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娘の部屋探しを手伝って体感した不動産業界の闇(後編)

モーガンさん_画像 モーガンさん 第32話 著者のプロフィールを見る

2022/4/25 掲載

長女の大学進学に伴い、土地勘のない関西まで部屋探しに行きました。親身に相談にのってくれる賃貸仲介さんとの出会いを期待しましたが、それは見事に裏切られ、自社管理物件の押し売りをされる羽目に会いました。

こちらが見つけた物件を案内してほしいと伝えても、その部屋の仕様や管理会社の悪口を並べて、意地でも自社物件に誘導してきます。不動産業界の闇を見ました。

そんな男性スタッフに腹を立てつつも、部屋探しする時間も限られていたので、言われるがまま内見してみることにしたのが、前回までのお話しです。

そして、その内見をする過程で、不動産業界の闇の「 正体 」を発見することになります。

■ 「 ご案内は学生アルバイトに変わります 」

不本意ながら内見に行くことに同意した私たち親子ですが、さらに失礼な対応を受けることになります。「 ご案内は学生アルバイトに変わります 」。なんと男性スタッフは内見に同行せず、これまでの経緯を何も知らされていない学生アルバイトが案内をすると言うのです。

どうやら彼は私たち親子がこの内見で申し込みをする可能性は低いと踏んだようです。そんな客には時間の無駄だから、内見に同行するなとでも上司から言われているのでしょう。呆れました。

しかし、私たちはこれまでも散々な目に遭っています。これしきのことで驚きはしません。すんなりと受け入れて、学生さんが運転する車の後部座席に乗り込みました。

■ なぜ洗濯物を干すスペースがないのか?

程なくして着いた内見1件目は、娘が通う大学から徒歩5分の好立地にありました。家賃5万円の1K、築古木造アパートです。玄関に足を踏み入れて、真っ先に目に入ったのは、築古物件に似つかわしくない新品のユニットバスです。3点ユニットバスを撤去して、浴室とトイレを分離する工事をした直後のようでした。

しかし、5.5帖の居室のドアを開けた瞬間、違和感を覚えます。何かが足りないのです。その違和感の正体に先に気がついたのは娘でした。「 お父さん、このどこに洗濯物を干せばいいの? 服をしまう収納もないよ…。どう生活すればいいのかな 」と耳打ちしてきました。

どうやらこの物件、バス・トイレを別にするためのスペースを確保するために、収納を潰してしまったようです。オーナーさんがその工事で満足してしまったのか、室内干しは愚か、ベランダに物干し竿を渡す金具すらついていません。この部屋は娘が健康的な生活をするために必要な設備が揃っていませんでした。

ここからは私の想像ですが、空室に困ったオーナーさんは不動産会社に提案されるがままバス・トイレのセパレート工事をしたものの、その後、空室に足を踏み入れることもなく、他人任せにしたままなのだと思います。

もし工事完了後に自分で確認に来ていれば、この違和感に気がつくはずです。工事代金を払ったのだから、空室に申し込みを取ってくるのは不動産会社の責任でしょう?と高みの見物をしているのかもしれないと思うとやるせない気持ちになりました。

いずれにせよ、こちらの希望とは真逆の1階、日当たりの悪い北向きの部屋だったので、5分と滞在することなく部屋を出ました。

■ 寒くていられない部屋に旧式エアコン

2件目、3件目も、娘が健康的な生活を送れるとは思えない物件でした。3件目は4~5万円の築古RC物件だったのですが、とにかく寒くて居られません。この日は雪がちらつくほど寒い日だったのもありますが、日当たりが悪いのが主な原因です。

せめて性能が良いエアコンがついていればと窓側の壁に目をやると、付いていたのは黄ばんだ旧式エアコンや、今はあまり流通していない窓にはめ込む縦型のエアコン。試しにスイッチを入れてみると、案の定、ガーッと音ばかり大きくて部屋は全然暖まりそうにありません。

これを見た瞬間、この物件も不動産会社に丸投げで、オーナーさんは部屋に足を踏み入れたことはないのだろうなと悟りました。もしオーナーさんが冬場に少しでもこの部屋で過ごして、自分でスイッチを入れていれば、エアコンを交換する必要があることに気がついていたはずです。そうしていたら私たちは申込書を書いていたかもしれません。

■ 情報格差を利用して営業してくる男性スタッフとの訣別

内見を一通り終えて店舗に戻ると、男性スタッフが待ち構えていました。そして、懲りもせず「 どうでしたか? 入学式までに住む家がないと困るでしょう? ご案内した物件もすぐになくなってしまうかもしれませんよ 」と娘に内見した物件の中から選ぶように迫り始めました。

社会経験が少ない娘は真に受けてしまい、私に向かってつぶやきました。「 日当たりが良くて、暖かい部屋で過ごすのは高望みなのかもしれないね。私は最後の物件でも我慢できるよ 」と。我が娘ながら健気です。泣かせます。

しかし、逆にこれが私の親心に火をつけます。こんな悪い条件の部屋に娘を住まわせてなるものか! 娘に流通物件の情報の格差を利用して営業してくる男性スタッフにもつくづく嫌気がさしていたこともあります。私は娘に「 出よう 」と一声かけたのち、男性スタッフには「 こちらの希望とはかけ離れています。もう結構です 」と声高に店舗を飛び出しました。

娘がとても不安そうにしていたので、ファミレスに立ち寄って、不動産業界のカラクリを話すことにしました。

あの男性スタッフは自社物件や手数料が高い物件を紹介しないとお給料が出ない仕組みになっていること。今の日本は学生向け賃貸物件の空室があり余っているはずということ。そして、他の不動産屋さんにいけば、また別の物件を紹介してもらえて、その中に希望通りのものがあるかもしれないということです。

■ 感じの良い女性スタッフに救われる!

しかし、ここまで説明して困りました。娘が希望する物件はきっとあるはずだけど、他の不動産屋さんに行っても、またあの男性スタッフのような人に当たってしまうことも考えられます。

その時です。私のスマホの着信音が鳴りました。「 □□ハウスという不動産屋さんに行ってみて 」と自宅にいる妻からのLINEです。内見の最中に部屋探しがうまく行っていないことをLINEしておいたところ、妻は関西に住んでいる友人に連絡を取り、その地域で古くから続く評判の良い不動産管理会社を調べてくれていたのです。

すぐに□□ハウスに駆けつけて、感じの良い女性スタッフにこれまでの経緯と希望条件を伝えると、その事務所から徒歩1分ほどにある学生向けRCマンションを紹介してくれました。

オートロック付きの重厚な造りの建物で、南向き角部屋( 2面採光 )なのでとても日当たりが良いです。目の前には桜並木の散歩道があり、楽しい学生生活を想起させてくれました。部屋の設備もバス・トイレ別で、無料インターネット付きと申し分がなかったため、すぐに申し込みを入れました。

女性スタッフさんに聞いたところ、「 大家さんが最上階に住んでいることもあって、入居者さんが住みやすいように常に配慮してくれています。案内するとすぐに決まっちゃうんです 」と楽しそうに話してくれました。

これまで内見してきた物件とは雲泥の差を感じました。何がそのような大きな差を生み出しているのかと事務所に戻る道のりで考えていましたが、この言葉を聞いて腑に落ちました。

■ 不動産業界の闇の正体は別にあった?

こうして、娘の一人暮らし先が見つかりました。男性スタッフとやりとりしていた時はどうなることかと思いましたが、楽しく健康的な生活を送れる部屋が見つかって、親としては肩の荷が降りた思いです。娘にとっても、良い社会勉強になったようです。

この部屋探しを振り返って思うのは、あの男性スタッフの執拗な営業とオーナーの無関心は表裏一体なのではないかということです。

オーナーの無関心から生み出された「 健康的に生活をする上で必要なものが足りていない、配慮のない 」部屋では、来店客に無理矢理にでも押し付けない限り、申し込みが入ることはないでしょう。

残念なことに、部屋探しの過程で嫌な思いをした私たち親子は、仲介の男性スタッフの態度に不動産業界の闇を見たと感じました。しかし、その闇をもっと深いところで作り出しているのは、実は私たちオーナーなのかもしれません。

事実、不動産投資家として未熟だった頃の私は、長く空室が続いても現地に赴く時間を惜しみ、広告料を3ヶ月分でも4ヶ月分も積んだ上で、スタッフの強引な営業力に期待をした経験があります。その方が自分から見た時の投資効率が高いと感じていたからです。

今回、自分が部屋を借りる側に立ってみて、改めてそれは間違いだったと感じました。オーナーとして、「 無理なく申し込みが入る部屋 」を提供することで、物件に関わってくれるステークホルダー全員が幸せでいられる体制を作っていきたい。強くそう感じた出来事でした。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

モーガンさん

モーガンさんもーがん

専業大家
茨城県在住
家族は妻、娘、息子
茨城県良質な賃貸を提供する会(良賃会)主催

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1975年
    茨城県に誕生

    □1998年
    大学を卒業後、都内のIT企業に就職、株式投資を始める

    □2008年
    リーマンショックの暴落を見て不動産投資の勉強を始める

    □2010-2015年
    千葉県に1棟ものRCを取得
    以降4棟を買い進め、2棟を売却する

    □2015年
    不動産販売・管理企業に転職し、不動産実務を身に着ける

    □2018-2019年
    介護を機に退職
    専業不動産投資家になる

    生活費を得るために、築古・地方・郊外のアパートを中心に11棟67室まで買い進める

    □2020年
    茨城年良質な賃貸を提供する会を発足

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