具体的な破綻の経過や救済に至るプロセスなど詳細は報道に譲りますが、結論を言えば嵐はいったん収まりつつあります。大きな金融危機のようなことは当面の間、発生しないでしょう。
それはなぜか。理由はかんたんで「 準備が整っていないから 」。仮に今回、リーマン・ショック級の金融危機が訪れたら、おそらく全世界金融システムダウンでしょう。
本来、現行の金融システムは2008年のリーマン・ショックで終焉していたのです。それを、無制限と言える金融支援によって、根本的な治療を行わないまま持たせてきたわけ。
そこに来て近年ではコロナ禍で更に市場のマネーは膨らみました。リーマン・ショック前における日米欧の中央銀行の資産規模は合計400兆円程度でしたが、現在は2,000兆円を軽く超えています。ジブリの「 千と千尋の神隠し 」の「 カオナシ 」みたいに、どんどん膨張していくイメージです。
もし今、現行の金融システムが破綻したら、おそらくもう一度同じシステムで再起動することは不可能だと思います。いや、正確に言えば可能かもしれないのですが、どうやらその気もなさそうなのです。
だからこそ2019年8月23日、米ワイオミング州ジャクソンホールで主催されたシンポジウムにおいてイングランド銀行( 英中央銀行 )のカーニー総裁( 当時 )が、「 現状維持を思慮なく受け入れるのは誤りであり、最終的には劇的な措置が必要になる 」としてドルを基軸通貨とする世界的金融システムの抜本的改革を求める提言を行ったわけです。
これはビットコインやイーサリアムのような仮想通貨ではなく、「 合成覇権通貨( SHC )」といって、中央銀行が発行するデジタル通貨を前提としています。
ここからさっそく各国で検討や実証実験が始まっていますが、まだ施行段階には到達していません。これがある程度整うまでは、現行の金融システムは崩せないはずです。
以前に何度もお話ししていますが、これまで起きてきた各種の金融システム破綻は、自然発生的に起きたものではなく、一定の意図を持って「 起こされたもの 」と捉えています。リーマン・ショック然り。1929年の世界大恐慌然り。
わかりやすく言えば賭博の胴元が場のルールを決め、流れを作り全体をコントロールしているわけです。経済学はそうした実態を覆い隠すものといっていいでしょう。金融・財政論も要は「 為にする議論 」といえます。

こういう話をするとなにやら怪しげな、お手軽な陰謀論的に聞こえるかもしれませんが、そんな事を言いたいわけではありません。世の中というか社会というか世界には「 ホンネとタテマエ 」があります。
金融・財政論がハコニワ的な議論であるのと同様、歴史なんかも似たようなものですよね。そもそも神武天皇なんて実在しないですし、万世一系も成立しないのですが、建国には理由というか神話が必要だから、そういうことにしているのです。
古事記・日本書紀は全く史実に基づきません。しかし、こんな話は日本だけではなく、お隣の韓国も中国もエジプトも古代ローマも、世界中のほとんどの国で、遡ればシュメール神話すら創作が多分に含まれています。
これは「 そんなものなのだ 」という認識があるかないかというだけことなのですが、学校で教えられてきたことや周りの大人が言っていること、メディアが言っていることを鵜呑みにしていると、その純粋培養的なハコニワから出られないことになります。ま、そんな中でも楽しく幸せに暮らしていければそれでいいのですけどね。
そんなわけで、次世代金融システムが整うまで、ものすごく早ければ来年、妥当な線で2024〜2026年くらいかと思われますが、このとき、具体的にどうなるかはもちろん明らかになっていません。
例えば、現行システムは完全にぶっ潰して次のシステムに移行するのか、既存システムを温存しつつ二本立てで行くのか、など。またその時例えば私達の預金はどうなるのか、不動産をはじめとするその他資産はどうなるのか、などなど。
またシステム切り替えの際にハイパーインフレのような事態が起きるのか、起きるならどのくらいの期間かといった論点もあります。こうしたことに対するヒントは過去コラムに散りばめてありますので、よろしければご覧ください。
また、具体的に世の中がどうなっているのか知りたい方は弊YouTube のメンバーシップ動画でご覧いただくことができます。「 知っているのといないのとでは大きな違いを生む知識や認識 」というものが、この世にはあるのではないでしょうか。
長嶋 修の「 日本と世界の未来を読む 」
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