前回、業者は新築したがるというお話をしました。そこで今回は、ハウスメーカーの利益率のお話をしようと思います。
私が勤務する大学の学科では、卒業生の多くがハウスメーカーや中小の工務店に勤務しています。
先日、ローカルなハウスメーカー、A住販に勤務する卒業生のBさんが、在学生に就職活動や今やっている仕事のお話をしに、大学に来てくれました。
Bさんは、接客、基本設計、インテリアコーディネーター、現場管理、積算、事務一般など、小さな会社なので何でもやっているそうです。
積算までやっている卒業生に、必ず聞くのは「 利益は何パーセント? 」という質問です。「 えー、それ言わないとまずいですかー? 」とBさん。「 教えて 」と私。
で、教えてくれたのは「物件によって上下しますが、だいたい…」
「 30%前後です 」とのことでした。
「 建築業界ではみんなこんなもんですよー 」と。
この質問をしたのはBさんが初めてではなく、多くの卒業生や関係者に聞いてきました。
大手、中小ともにだいたい30%前後です。残りの70%は、基礎コンクリート業者、木工事業者、屋根業者、塗装業者、電気業者、水道業者などの下請けに振り分けます。
30%の粗利の中から、Bさん達、働いている方々の給料、ボーナス、社会保証費などや、住宅展示場やチラシ、冊子などの広告宣伝費、事務所のテナント料、水道光熱費などあれやこれやのお金を出し、税金を納め、株主に配当を出します。
ハウスメーカーの重要な仕事は、当たり前ですが仕事を取ることです。新築したい人を探して、注文を受けることです。
そのために展示場にモデル住宅を建て、展示場のテナント料を払い、折り込みチラシを作りと、広告宣伝にお金を掛け、営業に余念がありません。
卒業生の多くが、営業的な仕事についています。暴利なメーカーの利益は40%強もありますので、30%はごくまっとうな企業活動の成果です。
しかし、家を買う側から見ると、30%は決して小さい額ではありません。
サラリーマン家庭で買う新築住宅は、だいたい2,000万程度が多いと思います。その2,000万の内、600万はハウスメーカーや工務店の利益となってしまいます。
土地付きの建て売りまたは建築条件付きの土地売りで、郊外の安い土地1,000万の上に2,000万の建物、計3,000万とした場合はどうでしょうか。
仮に土地を安く仕入れた後に分割されて、土地にも利益が30%乗せられたとします。すると土地、建物ともに30%で3,000万のうち900万、ハウスメーカーや工務店の利益となります。
3,000万は30年ローンで月約12万程度。12万のローンの内、3.6万はハウスメーカーの利益のために払っていることになります。私は設計をやってきた者ですが、自宅や投資物件を自分で設計して建てる気になれないのは、新築ではどうしても割高になるからです。
見積書には、ハウスメーカーの利益という項目はありません。
基礎工事、木工事、塗装工事、現場諸経費などの項目の中に、割り増しされた金額で入れられています。
ハウスメーカーの利益は、見えないようにカモフラージュされています。もしハウスメーカーの利益という項目が見積書にあったら、値下げを要求されやすくなってしまいます。それよりもシステムキッチンの価格に忍ばせておく方が無難です。
TVでCMを打つ全国展開しているハウスメーカーの他にも、Bさんが勤めるA住販のように、ローカルな業者さんが非常に多くあります。A住販は○○市内の注文住宅をメインとする、超ローカルな企業です。
A住販の業績は非常に好調で、近いうちに幹線道路沿いに本社ビルを建てるそうです。ハウスメーカーは、新築住宅の注文があれば、いかにローカルで小さな企業であっても、売る物が高額なだけに、おいしい商売なのです。
今日のまとめとして
ハウスメーカーは新築する人がいれば儲かる
となります。