今日はタイルの話題です。コンクリートを風雨に直接さらさず建物の耐久性を上げ、美観にも優れるため、多くのマンションの外壁にタイルが使われています。みなさんが投資されている、または投資を検討されているマンションでもそれは同様でしょう。
ところが近年、この外壁タイルの「 浮き 」や「 剥離( 剥がれ )」といった事故が相次いでおり、さくら事務所へのご相談が急増しています。
万が一タイルが剥がれ落下してしまったら大事故となるのは間違いありません。事故を未然に防ぐためには点検と修繕対応が必要ですが、その費用を所有者が払うのか、売主または施工会社が払うのか、そのあたりもトラブルの種になっています。
外壁タイルの不具合は何が原因で起きているのか、そして、不具合が起きた時に所有者としてどのように対応すべきなのか、考えていきましょう。
■ 外壁タイル不具合の最大の要因は「 施工不良 」
原因としてまず頭に浮かぶのは「 経年劣化 」。マンションはだいたい竣工後12年から15年くらいの間に1回目の大規模修繕工事が行われ、その際に外壁タイルも修繕の範囲に含まれます。
ただしその割合は通常全体のおおよそ2~3%ほど。これは健全な施工がされていた場合、第1回目の大規模修繕工事が行われるタイミングでのタイルの浮き率として、私たちが経験から割り出した感覚値です。
これを大幅に超える場合には、原因が「 経年劣化 」であるとするには割合が高すぎると言えます。
では、外壁タイル不具合は何が原因なのか。最大の要因は「 施工不良 」。売主側は「 この不具合は地震が原因だ 」と主張することもありますが、それは基本的にあり得ません。
地震で極端に揺れた箇所のタイルが数箇所程度剥がれ落ちる可能性はありますが、大量のタイルの浮き、剥離が地震によって引き起こされることはなく、あくまで根本的な原因は施工不良であり、それが地震によって顕在化した、そう考えるのが自然でしょう。
もし売主、施工会社が「 地震のせいで外壁タイルが動いた 」とする意見を変えない場合は、第三者機関に相談を。地震の前から建っている近隣の同規模の建物をチェックすることで、外壁タイル不具合の原因が地震にあるのかを推定することもできます。
■ 外壁タイルの調査で「 異常なし 」と言われたのに…
では次に、外壁タイル調査が一般的にどのくらいの頻度で、どういった形で行われているかを見ていきましょう。
一定規模以上の マンションは建築基準法第12条で定められた「 特定建築物調査 」を3年に1回実施しなくてはならず、外壁タイルもその調査に含まれています。ところが、調査の実態としては、必ずしも全てのタイルがチェックされているわけではないのです。
調査では、手の届く範囲はテストハンマーという細いロッドの先に鉄球がついた器具を使って打音調査を行います。テストハンマーで外壁タイルの表面をなぞる音によってタイルが浮いているかどうかを確認しています。
ただし、足場を組んで調査を行うわけではありませんので、手が届かないところは目視。高いところ、遠いところは双眼鏡や望遠鏡などを利用して機械的に目視することになります。
私たちが相談を受けた事例の中で、1年前に特定建築物調査で外壁タイルの調査を受け、「 異常なし 」と報告を受けていたにもかかわらず、大量の外壁タイルが浮いていたということがありました。
調査からわずか1年間でタイルの浮き、剥離が急激に進むことは現実的には考えられないため、これは、特定建築物調査が確実に行われていなかったと考えるべきでしょう。
■ 施工会社や売主に責任を求めることは可能?
万が一、所有するマンションの外壁タイルに不具合が見つかったら、所有者としてどう対応すればいいか。
通常、不具合が見つかった時にマンションの管理組合は修繕を検討することになり、所有者がその費用を支払うケースも見られます。当然、所有者としてこの判断は間違っていないと言えるのですが、その責任が本当は売主や施工会社にあるとなれば、話は変わってきます。
仮に1棟40戸程度の投資用マンションを所有していたとして、マンション全体を囲うように足場を組み、外壁タイルの修繕工事を行った場合、その費用は3,500万~4,000万円程度となる可能性があります。全てを所有者が負担した場合、利回りへの影響は計り知れません。
責任に関する判断のポイントですが、「 竣工引き渡し以降の経過年数 」に着目してください。
まず、2年以内であれば、外壁タイルはアフターサービス期間内ですので、修繕費用は売主負担とすることができます。売主によってはこの期間が5年程度に少し長めに設けられている場合がありますので、確認してください。
次に10年以内の場合。10年間は売主や施工会社に「 契約不適合責任( かつては「 瑕疵担保責任 」と呼ばれていました )」があるため、この場合も売主負担で修繕を行うことができます。
10~20年の場合は契約不適合責任の期間は過ぎているものの、そこに不具合が生じることで身体生命に危害を及ぼすような恐れがある場合は「 不法行為責任 」として売主に法的な追及をすることができる余地があります。
そして、20年を超えてしまうと、法的に売主や施工会社に責任を追及することは困難となります。以上のように経過年数によって責任の考え方が変わってきますので、よく覚えておいてください。
上記の通り、外壁タイルの修繕に関しては必ずしも所有者が全ての費用を負担するのではなく、交渉によっては、売主や施工会社に責任を求めることができる場合もあるということ。
そして、その交渉の際に大切になるのが「 原因調査 」なのです。外壁タイルの不具合が見つかった際は、まずは第三者の専門家へ原因調査を依頼することをおすすめします。
特定建築物調査の結果だけでは十分な証拠にならず、売主や施工会社との交渉が難航することがあります。また、原因が不明なままでは、適切な修繕計画を立てることもできません。
場当たり的な修繕を行うのではなく、原因調査を通じて不具合の原因をしっかりと把握し、その結果をもとに売主や施工会社と交渉する。これが所有者として求められる姿勢だと思います。