前回に続き、地下ピットのお話を続けます
以前ある方から、マンションの地下を見て欲しいと言われたことがあります。10階建て、100戸程度の分譲マンションで、地下ピットに案内されました。1階床下の鉄扉の鍵を開けてもぐり込んで、広大なコンクリートで囲まれた空間を見せられたことがあります。
人の立てる高さではないのですが、かがんで進むことはできます。懐中電灯で照らされた空間が、非常に広く感じました。「 この空間は無駄ではないのか、設計や工事の手抜きではないのか? 」と聞かれました。
分譲マンションの1階は、浸水対策やプライバシー保護のため、1m程度、地面から上げることが多くあります。そして地面の下にもスラブ( コンクリートの版のこと )を付けて、1階の床スラブとその下のスラブとで、2重スラブとすることも多々あります。
前回は耐圧版で支えるための、主に構造的な理由からできた地下ピットでした。大型のマンションでは杭で建物を支えるので、この2重スラブは構造的な理由ではありません。
トイレなどの排水管は、1階床下で横に流して、建物の外へと導きます。給水、ガスなどの配管も、ピット内で分岐して上に上げます。
地下ピット内には、人が入れるようにしておきます。分譲マンションの場合、地下ピットは共用部なので、ピットの入り口は外から鍵を開けて入れるようにしておきます。ピットは大きな梁で分断されますが、その梁の中央付近に人がやっと通れるくらいの穴( 人通口 )を空けておきます。
排水管の水漏れなどが起きたら、ピット内に人が入って、簡単に直すことができます。地下ピットが無いと、配管のメンテナンスができず、床をはがして土を掘り起こして修理することになります。それができない場合は、既存の配管は埋め殺しにして、別に露出配管するなどの手を考えねばなりません。
設備のメンテナンスがしやすいばかりでなく、湿気が上がりにくい、断熱が良いという効果もあります。「 床下を土で埋めてしまうよりも、良心的な設計です 」と、その方には答えておきました。
地下ピットを建物全体で作らない場合も、水回りの下だけ、またはパイプスペース( 配管を集めたところ )の下だけはつくっておくと便利です。
下図は葛飾区の低地に建つ、3階建てのS造の住宅です。水回りの部分だけ地下ピットとして、その他の部分は土を埋め戻しています。土の上にコンクリートを敷いて土間コンクリート( 略称土間コン:構造に関係無いコンクリート版 )とし、その上を床としています。
配管のメンテナンスは、床下にもぐり込めば可能です。木造の場合は床下が必ずあるので、配管の近くにハッチ( 上げぶた )を付けるか、ネジで板が外れるようにしておくと、メンテナンス時に床を壊さずにすみます。
結論として
床下に空洞をつくって、配管を横へ曲げよ
となります。