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東大で感じた格差とピケティ

原田ミカオさん_画像 第55話

ピケティによる「 21世紀の資本 」は大ブームになりました。ボクは、ブームが沈静化してからゆっくりと読んでみようと思っていました。



不動産投資をやっている者として、有名な不等式 r>g の「 資本収益率r 」は利回りのことなのか? 分母と分子は具体的に何なのか? 税金は? といった素朴な疑問がまずありました。

8月に1週間の検査入院という絶好の機会が到来して、病院に「21世紀の資本」を持ち込んで、一気に読了しました。携帯で話をしていると病院の方に怒られるような監獄状態でしたから、非常に集中できました。この文章も、病院のラウンジやベッドの上で書いています。

畑の違う600頁の本を読むのはハードルが高そうだったので、入院前に週刊東洋経済と週刊ダイヤモンドのピケティ特集を2冊読み、Youtubeのピケティ関連の動画をいくつか見て、予備知識をざっくり頭に入れておきました。600頁の原本では行ったり来たり苦労しながら、また面白がりながら読むことができました。

まず全体として、「 富の分配から書いた人類の歴史 」、「 富の側から明らかにされた社会構造 」、「 国や時代をまたいだ富の基本構成 」といった印象でした。経済本によく出てくるような数式はほとんどなく、資本( ストック )、所得( フロー )などの基本的なデータのみで、過去300年間、超長期では過去2000年間の富の有り様が、分かりやすいグラフと共に語られています。

政治体制が大きく変わっても富の分配がほとんど変わっていなかったり、20世紀の大戦時での資本の変化は長い人類史では例外的なものであったりなど、富の側からの意外な歴史が見えてきます。

まわりくどいと批判の多い小説などによる金銭や資本家に対する意識描写の引用ですが、ボクには生活実感として分かりやすく、感情移入もできました。V部でよく出てくる小説のシーンですが、本の構成として、最初と最後にもってくると、もっと多くの読者を惹きつけるのではと勝手に思ったりしました。

少し中身を紹介します。バルザックの「 ゴリオ爺さん 」( 1835年 )の中で、パリで法律を志すラスティニャックが、狡猾なヴォートランにささやきかけられます。

勉強、才能、努力で社会的成功を達成できると考えるのは幻想にすぎない。
猛勉強して法律家になって、一生懸命仕事して人間関係もうまくやって、政治がらみの汚い仕事までして検事総長に出世してやっとのことで得る年収は、あの資産家の女と今結婚してすぐに実現する年収と同じだ。
ただし女は美しくなく、兄がいる。その兄を殺さねばならない。殺しは私が金で請け負う。ここでラスティニャックは躊躇する・・・。


財産の相続は多くの努力、労働、才能を難なく飛び越えてしまうということの一例です。その女性の場合、美しさという財産は相続していなかったけれど、美しさをも相続していて兄もいなければ、そういう境遇に生まれたというだけで無敵だったわけです。

若い時のピケティはこの小説を読んで、格差に対して大いに疑問を感じたことと思います。そういえばジョージ秋山の「 銭ゲバ 」にも似たようなシーンが何度も出てきました。機会の平等だけでは乗り越えられない格差が、この世には厳として存在します。



ボクが格差を痛切に感じたのは、30年以上前ですが、東大に入ったときでした。雑誌の記事では、最近の東大入学者何10パーセントの家庭の年収が、何百万以上とか出ていました。教育の機会が平等ではないと論じる時に出てくる数字のようです。

しかしボクの家はごく普通のサラリーマン家庭で、年収はお世辞にも高くなく、学校は小中高共にごく普通レベルの公立でした。そんなボクが東大に行けたということは、機会の平等は疑いようがありません。しかし、東大に入ったことで大きな格差を実感することになります。

同級生に自分の車で来ている奴がかなりいる。世田谷の自分の戸建に住んでいる奴がいる。新宿の自分のマンションに住んでいる奴がいる。駅前にビルを建てようとしている奴までいる。ドラマに出てくるようなろくでもない、遊んでばかりのボンボンならまだしも、勉強もできて性格もよく、やることなすことソツがない。

これにはかなりのショックを受けました。結局、友達の車を運転させてもらって旅行に行ったり、家やマンションに泊めてもらったり、設計事務所時代にはビルを設計させてもらったりしました。今はやりの言葉で言うと、トリクルダウン効果でしょうか。

M君という本当に超優秀な頭脳にも、駒場で会うことができました。M君のノートを試験前にコピーできたので、ボクはなんとか駒場から本郷に行けたようなものです。

理1は2年後期の最初に進学振り分けがあり、工学部の中で学科を選ぶのが普通です。宇宙航空工学のような人気のある学科には、成績優秀でないと入れません。M君は理1から医学部に進学しました。これは理1でトップかそれに近い成績でないと行けません。理3に入るよりも難しいと当時聞きました。

先日、理1の時のクラスメイトと飲んだときに、M君がアメリカの某有名大学で教授をしていると聞きました。家に帰って検索したら、なつかしい顔が出てきました。医学のその分野では先端的な研究者のようで、大いに誇りに感じました。実はボクの進路を決めたのは、M君の助言によります。

東大では、灘、麻布、開成、ラサールなどの中高一貫校出身者が多く、頭の方でもなかなかついていけません。逆にどうやって自分の長所を生かそうか、どうやって格差を埋めようかと考えたことにより、今につながることができて良かったと思っています

またお金の格差の原因が資産にあると早くから気づかせてもらったのも良かったことです。渡部昇一の「 知的生活の方法 」にも、研究や執筆のために資産を築くことのメリットが書かれていて、大いに影響を受けたのも学生の頃です。ボクの不動産の原点です。



友人との資産や頭の格差を見せられて自分の状況を正確に知ることができたこと、それにどう具体的に対応しようかと本気で考えることができたこと、大学に入ってから進路を決められたこと、何よりも優秀な友達や先生方に出会えたこと。今でもあの大学に行って本当によかったと思っています。

今、資産を零細ながら築けていること、自分の長所を生かした活動を長くしていることは、あの時感じた友人との格差に由来します。資産は徐々に築いていけるので、格差と言って最初からあきらめるのはどうかと思います。

Youtubeで見た討論番組で教育の格差うんぬんと言っていたオバサンに、

「 格差、格差とうるさく言うな! 」

と言ってやりたい。ということで今日のまとめとしたいと思います。
ピケティの r>g は非常に示唆に富んでいますので、次回も続けてこのお話をしたいと思います。みなさまの参考になれば幸いです。


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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 原田ミカオさん

原田ミカオ
原田ミカオさんのブログ

■ 経歴

1959年 東京都生まれ。
1982年 東京大学建築学科卒業。
1986年 同大学修士課程修了。
現在、東京家政学院大学生活デザイン学科教授。

2004年から、不動産投資を開始。
現在、アパート5棟、戸建9棟、計51戸を所有。

■ 主な著書

・20世紀の住宅−空間構成の比較分析( 鹿島出版会 )

・ルイス・カーンの空間構成 アクソメで読む20世紀の建築家たち
・1級建築士受験スーパー記憶術
・2級建築士受験スーパー記憶術
・インテリアコーディネーター受験スーパー記憶術
・福祉住環境コーディネーター2級受験スーパー記憶術
・構造力学スーパー解法術
・建築士受験 建築法規スーパー解読術
・マンガでわかる構造力学
・マンガでわかる環境工学
・ゼロからはじめる木造建築入門
・ゼロからはじめるRC造建築入門
・ゼロからはじめるS造建築入門
・ゼロからはじめる建築の設備教室
・ゼロからはじめる建築の法規入門
・ゼロからはじめる建築の施工入門
・ゼロからはじめる建築の構造入門
・ゼロからはじめる建築の計画入門
などゼロからはじめるシリーズ全14冊
( 以上、彰国社 )
など。


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