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アベノミクスが生んだ国内不動産市場の「三極化」問題

長嶋修さん_画像 第176話

「 これから不動産市場は三極化する 」とは、数年前から申し上げてきたことですが、昨今はそれがますます顕著になってきました。

不動産市場と株価との関係は、90年のバブル崩壊後と現在では全く異なります。かつて、株価との連動性が高かった指標といえば「 市街地価格指数 」といった、国内主要都市の地価との連動が高かったのですが、バブル崩壊後はその連動性が薄れています。

代わってリニアに連動しているのは「 都心3区の中古マンション価格 」。せいぜい5区くらいまででしょうか。都心5区とは「中央区・千代田区・港区・新宿区・渋谷区」を指します。下のグラフをご覧いただくとその関係性がわかると思います。

新築マンション市場は、市況を確認してから用地を仕入れ、企画をし、販売活動が始まり売り出しが始まるまでタイムラグがあるため、中古に比して株価には遅れて反応します。



2012年の政権交代以降、中古マンション市場は息を吹き返しましたが、地域ごとに見ていくと、その恩恵を大きくこうむっているのは都心部が中心で、首都圏の大多数地域ではせいぜい10パーセント程度上昇したに過ぎません。

下のグラフは、政権交代時を100とした時の、各地の中古マンション価格水準の推移です。



さらに物件種別ごとに見ていくと、好調なのは中古マンション市場だけであり、戸建て用地や戸建て住宅はむしろダウントレンドにあることが見てとれます。このような二極化に加え、価値ゼロの不動産もたくさん出てくると言った事象を合わせて「 三極化 」としています。



こうした中で、都心の中古マンション市場にも変調の兆しが見られました。きっかけは昨年の「 チャイナショック 」。

「 中国経済はバブルでいつか崩壊するのではないか 」ということは、実は2011年あたりから囁かれてきましたが、2015年6月の中国株暴落ではまだ対岸の火事と見られていました。

しかし、8月に人民元が切り下げられ2度目の暴落が起こると、つられて日米株も同時急落、「 中国発の世界同時株安が起きるのではないか 」といった風潮に見舞われました。

このあたりから都心中古マンションの新規売り出しが増加し、一方で成約数は伸び悩んだことから在庫数が増加といった状況に潮目が変化。この流れは現在でも続いています。

こうしたことから、あるいはアベノミクス・黒田バズーカで「 不動産市場はバブルなのではないか 」といった論調が出始めているのですが、私はそこまでとは考えていません。

東京都心部の不動産価格がバブルなら、世界の主要都市はもっとバブルだと言わざるをえないでしょう。



東京都心部の不動産は、いわば「 出遅れ株 」のようなものです。

リーマン・ショックのあと、他先進国の不動産市場は順調に回復しましたが、日本では民主党政権が結果として株価・不動産価格を下げる政策を行い、また東日本大震災もあって、頭を押さえられた状況。これを取り戻そうとし、高価格な他都市の水準に近づこうとしているのが現在の文脈です。

しかし東京よりの2.5倍も高いロンドンでは、英国のEU離脱が優勢となったことで不動産市場にも激震が走り、いくつかの不動産ファンドは凍結されるなどの手が打たれています。香港にしても連動性の高い中国経済動向いかんによってはどうなるかわかりません。

もとよりこれまで世界中で、EUでも米国でも、そして日本でも金融緩和が行われてきましたので、あり余るマネーが不動産市場に流れ込み世界主要都市の不動産価格を押し上げた側面もあります。

とはいえ、このあと東京の不動産事情が大きく崩れて、かつてのバブル崩壊のような自体になる可能性は、今のところまだ低いものと見ています。しかし油断はできませんね。

かつてナシーム・ニコラス・タレブは、マーケットにおいて、事前にほとんど予想できず、起きた時の衝撃が大きい事象のことを「 ブラック・スワン理論 」として説明しましたが、こうしたブラック・スワンは事前に予測できないからこそそう命名されているわけで、どこに隠れているかわからないのです。



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プロフィール

■ 長嶋 修さん

長嶋 修さん

不動産コンサルタント
さくら事務所 会長

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不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。

以降、様々な活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築く。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。

2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。

また、TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。

現在、「東洋経済オンライン」、「Forbes JAPAN WEB」等で連載コラムを執筆中。業界・政策提言や社会問題全般にも言及。

主な著書に、『空き家が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞社)、『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)等。

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