高額な工事費用の請求書を見たときは、本当に血の気が引く思いでした。あれから何が起きたのか。その後の顛末をご紹介します。( 第一回を読んでいない方は、以下を先に読んでいただければと思います )。
参照:利回り35%の築古RC物件を購入後、発覚した赤水トラブル!
■ 赤水が出た部屋の入居者へ70万円の迷惑料を払う
高利回りにつられて購入した築古RCマンション。入居者さんから、「 赤色というか茶色というか、とにかく普通じゃない水が出る 」というクレームが入り、私は管理会社さんと一緒に急いで現場にかけつけました。
入居者さんが蛇口をひねって、色のついた水が出てきたときは、何とも言えない空気が流れました。そのあとは、ひたすら謝罪です。
すぐには修繕できない状況だったので、別物件への引っ越し費用、物件に入居する際にかかった費用の返金、生活に支障が出た分の迷惑料など、70万円くらいが必要になりました。かなりの痛手でしたが完全にこちらに非がありましたので、仕方ありません。

この蛇口から赤水が出てきました…
その後、空室の水を一室一室、管理会社の方と調べました。各部屋の水道を開いて、見た目の判断とサンプリングを行い、成分を専門機関に調査依頼。その結果、単身用は基準値をクリアしていましたが、ファミリー用は全てNGでした。
この物件は、屋上の貯水槽から4系統に分かれて水道管が繋がっていました。そのうち、ファミリー用の2系統が、長期間の空室により、配管内のサビが進行してダメになってしまったと思われます。
管理会社からは「 こんな状態では入居は無理なので、ファミリー用の募集を停止します。水道管の修繕費用見積もりを取っておきますので、今後の対応を検討ください 」と連絡がありました。
確かに、あれでは募集停止も当然です。しかし、内装工事に自己資金のほとんどをつぎ込み、これから回収というときに、物件の半分、しかも、賃料が高いファミリー用が貸出し不能になるなんて、どうしたらいいんだ…。
利回りは想定の2/5程度まで低下するため、金融機関への返済だけでギリギリ。少しの空室や固定資産税など諸経費を入れると完全に持ち出しになってしまい、キャッシュが回りません。今まで大きな失敗もなく物件を増やして来た私にとって、初めての大きな挫折でした。
■ 工事費用の700万円が払えない!
不動産の醍醐味はレバレッジを掛けられることですが、これが負の方向に向くと大変なことになるということを、身をもって知りました。
追加の借り入れはできるだろうか。借り入れした場合、返せるだろうか。処分する場合、残債がいくら残るのだろうか。毎日不安で仕事や家庭、他の不動産のことも全然手につきません。家族に心配をかけるわけにはいかず、ただ一人で悩みました。
サラリーマンの同僚が普通に仕事をしていたり、周りの投資家さんが普通に物件の運営をしているだけで、「 どうして自分だけこんな思いをしなきゃいけないのか… 」と悔しくて、ちょっとした会話に突っかかったり、相手のことをやたらと否定したりするようになりました。
自分がどんどん、嫌な人間になっていくのが分かりました。
しばらくたって、管理会社から見積もりが届きました。価格は約700万円! 工事の内容は、新しい配管を露出で取り付け、経路を変更するというものです。RCなので木造のように簡単に壁を壊して配管を取り替えることができず、高額になるということでした。


また、ライニング( 給湯配管更生工事 )に、さらに500万円近くかかることもわかりました。とても払える金額ではないため、金融機関に追加融資のお願いをしてみるも、「 えっ、もう追加融資ですか? いやいや、そんな高額は厳しいでしょう 」と返事はかなり冷めた感じです。
その夜は自暴自棄になり、とことん自分を追い詰めました。なぜ、もっと念入りに確認しなかったのか、どうして誰にも相談せずにこんな物件を買ったのか。なんで、なんでと…。最終的には生命保険の証書を見つめるほど、深く落ち込みました。
■ 起死回生なるか!? 仲間の大家さんからもたらされた新情報
数カ月くらいは抜け殻の状態で、周りともほとんど連絡を取りませんでした。ある日、そんな僕をふんどし君が心配してくれて、周りの大家さんとの情報交換会に誘ってくれました。
会場で他の大家さんと話している時、「 このところ、田舎の物件でも、RCや重量鉄骨物件などの評価が出るものなら、都会の業者が買取をしているらしいよ 」という話を聞きました。「 そんな方法があるなんて 」と目からウロコが落ちた私は、早速、その業者さんに連絡してみました。
すると、私の物件がある地域も最近、買取の対象になったと言うではありませんか。早速、買取依頼を出しました。( もちろん、水道管のことは告知しました )。
買取業者から出された金額は、利回りでいうと20%程。同じエリアで12%で買ってもらったという人もいたので、水道管のことがネックになったのだと思います。しかし、早く何とかしたいと思っていた私は、その価格で契約しました( 私の収支はトータルでプラマイ0でした )。
契約書は「 第三者のための契約 」となっていました。誰かがこの業者から私が売った価格以上で買うということなのでしょう。
業者の場合は瑕疵担保が付くので水道管の修理はすると思いますが、そこに利益を乗せて売るとなると、いくらになるのだろう…。自分は物件の目利きこそ甘かったものの、価格自体はかなり安く買っていたので、トラブルが起きても返済だけはなんとか続けることができました。
しかし、次に買う人はどうだろうか…。都会の人は某高金利銀行で融資を引いて、利回り10%程度で運営すると聞きます。RC物件は固定資産税が高いですし、仮に大規模修繕済みでトラブルが起きなかったとしても、ほんの数戸空いただけで持ち出しになってしまうのではないか…。
もしかして、次に買った人は、自分以上に大変な思いをするのでは…? 胸の中に沸き上がるそんな感情に、「 きっと、お金持ちの方が余裕資金で買ったんだ 」という思いを上書きました。そして、その物件は私の手元から離れました。
■ 再生事業は甘くない
結論からいえば、私は市況と融資情勢に助けられ、大ケガをしないですみました。しかし、目利きも十分にできないまま物件を購入し、必要な修繕を盛り込んだ借り入れを行うことができず、資金がショート寸前になるという非常にきつい思いをしました。
価格が安いというのは一番のリスクヘッジですが、借入額や保有物件の築年数を考慮して手持ちキャッシュは残しておかないと、何かあったときに、本当に困ります。築古RC物件の再生事業というのは、はたで見るほど甘くない、ということを痛感しました。
( もし、融資情勢が変わった今なら、買取業者を通して都会の人に売るという選択肢はなかったと思います。自分は運がよかったですし、すぐに行動することの重要性を感じます )。
今後は同じ失敗をしないように、セミナーや物件見学会などを通して、知識と「 物件を見る目 」を養っていきたいです。写真や動画を撮ってプロに見てもらったり、確認もれがないかチェックリストを作ったりするのも、失敗防止につながると思います。
と、なんだかんだ言いましたが、一番大事なのは「 失敗やミスをしても腹を決めて立ち向かうメンタルの強さ 」だと、今回のことで確信しました。あのまま部屋で落ち込んでいたら、今もまだ状況は変わっていなかったかもしれません。
情報交換会に誘ってくれたふんどし君には感謝しています。前向きで情報力のある仲間のおかげで、私はピンチを脱することができました。今後は苦難にぶつかったとき、悔やむより早く、困難に立ち向かえる自分を目指します。そして、自信を持って、不動産道を歩んでいきたいと思います。
今回はこのようなお恥ずかしい話を読んでいただきありがとうございました。平成築といっても、初期のものは築30年近い立派な築古です。大型の築古物件の再生には、知識と資本力、そして胆力が必要であることを皆さんに伝えて、私の失敗告白を終わりにしたいと思います。