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懸念される「現金の希薄化」とインフレスパイラル。1990年のバブルとその崩壊から今後を占う

長嶋修さん_画像 長嶋修さん 第241話 著者のプロフィールを見る

2021/11/26 掲載

今後どのようなことが起きるのか。これを占うためには、類似する1990年のバブルとその崩壊がどのようなものであったかを知るのがいいでしょう。

経済学的・理論的に説明不可能な市場が、いったいどのようにして形成されたのか。これは、当時の空気感を体感していないとなかなか理解しにくいところがあります。

■ 1990年のバブルとその崩壊から今後の日本を占う

戦後の高度経済成長期を駆け抜けた日本は、ニクソンショック( 1971年 )やオイルショック( 1973年・1979年 )といった危機を乗り越えつつ突き進んでいましたが、1970年代後半になると主に優良製造業向けの融資案件が伸び悩み、銀行が不動産業や小売業、住宅への融資へ傾斜しはじめます。

1980年代初めになると、東京の国際都市への期待が高まり、外資系金融機関なども増加し、オフィスが大量に不足すると予想され始めるのです。一大転機はご承知の通り1985年のプラザ合意です。

これはかんたんに言えば「 G5 」( 先進5カ国蔵相・中央銀行総裁会議 )で発表された為替レートの安定化に関する合意で、要は「 ドル高 」を是正しようということ。開催場所となったニューヨークのプラザホテルにちなんでプラザ合意と呼ばれています。アメリカによる「 強いドル 」の放棄です。


※会場となった、ニューヨークのプラザホテル( ウィキペディアより )

一方日本は、主に円高になることで不況がもたらされると予想される中、世界的に景気を刺激しようとするG7の諸国と足並みを揃える形で日本銀行が金利を引き下げるなど、積極的な財政出動と金融緩和を行います。

するといきなりガラリと雰囲気が変わりました。輸出立国と謳われてきた日本にとって円高になるということは、輸出に厳しい一方、海外の商品や不動産をかつてより安く買えるということになります。

例えば、1ドル200円の時代に100万円の自動車をアメリカで売る場合の売値は1万ドルですが、1ドル100円になると売値は2万ドルと2倍に跳ね上がってしまう一方で、200億円相当だった不動産を半額の100億円で買えるといった具合。

1982 年に、1ドル=260 円であった為替相場は、プラザ合意時点の220円程度から一気に120円程度にまで上がりましたが、このような過程で日本の不動産業者が海外の不動産を買い漁りました。

1986年には第一不動産が、ニューヨークのティファニーの入るビルを買収。また秀和はニューヨークのABC放送の入るビルを始め20棟を超えるビルを次々と買収します。

1980年代と言えばすでに不動産が相当に高くなっており、したがって不動産市場も「 円高不況が予想される今が天井ではないか? 」と、まことしやかに囁かれていたものです。要はこれが「 マス層 」の認識だったのです。

プラザ合意直後の1985年。とある不動産業界紙には次のような論説が展開されます。

「 ここまでの東京都心3区の不動産価格の値上がりは異常だった。特に現在の円高基調では、来年度の成長率は3パーセント程度に落ち込むだろう。来年に予想される日本経済の深刻な局面は、必ずや都心3区の地価上昇に水をかけることになるだろう 」

なにやら昨今の論調と似ていることは皆さんお気づきだと思います。そしてこの後、はたしてどうなったか。結果は御存知の通り。1985年( 昭和60年 )から猛烈な土地バブルが始まり、1991年( 平成3年 )のピークまで天井知らずでドド〜ン!と駆け上がっていったのです。

■ 懸念される「 現金の希薄化 」とインフレスパイラル

2008年における日米欧の中央銀行の資産は合計でおよそ400兆円。一方現在は2,000兆円を超えています。これだけ現金が溢れかえると、まずは「 現金の希薄化 」が懸念されます。カルピスの現役に水を継ぎ足すと、味が薄くなるのと同じで、現金をすればするほどその実質的な価値は減少していくはず。

次に「 現金の向かう先 」。現在のようなゼロ金利、国によってはマイナス金利といった状況では、そのままでは資産が増加しないどころか、相対的に価値を下げている恐れがあるため、現金以外のなにかに変えようという動きが活発化する可能性です。

あふれかえるマネーの行き先はどこにでもあります。株式投資などは、30年前は証券会社などの店頭に行かないと買えなかったところ、現在ではスマホ上でワンクリックで売買できます。不動産も実物以外にREIT( 不動産投資信託 )といった選択肢もでき、投資はより「 お手軽 」になったのです。

「 投資 」という行為が、よりコモディティ化したと言ってもいいでしょう。ゴールドや不動産などの現物。インフレが進行するアメリカでは木材などの住宅資材など一部で投機的なものと思しき動きも見られます。

ビットコインやイーサリアムといった仮想通貨取引や、NFT( Non-Fungible Token / 非代替性トークン )を活用した、NFTアート作品の売買も行われています。

NFTアートとはビットコインなど仮想通貨に使われているブロックチェーン技術を活用し、デジタルデータにおける「 唯一性 」を担保する仕組みのこと。とあるアーティストが、動画のNFTを660万ドル( 約7億5,000万円 )、コラージュ作品のNFTを約6,900万ドル( 約78億6,000万円 )で売却したことが世界中に衝撃を与えました。

このようにして、健全な意味での景気回復とは程遠い、インフレスパイラル的なバブルがかつてない規模で発生する可能性があるのではないでしょうか。インフレスパイラルとは次のような循環です。

1)不動産価格上昇 → 値上がり期待で買う人が増える → ますます上がる →さらに高値で買う人が増える →
2)物価が上がる → マネーへの期待が下がる → ますます物価上昇 → さらに貨幣への期待下落

こうした事態になったとしてもならなかったとしても、現行の金融システムが持続可能でないのは言うまでもありません。シャットダウンのきっかけは何でもありですが、その合図は「 止められない金利上昇 」でしょう。

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プロフィール

■ 長嶋 修さん

長嶋 修さん

不動産コンサルタント
さくら事務所 会長

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■ 経歴

不動産デベロッパーで支店長として幅広く不動産売買業務全般を経験後、1999年に業界初の個人向け不動産コンサルティング会社である、不動産の達人 株式会社さくら事務所を設立、現会長。

以降、様々な活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”第一人者としての地位を築く。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。

2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度をめざし、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立、初代理事長に就任。

また、TV等メディア出演 、講演、出版・執筆活動等でも活躍中。

現在、「東洋経済オンライン」、「Forbes JAPAN WEB」等で連載コラムを執筆中。業界・政策提言や社会問題全般にも言及。

主な著書に、『空き家が蝕む日本』(ポプラ社)、『不動産格差』(日本経済新聞社)、『5年後に笑う不動産』(ビジネス社)等。


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