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住宅市場にバブルの可能性。不動産賃貸業にも影響大の「残価設定ローン」とは何か?

長嶋修さん_画像 長嶋修さん 第228話

2020/10/15 掲載

不動産市場、とりわけ住宅市場にバブルを引き起こしかねない事態が発生しそうです。それは「 残価設定ローン 」の開発。残価設定ローンとはかんたんにいえば、住宅の資産価値を差し引いた分だけを返済する仕組みです。

例えば3,000万円の新築住宅について、将来価値が1,000万円と設定されれば、残りの2,000万円について住宅ローンを組めばよく、ローン支払いが終了したあとは住宅を手放せばローンは残りません。

他にも「 残額について再度ローンを組む 」「 残額を現金で買い取る 」といった選択も可能です。



現在はまだほとんど普及していないこうした仕組みについて、国土交通省は2021年度にも民間の金融機関によるモデル事業をスタートさせる予定のようです。この残価設定ローンが具体的にスタートした場合、住宅販売がさらに活発化する可能性があるでしょう。

東京都区部の新築マンション価格は7,000万円前後の、一般的なサラリーマンには手の届かない水準にまで上昇しています。

仮に自己資金を1,000万円ねん出し、残りの6,000万円について期間35年・金利1パーセントの住宅ローンを組んだ場合には、毎月16万9,000円、年間およそ200万円となり、年収1千万円でも返済比率( 年収に占める住宅ローン返済の割合 )は20%。

年収800万円なら25パーセント、600万円では33パーセント。これが仮に、7,000万円の半額3,500万円の残価が設定されたとすると、住宅ローンは2,500万円でよく、そうなると毎月の支払いはたったの7万円となり、これなら多くの家計が支払い可能となります。

あるいは都市郊外や地方の新築一戸建て( 4LDK )の場合。その販売価格は2,000万〜3,000万円程度のものが多いですが、自己資金なしで3,000万円の住宅ローンを組むと毎月の支払いは8万4,000円と家賃並みであることから売れ行きが好調です。

仮に1,000万円の残価が設定されれば住宅ローンは2,000万円で、毎月の支払いは5万6,000円でよく、多くのケースで家賃よりも低くなりそうです。

これに、住宅ローン残高の1パーセント分の税金が戻ってくる「 住宅ローン控除 」が使えれば、初年度は20万円程度が戻ってきます。これが10年、長期優良住宅なら13年続きます。

この条件であえて賃貸を選択する人がいるでしょうか? そういった意味では、不動産賃貸業にも関係が深いのがこの「 残価設定ローン 」といえます。

残価設定ローンは支払いが終わった後に住宅を手放すのが前提ですが、そもそも賃貸では家賃を支払い続けても自分のものにはならず条件は同じ。だとしたら、2DKや3DKで作りも相対的にチープな賃貸より、グレードも高い4LDKの新築一戸建てに住むことを選択するはずです。

新型コロナウィルスで一時ストップしていた販売現場は、新築・中古・マンション・一戸建てともにすっかり息を吹き返したどころか、低金利の恩恵を受けて絶好調といっていい状況。

来年度以降、残価設定ローンが普及した場合には、住宅市場にバブル的な状況が訪れる可能性があります。とはいえ価格上昇の可能性を秘めているのは都心部・都市部で利便性の高いマンションに限られるでしょう。

都市郊外や地方では今後加速度的に空き家が増加することが見込まれており、その価格下落圧力は膨らむばかり。あたかも無駄な公共工事を行うように、価値を維持できない新築住宅が量産される結果となり、宴の後はより一層の空き家が残るといった結末になりそうです。

とはいえこの仕組み、全ては「 残価をいくらにするか 」にかかっています。現在、金融機関が住宅ローンの査定をする際には、年収・勤務先・勤続年数など主に購入者( 借入者 )の属性を重視。

肝心の家については、X年後の住宅価格など念頭になく、担保評価能力も関係ないといった状態です。この部分をどうするかがキモとなるでしょう。

また、残価部分の金利を支払う設定となる場合には、残価1,000万円なら約8,000円の支払いは必要となります。今後の推移に注目しておきたいところです。
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プロフィール

■ 長嶋 修さん

長嶋 修さん

不動産コンサルタント
さくら事務所 会長

長嶋修さんのブログ

不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。

以降、様々な活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築く。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。

2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。

また、TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。

現在、「東洋経済オンライン」、「Forbes JAPAN WEB」等で連載コラムを執筆中。業界・政策提言や社会問題全般にも言及。

主な著書に、『空き家が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞社)、『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)等。

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