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地価が下がる理由と、その対応策は?

長嶋修さん_画像 長嶋修さん 第12話 著者のプロフィールを見る

2008/9/24 掲載

内閣府は、8月の月例経済報告の基調景気判断を 「 弱含み 」 とし、実質的な景気後退をついに認めました。ところで、56ヶ月 ( 4年8ヶ月 ) も続いたこれまでの景気回復も 「 そんな実感はないなあ 」 という方が大半なのではないでしょうか。実際、恩恵を受けたのは輸出関連を中心とした大企業で、国民の所得は一向に上がっておらず、むしろグローバル化の進展によって、すでに高水準にある国民の所得は抑えられることとなってしまったのです。この現象を 「 要素価格均等化定理 」 といいます。

「 要素価格均等化定理 」 とは、「 各国が自由に貿易を行った場合、生産財の価格を決定する要素となる地価や労働者の賃金なども、国際価格に均等化していく 」 というものです。賃金が相対的に割高な日本では、賃金をそうそう上げることができないということです。

この考え方を地価にあてはめ、要素価格均等化定理が働くとすれば、それは日本の地価にとって大きな下落圧力だということが容易に予測できるでしょう。むろん、都心部の超一等地など、金融商品化できる立地、グローバルマネーが流入できる立地は別です。

また、景気が後退局面に突入しているにもかかわらず、原油や食料品、ガスや電気料金など、私達の生活必需的なコストはどんどん上昇しています。景気後退と物価上昇が同時に訪れるスタグフレーション的な状況が、いまのわが国の経済状況です。そうなると、生活コストの大部分を占める 「 賃料 」 には、おのずと抑制される力が働きます。

そもそも日本は、一般的な国民が住宅を取得する際の総額が、国民の所得に対してあまりにも高すぎます。また土地建物の価格比率のうち、土地価格の比率が高すぎることなどは、今後のグローバル化の流れの中で修正 ・ 調整されていくことになるでしょう。経済のグローバル化による要素価格均等化定理や、景気後退と物価上昇の影響を受けて、日本の地価は徐々に下落をしていくことになると、私は予測しています。

地価が下落するということはメリットとデメリットの両方の側面があります。生活コストとしての賃料が下がったり、マイホームの購入価格が下がるということは、賃貸住人やこれからマイホームを買う人にとってプラスです。生活コストが余りに高すぎる国は、決して暮らしやすい国だとはいえないでしょう。国民の幸福感は、所得に占める生活コストによるところが大きいのです。

一方で、不動産を担保にお金を借りている企業や、貸している金融機関にとっては大きなマイナス。また、個人の不動産投資家やマイホームを所有している方など、すでに不動産を所有している人にとってはマイナスです。

ゆえに、地価がただ単純に下がってしまっては、日本経済は沈下するだけです。沈下以外の要素がないからです。土地を担保にお金を貸したり、借りたりすることができず、経済も停滞しますし、国民の資産も目減りします。

そこで国が目をつけているのが 「 建物 」 なのです。地価が下落していくのは明白。ならば 「 建物 」 に価値を持たせるしかないのです。「 土地本位制資本主義経済 」 から脱却して、「 建物 」 が主役の時代、「 利用価値の時代 」 へと、日本の不動産は進んでいくのです。

また、建物に価値を持たせると同時に、中古住宅が安心して売買ができる状況を作ることで、中古住宅の流通を促進しようというのが、国の狙いです。では国は具体的に、日本人と不動産の関係をどうしようとしているのか。次回はそのビジョンと今後の動きについて、またそれを受けて私達はどうすればいいのかについてお話します。



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プロフィール

長嶋修さん

長嶋修さんながしまおさむ

不動産コンサルタント
さくら事務所 会長

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経歴
  • 不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。

    以降、様々な活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築く。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。

    2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。

    また、TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。

    現在、「東洋経済オンライン」、「Forbes JAPAN WEB」等で連載コラムを執筆中。業界・政策提言や社会問題全般にも言及。

    主な著書に、『空き家が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞社)、『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)等。

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