総合的に検討した上で、正当事由の有無が判断されるわけです。建物が古くなっているとはいえ、修理をすれば借主が問題なく生活できる状況であれば、正当事由として認められにくいですし、反対に老朽化が非常に激しく、倒壊の危険などがあれば、正当事由は認められやすくなるでしょう。

4、立退き料は支払わないとダメ?

ところで、正当事由の判断において、立退き料の支払いが考慮されると書きましたが、立退き料は支払わないといけないのかというと、必ずしもそういう訳ではありません。

立退き料の支払いには、上記@からCの基準では正当事由が不十分な場合に、その不足分を補うといった意味合いがあるため、上記@からCの基準で十分に正当事由が認められるような場合には、立退き料の支払いは必須にはならないといえます。

たとえば、基本的な構造部分を含めて激しく老朽化している建物について、貸主に建物使用の必要性がなかったにもかかわらず、立退き料の支払いを考慮して正当事由を認めた裁判例もあります。

地盤崩壊などの危険性もある老朽化の激しい建物について、取り壊して貸主の生活の基盤となるような新しいビルを建てる必要性があるとして、立退き料の支払いなしに正当事由を認めた裁判例もあります。

なお、立退き料の金額は、定型的な計算式があるわけではなく、引越し費用や借地権の価格、貸主・借主双方の年齢や経歴、資産、経済状態、健康状態、土地や建物に関する事情などを総合的に考慮して決定することになります。


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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 泉義孝(いずみよしたか)さん

泉義孝さん

弁護士・不動産投資家
「泉総合法律事務所」代表
「不動産トラブル何でも法律相談所」所長

■ 経歴

京都大学法学部卒業。
社会人生活を経て司法試験に合格し、2000年に弁護士登録。

都内にて勤務弁護士を2年間務めたのち、共同事務所を設立して独立。
その後、個人事務所を開設し、弁護士法人泉総合法律事務所を設立する。

知的財産権、渉外関係を除く民事全般、刑事事件全般に取り組んでおり、不動産関連の案件の実績も豊富。

信条は「多角的視点に立って、最後まで粘り強く戦い抜くこと」。
趣味は海外旅行で、特に好きなのはイタリア。

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