最近、「 不動産経営において法人化しないのですか? 」という質問を良く受けます。100室も所有していれば、法人化するのが当然、という考えなのでしょう。今日は、そのあたりについて書いてみたいと思います。
不動産経営の確定申告では、様々なレベルがあります。普通の勤め人・サラリーマンであれば、勤め先が給与から源泉徴収し、年末調整( 基礎控除、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除、生命保険控除・地震保険控除、住宅取得借入金控除( 2年目以降 )等 )の上、所得税・住民税を納税してくれます。
普通の勤め人・サラリーマンが、確定申告するとすれば、通常、医療費控除、住宅取得借入金控除( 初年度のみ )等くらいでしょう。あとは、不動産経営をしている場合の不動産所得、各種事業をしている場合の事業所得くらいでしょうか。
レベルとしては、白色申告、青色申告、青色申告:事業的規模( 原則5棟10室以上 )、法人化という感じでざっくり分けられます。それぞれが、この中から自分に合ったやり方を選べばいいのです。
■ 白色申告と青色申告の特徴
白色申告の場合、規模は関係ありません。複式簿記を要求されないため、やり方も簡単です。ただし、節税の幅は小さくなります。( あまり知られていませんが、家族に対する給料として、配偶者は年間86万円迄、その他家族は年間50万円迄は認められているという説もあります )。
青色申告になると、青色申告控除が10万円認められます( ただし、赤字の際は効果がありません )。青色申告:事業規模( 原則5棟10室以上 )の場合には、正規の簿記の原則であれば、青色申告控除が65万円認められます( ただし、赤字の際は効果がありません )。
あとは、青色申告専従者給与が使えます。事前に、税務署に届けた範囲内で、適正な金額であれば、白色申告のような制限はありません。年始時点で15歳以上で、同居の家族で専従( 専業主婦の配偶者、リタイア後の両親、フリーターの子供等 )であればOKです。
逆に言えば、共働きの配偶者、雇用延長等の両親、学生の子供等は駄目です。専従が可能な家族にしてもらうことですが、電話番・留守番・来客対応、清掃、パソコン・会計業務等、探せば何かあるでしょう。
ただし、年間100万円以上で住民税、103万円以上で所得税、130万円以上で社会保険料の対象となるので、100万円未満に抑えておいた方が、簡単ですし、節税になるといえます。
後は、損失の繰越控除( 3年間 )が使えます。黒字の時は関係ありませんが、赤字の時は、効果を発揮します。
■ 節税の幅が広がる法人化
「 法人化 」すれば、節税の幅はもっと拡がります。人件費については、専従者給与に関わらず、同居の家族以外でも大丈夫です。赤字の繰越も7年間可能姉妹です。細かい点も触れれば、生命保険料も経費にできます。
従業員の福利厚生費としてスポーツクラブ・旅行費用等を経費計上することも可能姉妹です。小規模企業共済に加入し、経費計上することも可能姉妹。反面、赤字でも法人住民税が年間7万円取られますし、個人の確定申告とは別途、法人税等の申告も必要となり、煩雑になります。
あとは、副次的なメリットとして、法人の方が一般的に信用力があると思われやすく、融資も付きやすくなるかも知れません。株式会社の場合には、有限責任ですが、個人で連帯保証をしている場合には、あまり差異はなくなります。
それと、法人は、死亡・相続と言う概念がなく、半永久的に存続させることも可能姉妹です。
ところで、なぜ私は法人化しないのか、という理由ですが、私の場合は、耐用年数の短い築古の物件の減価償却費、日常家事関連費等の経費が大きい為、青色申告上、不動産経営は赤字となっております。
しがないサラリーマンの方の安月給を足しても赤字の為、源泉徴収された所得税は全額還付。住民税も非課税となっており、所得税・住民税はこれ以上節税しようがないレベルです。( もっとも、固定資産税・都市計画税だけでも、一般の勤め人の所得税・住民税以上に取られてはいますが。。。 )
従って、現状では、青色申告( 事業規模 )で充分なのです。今後、幸か不幸か( ? )、青色申告上もあまりに不動産経営が黒字化したり、勤め人を卒業し、事業もするようにでもなれば、法人化も考えるかも知れません。が、まだ時間がかかりそうです。
【 まとめ 】
白色申告・青色申告・青色申告( 事業規模 )、法人化は、一長一短あります。御自身の状況( 収支・財務内容、ポリシー等 )に応じて、費用対効果を考えて、選択しましょう!!