こんにちは、馬橋令と申します。
FIRE( Financial Independence, Retire Early 〜 経済的に独立し、早期に退職すること )を一度やってから失敗してしまい、泣きながら元の上司にお願いして勤め人に戻った、失敗多めの投資家です。
ここで恥ずかしながら告白します、このたび米国不動産投資で失敗しました。なんと1,000万円もの大金を溶かしちゃいました。同行した投資家仲間も20人ほどいましたが、全て無残に失敗。
この悲惨な失敗についてこれから3回にわたりご報告させていただきます。
■ 土地は150坪!戦前築の超築古戸建てを400万円現金買い
私はこういう物件を、現金で数棟買いました。現金で買った理由は、
- @ リーマン直後の当時、米国物件を担保にカネを貸す日本の金融機関がなかったこと
- A 物件価格が激安なので高利回りだけど、危なすぎるエリア&担保価値がほとんど無い物件なので、米国でもカネを貸す金融機関がなかったこと
物件の大体のイメージは
- 物件価格400万円現金買い/家賃月額9万円・年額108万円で利回り30%弱
- 土地は150坪くらいで建物150〜170平米。間取りは3BR( 3つの寝室 )浴室1つとトイレ1つみたいな間取り。
- 築80年〜100年くらい。
アメリカでは、売買されている住宅の90%が中古なのです、アメリカだけでなく、英国で86%、フランスでも64%が中古です。対する日本は、わずかに14%。
この背景には、取引事例の透明化、減価償却と税法、インスペクションの制度化など優れた仕組みがあります。日本ではほとんど不動産業者・アパートメーカー・建売業者など、業者の利益に沿った政策がとられていますが、米国ではオーナー利益に沿った政策がとられています。
■ アメリカの投資環境は日本に比べてはるかに良い
一つ申し上げておくと、アメリカでの不動産投資自体は、良いんです。次の図のように、アメリカの不動産投資にまつわる社会制度の整備は、日本なんかよりもずーっと遥かに素晴らしく、不動産所有者が富を蓄積できるようにかなり工夫され洗練されています。
出典:経産省HP
その結果、日米ではこんなに違う!!
日米の住宅投資額累計と住宅資産価値
(出典)国土交通省:中古住宅流通促進・活用に関する研究会資料
日本は住宅を買えば買うほど損をさせられる、ムダな支出をする国であることが、ハッキリとわかると思います。この「 投資額の累計 」と「 ストック額の差分 」は、要するに「 ムダな建物廃棄 」の合計です。その内のかなりの割合が「 建設業者に流れているカネ 」です。
なぜこんなことに!?
それは「 徹底的な建設業者寄りの政策 」を国土交通省・財務省が打ち出しているからです。家を所有することに関して、国土交通省・財務省は、“あなた方を貧乏にさせて、業者ばっかりエコヒイキ。要するにあなたの明確な敵”、なんです。
てなことで、米国の投資のインフラやルール自体は良いものなのです。
■ 日米の違い、理解不足が失敗の原因
私がアメリカ不動産で経験した失敗の本質的原因、気になりますよね。先に答えを言っちゃいます。
- 物件はまあまあだが「 悪意のパートナー 」にひっかかった
- ガイジン頼りの“超”遠隔リモートコントロールビジネスの難しさに直面
- 最後まで自分が解決力ある主体となれず、結果的にコミットが不十分だった
米国投資全てが失敗する筋の悪い投資ということではありません。先に触れたように、むしろ日本よりもずっと良いです。全ては「 自らのスキルと解決力とコミットメント 」「 パートナー選び 」次第です。皆さんが海外投資をする場合は本当に気をつけてください。
それでは私の米国不動産投資の失敗の原因について、これから思いあたる部分を詳しくご紹介していきます( 注:上記の通り今回は現金決済なので、金利・融資については一般論です )。
■ 失敗@:英語の専門用語の嵐は、英語が得意程度の元商社マンにはハードルが高かった
TOEICスコアには自信がある私ですが、不動産ジャーゴンだの不動産ターミノロジーだの、専門用語が多過ぎで大変苦労しました。
でもこれは、“生まれも育ちも日本の人であれば誰でも不動産関連の用語が分かり、実態が把握できるのかというとそうではない”ことと同じだと思います。
■ 失敗A:米国の不動産取引・大家業に関する法律や実務の実態が全く理解できなかった
大家業は大事なことが全て「 契約 」で成り立っていると言っても過言ではありません。多くの大家さんとお会いして気がついたのですが、日本の大家さんにはそれを意識してない方もおられます。でも、それではあまりに無防備で危険ですので、そういう方はちょっと勉強したほうが良いでしょう。
日本では法律は全て日本語で書いてあるので、読めば理解できます。また、法務マターで疑問があれば、まわりの弁護士や不動産屋さん、経験豊富な大家さんに気軽に聞くことができます。
ところがアメリカでは、失敗@で述べたように言葉のハードルがありましたし、更にその先の米国の不動産取引に関する法令やルールの理解がほとんどありませんでした。これらが失敗の要因になりました。
■ 失敗B:日本と8 Mile Roadの南側では“常識”がかなり違う
日本においても遠隔地の大家業の収益性や安全性、ないしはパートナーである管理会社のサービスの質については、ばらつきがあります。ただ、大体こんな風になるでしょ、ということがある程度推測できるんですよね。
日本人以外の海外からの経済移民が、移民同士での殺人や傷害事件、家畜の大規模盗難など局所的に悪事を働いているという報道は聞きますが、あくまで局所的でほぼ犯人は捕まっています。
現代の日本人は概ね常識的な人が多いです。日本では( 発生頻度と深刻度がバラバラですが )「 殺人 」「 頻繁な盗難 」「 重大なウソ 」「 管理会社による家賃のネコババ 」「 放火と焼失物件の放置 」「 建物の破壊 」「 ウソの修繕費請求 」などが起きることはあまり聞きません。
ところが、私が投資したデトロイト市の8 Mile Roadの南側エリアには、それらの全てがあります。物件価格が激安にも関わらず低所得の黒人やヒスパニックを中心に賃貸需要は一定以上あるので、投資利回りは25〜35%とかなり高いです。
デトロイト市の8 Mile Roadの南側と言えば、地元の白人・黄色人種のみならず全米の投資家も尻込みするような治安の悪いエリアです。
どんなにヒドいかについて興味がある方は、グラミー賞を15回受賞したEminemの自伝的映画「 8 Mile 」( Eminem本人が主役を熱演しています )を御覧ください。
あまりにも治安が悪いエリアで、笑えない冗談のような話ですが、建物の破壊の後に銅製の配管や地下室のボイラーを引っ張り出して盗んで転売することが横行しており、公共の場所に“盗んだり盗品を転売したりするのはヤメましょう!”キャンペーンポスターが貼ってあったりします。
ここまでヒドいのはあんまりないですが、要するに、私たち日本人が“こんなもんだろ”という期待が、基本的に通用しない!!というのが米国の治安の悪いエリアでの状況です。
“これはこの悲惨なエリアに限らず、海外不動産投資の本質と考えて良い”というのは、多くの経験豊富な海外投資家の方も肯定しています。
――第2回に続きます