目くるめく大変化が起きる直前には、動きが緩やかになり不思議な静寂が訪れます。しかしそこから、じわり、じわりときしみが目立ち始め、動き始めたら一気に加速、もう誰にも止まらなくなる、と言ったイメージです。

例えば金融経済。2008年のリーマンショック前に日米欧の中央銀行資産は400兆円程度でしたが、現在では2,000兆円を超え、とんでもないレベルでのマネーの希薄化が実現しています。
1万円の価値が日に日に低下し続けてきたわけです。更には1990年代後半に金融自由化や金融工学を駆使したデリバティブ商品の発達により、マネーの発行量を遥かに上回る規模で資産が膨らみ続けてきました。
これが持続可能でないのは火を見るより明らかですが、昨日と同じ今日があり、また明日もあるだろうといった「 正常性バイアス 」が働くこともあって、現在の金融システムがそもそもぶっ壊れることは、多くの向きが前提としていません。
しかし、おそらく数年後、今のところ2025年前後を想定していますが、1990年バブル崩壊とか2008年リーマンショックとは次元の違う、現行システムを根本的に覆し新システムに移行するといった、ドラスティックな変革が起きそうです。
あるいは政治の世界。過日、要人の某重大事件があったのは、政治機構が根本的に崩れる兆しと見ていいでしょう。同時にかねてより周知の事実であった某宗教団体の問題が、なぜかいきなり取り上げられる様になったのは不思議ではありませんか?
こうした動きは何も日本に限らず、世界的なトレンドです。建物で言えば、もはやリフォームやリノベーション、増改築では間に合わず、解体して新築する必要に迫られていると言え、それが半ば強制的に、抗えない時代の流れの中で起きているのだと見ていいでしょう。
こうした一連の大変革を便宜的に「 グレートリセット 」と呼んでおきます。
■ 歴史は繰り返さないが韻を踏む
「 歴史は繰り返さないが韻を踏む 」( マーク・トウェイン )とはよく言ったもの。本稿では過去との類似性について詳細に論じる紙幅はありませんが、卑近なところで言えば2020年の世界的なコロナ禍や2008年リーマンショックで無尽蔵に膨らんだ金融システムの転換。
1990年バブル崩壊以降に弥縫策を繰り返してきた政治経済金融のツケの精算、いまだ残る戦後の高度経済成長期モデルや価値観の精算、主に英国からもたらされた産業革命を取り入れた1867年明治維新以降に作られ、今も残るピラミッド構図の清算が行われるのがこれからということです。
そして世界の構図も大きく変わります。ドルと軍事覇権がセットとなった一極体制が崩壊し、アメリカは一ローカル国家へと転落します。かと言ってロシアや中国など別の大国が取って代わるわけでもなく、世界のパワーバランスは多極分散化します。
その一環として、ウクライナの件が象徴的に起きていることを、理解しておきたいところです。この火種は中央アジアから中東に飛び火し、一定のクライマックスを迎えるでしょう。
欧州も当然無傷ではいられず、政治経済的混沌・混乱が収まらずEU解体、離脱した英国も分解となるのではないでしょうか。中国も同様の流れの中にあり、例えば戦区ごとに、分断が進む可能性が高いと思います。
さて、このように聞くとなにやら物騒でもあり思わず身構えてしまいそうですが、これから起こることは春夏秋冬で言えば、いわば「 春を迎えるための冬 」のようなものであり、次の時代を迎えるにあたり必要なプロセスでもあります。
明治維新前後でも、戦中戦後でも、もちろん大変な人も数多くいましたが、ほぼ影響を受けない人も多数いたほか、いわゆる「 マクロ 」や「 マス 」など関係なく、むしろ変化をチャンスに変えた人もいくらでもいました。
とりあえずは世界の怒涛の動きに対し、シートベルトを締めて身構えつつも、同時に、変化の潮流や次のあり方について、グレートリセット後の世界をよくよく想定しておき、機を見るに敏と言ったイメージで動きたいところです。
次稿ではもう少し具体的に、グレートリセット後の世界を想定し、どのように考えどう行動したらいいかを、皆さんと一緒に考えてみます。