新築でRCをつくる大家さん、中古でRCを長期ローンで買う大家さんは多いかと思います。コンクリートの良し悪しがある程度わかれば、プラスになるでしょう。そこで、コンクリートの簡単な見分け方を、今回はお話しようと思います。
最近、建築家が設計したであろうデザインの良いビルに、下のようなコンクリートの欠陥を見つけました。表面は塗装されていますが、鉄筋の上のコンクリートのかぶりが薄く、さびて膨張し、コンクリートをはがしてしまっています。
これは放置すると間違いなく、鉄筋のさびとコンクリートのはがれが進行します。鉄筋のかぶり厚は、RCの重要な点のひとつで、かぶり厚が大きいほど、耐久性は向上します。
かぶり厚が薄いと、数年でさびが出る、さび汁( 茶色い汁 )が外壁を汚す、さびでコンクリートがはがれるなどの欠陥が出てきます。この建物の場合は、施工ミス、監理ミスです。生コンを打つ前の配筋検査のとき、内側にずらさなかったためです。
下の写真は、近所のマンションで見つけたちょっとした不具合。柱梁だけ打ち放しコンクリートとしたデザインの打継ぎ部分です。
柱の下部の砂利、砂が少し見えています。ジャンカ( 豆板 )の軽い症状です。ジャンカとはセメント+水( セメントペースト )が砂利、砂の周囲に回り込まず、砂利、砂が露出してしまう症状です。これも放置しておくと、傷んできます。
打継ぎ部分の上下が、一体化していない可能性もあります。またコンクリートの表面に空洞( す )が多く、あばた状となっています。コンクリートに関しては、「 あばたもえくぼ 」とはいきません。そのあばたから水や二酸化炭素が侵入して、欠陥が拡大してしまいます。
空洞の多いコンクリートは、表面の強度が弱く、密度が低く、外から水や二酸化炭素が侵入しやすくなります。また内部の水が蒸発しやすくなります。
生コンの水は約1/3がセメントとの反応に使われ、残り約2/3はコンクリート中に残ります。残った水が蒸発するとコンクリートが収縮し、乾燥収縮ひび割れを起こします。乾燥収縮ひび割れは、質の悪いコンクリートほど起きやすいものです。
ひび割れはコンクリートにはつきものと言う業者さんがいますが、良いコンクリートではひび割れは起きません。
下の絵で、左が悪いコンクリート、右が良いコンクリートです。白くてボソボソ、ぶつぶつ、ザラザラしたのが悪いコンクリート。一方黒くてツルツルして、表面が固くて光沢があり、顔まで映るほどのものが良いコンクリートです。天然の固い石のようです。あまりお目にかかれませんが。
それぞれの欠陥部分に解説を加えたのが、下図です。色は白く、空洞( す )、コールドジョイント、砂すじ、ジャンカ( 豆板 )があり、手でこすると白い粉が付きます。
図中でセメントペーストとは、セメントに水を加えたセメントによるのり( paste )です。セメントペーストというのりで、砂利と砂を固めたのがコンクリートです。また砂だけ固めるのがモルタルです。
良いコンクリートは下図にように、釘で傷を付けても、固くて緻密なので、なかなか傷が付けられません。ガラスのようです。
実はしっかりと丁寧に打たれたコンクリートは、表面がガラス質となっています。硬質で傷が付きにくく、水や二酸化炭素も侵入しにくくなり、耐久性も伸びます。
単純化すると、白くてボソボソはダメ、緻密で黒光りは良いということになります。
同じ材料を同じ比で調合しても、打ち方によってもこのような差が出てしまいます。生コンは生ものなので、本当にやっかいです。
コンクリートの正しい打ち方を書くと、分厚い仕様書一冊分となってしまいますが、簡単なことは知っておくといいと思います。次回では、コンクリートの打ち方のポイントを絵で説明できたらと思います。
下の写真は、この夏に娘と科学技術館に行った際、撮った写真です( 展示物の写真撮影は可でした )。右の高強度コンクリートは、黒くて均質で緻密なのが見て取れます( 緻密にするための工夫があれこれとされています )。
一般のコンクリートでもしっかりと打つと、黒っぽい緻密な組織となります。
今日のまとめとして
コンクリート
白くてボソボソは×
黒くてツルツルは○
ともうひとつ
あばたもえくぼは人間だけ
となります。皆様の建築と不動産の勉強の一助になれば幸いです。