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利益を上げるためにここまでする? 渋谷駅前の逆打ち

原田ミカオさん_画像 第77話

渋谷駅の南側でビルの工事をしているのを、見た読者の方も多いと思います。ミカオは先日、「 渋谷駅南街区プロジェクト 」新築工事の現場見学会に、学生を引率して行ってきました。

発注元は電鉄会社で、工事はゼネコン2社によるジョイントベンチャー、そのうちの1社にコネがあって、その方のご厚意により現場を見学させていただきました。今回はそのお話をしたいと思います( 内部の写真は残念ながら撮れませんでした )。



低層階には商業施設、上層階にはオフィスとホテルが入る、地上36階、地下4階、高さ約180mの物件です。すでに巨大な地下空間ができていて、さながらSF映画の舞台を見ているようでした。

作業員は地下で約300人、地上で約1,000人、多いときには1,500人から1,800人になるそうです。鉄骨の肉厚が5cm以上もあって、驚きました。

溝の口にある生コン工場から、生コン( レディーミクストコンクリート:すでに混ぜられたコンクリート )をミキサー車で運んで来るそうです。生コンは気温によって、調合から打ち込みまで90分以内、120分以内などと決められています

ミキサー車のタンクをぐるぐる回して、撹拌すると同時に固まらないようにしていますが、渋滞になったり、高温だったりすると、遅延剤を入れて固まるのを遅かせたりします。都心の物件では、生コン工場がどこにあるか、どういうルートで運ぶかも重要になってきます。

東横線のホームが地下に入って、各鉄道への地下通路も整備され、また渋谷ヒカリエなどもできて、渋谷駅付近はすっかり様変わりしました。

ミカオは20〜30代の頃、渋谷駅徒歩圏に設計事務所をやっていたことがあり、その近くに住んでもいましたが、今ではすっかり田舎から出てきたお上りさん状態です。

このビルはゼネコンの設計施工ですが、ミカオが大学院で同期だった小嶋一浩という大変優秀な建築家( 残念ながら最近亡くなりました )も、デザインでからんでいます。学生の引率で中に入りましたが、実はミカオが一番見たがっていたのかもしれません。



工事は、地上では上へ上へと鉄骨が組み立てられ、鉄骨が組まれるとすぐに外装パネルが取り付けられていきます。外からはわかりませんが、中では大変面白いことがやられていました。

地上が上へ上へと工事するのと同時に、地下では下へ下へと工事がすすんでいました。上へ上げると同時に下へ下げる。これは普通ではできません。

普通は地下の基礎まで大きな穴を掘って、そこから基礎→地下4階→地下3階→地下2階→地下1階→地上1階→地上2階→・・・と、下から積み上げる工事となります。重力がかかっているので当たり前です。

先に上を作ったら、重さで落っこちてしまいます。しかし、順々に建ち上げていては、工期がかかってしまいます。地上から上へ上げるのと同時に、下へと同時に進めた方がずっと短い工期でできるわけです。

工期を短縮するために、逆打ち( さかうち )工法といって、地上から地下へ掘り進めながらコンクリートを打っていくやり方です。

下の図では、仮の支柱を立てておいて、1階→地下1階→地下2階と、コンクリートを打っています。仮の支柱が無いと、上の階の重量をささえられません。


( 拙著「 ゼロからはじめる建築の[施工]入門 」p125から引用 )

普通は上へ上へと順々に打つので、順打ちと言いますが、その逆なので逆打ち( さかうち )と呼ばれます。山留め( やまどめ:土が崩れないようにささえる仮設の壁 )を建物本体の躯体( くたい:構造体 )で支えるので、山留めが崩れにくいというメリットもあります。

普通、山留め壁は、切梁( きりばり )という、H形鋼によるつっかえ棒で支えます。下の図でつっかえ棒になっているのが切梁です。このような工事を山留め支保工といいます。

支保工(しほこう)とは、仮設物が崩れないようにえて、その位置をつために入れる事のことです。逆打ち工法では、建物が穴の真ん中に出来上がるので、それで土を支えることができて安全です。


( 拙著「 ゼロからはじめる建築の[施工]入門 」p117から引用 )

下の図がパンフレットから引用したものです。GLとはGround Levelの略で、地盤面のことです。GLから上へ、下へと工事を同時に進める様子が描かれています。


( 渋谷駅南街区プロジェクト新築工事共同企業体 東急建設株式会社・株式会社大林組「 渋谷駅南街区プロジェクト 」パンフレットから引用 )

最初に地面に孔を掘って杭を打ち、その上に鉄骨の柱を先に付けてしまいます。この柱で地上階を支えることになります。地下の鉄骨の柱は、土を掘り進めることで現れてきます。

土を掘って地下1階の床と壁を作り、それが終わったらまた土を掘り、地下2階の床と壁を作る、を繰り返します。地下の鉄骨の柱は、掘り出されて出てくる形となります。

その地下工事と同時並行で、地上階の鉄骨を組み上げていきます。逆打ちは普通の順打ちと比べて面倒なことが多いので、現場監督さんに、なぜこのような大変な方法を取るのか、何度かひつこく聞いてみました。

パンフレットには、周辺環境への影響の抑制、工事の安全性、工期短縮の3点が挙げられていました。

監督さんの答えは、逆打ちのメリットは工期短縮につきるとのことでした。工期が短縮された半年程度の間に入る賃料は莫大なもので( なんせ渋谷駅前ですから )、逆打ちによる工事費のアップは完全に打ち消されてプラスが大きく出ます。

すなわち経済的な理由によって、逆打ちとしているとのことでした。経済合理性による判断で、特殊な工法に変えています。こんな巨大な工事でも経済的な理由でドライに判断して、普通とは違った工法を採用するのかと感心しました。

これはミカオレベルの極小物件でも当てはまることかもしれません。以前、190万の超絶ボロ戸建てを、1年近くかけて半自力で再生させたことがあります。

参照:鉄骨足元に大穴!@190万のボロ戸建て

今思えば業者さんにさっさとやってもらって貸し出した方が、経済合理性に適っていたように思われます。またその方が、仕上がりや耐久性は間違いなく上です。

コストの判断が甘かった、また工事を自分でやってみたいという誘惑があったためです。今では業者さんまかせで、自分はコスト管理に集中するようにしています。自分でやるのは、照明器具をカチャっと取り付けるくらいです。

渋谷のあんなでかい物件が、コスト至上主義で工期短縮を図っていることに、驚きと同時に感心しました。逆打ちの他にもいろいろと見せていただき、建築、不動産のいい勉強になりました。来年の完成が待ち遠しいです。

今日のまとめとして

工期短縮によるコストアップと賃料増とをはかりに掛けよ!

となります。皆様の建築と不動産の勉強の一助になれば幸いです。

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健美家不動産投資コラム

プロフィール

■ 原田ミカオさん

原田ミカオ
原田ミカオさんのブログ

■ 経歴

1959年 東京都生まれ。
1982年 東京大学建築学科卒業。
1986年 同大学修士課程修了。
現在、東京家政学院大学生活デザイン学科教授。

2004年から、不動産投資を開始。
現在、アパート5棟、戸建9棟、計51戸を所有。

■ 主な著書

・20世紀の住宅−空間構成の比較分析( 鹿島出版会 )

・ルイス・カーンの空間構成 アクソメで読む20世紀の建築家たち
・1級建築士受験スーパー記憶術
・2級建築士受験スーパー記憶術
・インテリアコーディネーター受験スーパー記憶術
・福祉住環境コーディネーター2級受験スーパー記憶術
・構造力学スーパー解法術
・建築士受験 建築法規スーパー解読術
・マンガでわかる構造力学
・マンガでわかる環境工学
・ゼロからはじめる木造建築入門
・ゼロからはじめるRC造建築入門
・ゼロからはじめるS造建築入門
・ゼロからはじめる建築の設備教室
・ゼロからはじめる建築の法規入門
・ゼロからはじめる建築の施工入門
・ゼロからはじめる建築の構造入門
・ゼロからはじめる建築の計画入門
などゼロからはじめるシリーズ全14冊
( 以上、彰国社 )
など。


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