はじめまして、ラピスと申します。札幌を中心に11棟125室を運営しているサラリーマン大家です。今回、私が経験した入居者による共用部電源からの「 盗電 」と「 ゴミ部屋 」の対応についてお話ししたいと思います。
ある時、退去した部屋の内装リフォームを完成させて一段落。剥がしたクロスなどが入ったゴミ袋を物件の横に運んでいると、なにやら違和感が?!
よく見ると部屋の窓から白いコードが出ています。そして、コードの先をたどると、共用の屋外コンセントにつながっていました。
「 これって!盗電!?」
そういえば、この物件の共用部の電気代が数年前から高くなっていたことを思い出しました。こういうことか…という感じでした。その場で盗電用のコードを引き抜きました。
すぐに訪問しようかと思いましたが、とぼけられると面白くないので、「 どのくらいの電力が盗電されているのか?」「 いつからなのか?」の客観的な証拠を抑えてから事情聴取することにしました。
早速、過去の電力会社の領収書を確認すると、なんと5年前から毎月、電気代が3,000円程上がっていたことが判明しました。( 5年も気づかずにいたことを反省しました… )
客観的な証拠は、毎月管理会社から送られてくる管理状況の写真にもありました。よく見ると毎回、同じ延長コードが写っていたのです。管理会社から過去の写真データを送ってもらい、領収書の時期と照合するとぴったり一致!だんだん楽しくなってきました(笑)
■ ワットチェッカーで盗電された電力を計算
次は、消費電力の計測です。趣味の自作パソコンの改造などで消費電力を計測するために使っていた「 ワットチェッカー 」を取り付けて、1時間あたりの消費電力量を計測することにしました。
★特長
コンセントに差し込んで簡単&便利にボタン1つですぐ測定できます。
電圧(V), 電流(A), 電力(W), 皮相電力(VA), 周波数(Hz), 力率(PF), 積算電力量(kWh), 積算時間(Hour) の8種類が測定できます。
液晶画面に数値で表示され一目で測定できます。
サンワサプライさんから
https://www.sanwa.co.jp/product/syohin?code=TAP-TST5
※今は廃盤で新しいモデルがあるようです。
取り付けて1カ月くらいは計測しようと思いました。ワットチェッカーを設置してからは物件前を通りかかったときなど、時々計測値を確認していました。
ところが設置から2週間くらい過ぎて現地に行くと、ワットチェッカーがなくなっているではありませんか!?持っていかれたようです。そして、また延長コードがコンセントに繋がれている!
堂々と盗電を続ける神経が理解できません…。普通は悪事がバレたと思ったら証拠となる延長コードも片付けて痕跡をなくすくらいのことをすると思うのですが、罪の意識がないのでしょうか?
そろそろ事情を聞きに行きたいところですが、いつ行っても不在で夜も電気がついているところを見たことがありません。管理会社もなかなか連絡が取れないそうです。
どうしたものかと思いながら、次の作戦として、盗電事件の前から計画していた防犯カメラの取付の工事を進めることにしました。
すると、工事中に入居者( これ以降「 盗電くん 」と呼びます )がエントランスから出てきました!!念ずれば叶いますね。このチャンスを逃す手はありません。
ラピス
「 盗電くんですか?」
盗電くん
「 はい 」
ラピス
「 ここのオーナーのラピスです。窓から延長コードで電源を取っていますよね?ちょっと詳しいお話を聞かせてほしいので、盗電くんの家の玄関でお話させてください!」
盗電くん
「 え、ここではだめですか?」
ラピス
「 他の入居者の方に聞かれるのも良くないので、玄関でお話しさせてください 」
盗電くん
「 わかりました… 」
盗電君はしぶしぶ自室の玄関の前に行き、ドアを開けました。すると、「 ガザッ!」「 バサッ!」と何かが崩れる音がしました。
なんと、玄関には投函されたちらしや郵便物が散乱していました。廊下はごみとペットボトルなどで床が見えないカオス状態です。唖然として、「 何を話すつもりだったっけ?」とボーっとしてしまうほどでした。
気を取り直して質問しようとしたその時、盗電くんが口を開きました。
盗電くん
「 大変申し訳ありませんでした!!お願いです!職場に知らせないでもらえますか?追い出さないでもらえませんか?」
ラピス
「 とりあえず事情を聞かせてください。後で部屋の中も確認させてください。正直に話していただければ追い出したりはしませんので 」( 家賃は会社が払っているので滞納はなく、もともと追い出すつもりはなかったです )
盗電くん
「 はい、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」
ワットチェッカーを外して盗電を続けるなんて、相当な胆力の持ち主か、頭のネジが何本か飛んで会話が通じない輩の可能性を想定していたので、素直な態度に拍子抜けしました。
他の大家友達からは「 ラピスさんのことが怖かったんだよ 」と言われましたが、怒鳴ったりしたわけではありません。風貌はややそんな感じかもしれませんが(笑)
■ なんと、ライフライン全滅で5年間生活していた!
玄関にはライフライン( 水道、ガス/灯油 )の督促状、停止を告知するお知らせなどが落ちていました。盗電くんに確認すると、長年に渡ってライフラインが全部止まっていたことが判明しました。
どうして支払わないのかと質問すると、「 コンビニ払いの用紙の期限が過ぎてしまって、コンビニに持っていっても支払いができなかった 」と言っていました。
それにしても、電気もガスも水道も使えないというライフライン全滅状態でどうやって5年間も生活していたのでしょうか?素朴な疑問をぶつけてみました。( カッコ内はラピスの心の声です )
ラピス
「 水道を使えないけど、お風呂はどうしていたの?」
盗電くん
「 仕事帰りに駅の近くにある銭湯に入っていました 」
ラピス
「 駅から遠いけど、湯冷めしない?」( 徒歩で30分の距離 )
盗電くん
「 大丈夫です 」
( いや、湯冷めするでしょ。札幌だよ。冬は死にそうになると思うよ… )
ラピス
「 トイレは?」
盗電くん
「 途中のコンビニや銭湯や公園で 」
ラピス
「 洗濯は?」
盗電くん
「 コインランドリーです 」
ラピス
「 冬の間の暖房は?」
盗電くん
「 服を着てコタツで 」
( 盗電していたからコタツは使えたのね )
ラピス
「 ところでワットチェッカーを取り外して、再び延長ケーブルを差し込むってどういう考えなの?盗電がバレて感づかれたと思えば続けないと思うんだけど… 」
盗電くん
「 スマホの充電などに使っていました。すいません 」
■ 生活再建の支援をしてあげたい
電気料金請求の話をする前に、盗電くんのライフラインを回復させることが必須と感じました。その場で各社に連絡をしてもらい、口座引落をする手続きのための用紙を取り寄せてもらいました。
滞納で停止していたWiFi( 有料 )を使うか確認したところ、「 使いたい 」 というので、停止のため取り外していた集合ケース内のLANケーブルを再度接続して復活させました。
部屋の機材も新しいWiFi機器に交換。盗電くんの状況があまりにひどいので生活再建の支援をしてあげないと、と思ってしまいました。
肝心の盗電については素直にすべて認めました。証拠を突き付けて交渉するといった場面はありませんでした。否定された時に備えて色々と準備していたのですが、そういう時こそ使わないで済むものですね。
ただし、電気料金の請求は、問題なくできる見込みがついたのは良かったのですが、荒れた部屋の様子を確認するとそれどころではなくなりました。
長くなったので、次回【 後編 】につづきます。