今回は法人に「 旅費規程 」を作り、法人から個人に旅費を支払う方法とメリットを紹介します。サラリーマンで営業や出張が多い人は会社の旅費規程を使って旅費を請求するために、出張旅費精算書を書くことがありますよね。
不動産事業においても自分の法人に「 旅費規程 」を設けることによって、自分の法人から個人へと出張旅費を支払うことができます。しかも、実費よりも多めの金額を受け取れます。
具体的には、法人で物件を買っていて、遠方の物件の視察等のために出張したりする際、かかった交通費や諸雑費( 視察中の昼食費など )等の他、1日あたり〇万円等、予め決めておいた「 支給日当 」を個人へ支払うという仕組みです。
法人のメリットですが、役員や従業員に支払う旅費は「 経費 」として計上できます。給料として役員や従業員にお金を支払った場合は社会保険料の対象となりますが、出張旅費として支払った場合、社会保険料はかかりません。
労使折半で、法人でも個人でも支払う必要のある社会保険料を双方が支払わなくても良いのですから、法人にとっても個人にとってもメリットがあるといえます。
■ かかった実費より多い金額でもOK
実際に運用する際には、「 出張旅費精算書 」を作成します。そこには出張の訪問や目的、電車代やタクシー代などのかかった費用、その他の移動についてのルールを書いておきます。
例えば社長ならば新幹線はグリーン車、飛行機はビジネスクラスを利用すると決めておけば、その正規運賃が必要経費として認められます。実際は高速バスやLCCの飛行機を利用した場合でも、差額を清算する必要はありません。
宿泊費についても同様で、出張先でしっかりと休養を取るために設備の整ったシティホテルに泊まれる金額を常識の範囲で旅費規程に定めておけば、必要経費として認められます。
この場合も何らかの事情でカプセルホテルや安いホテルに泊まったとしても、その差額を清算する必要はありません。
<出張旅費規定がない場合>
東京⇔大阪間往復1泊
交通費 13,800×2
ホテル代 11,000円
日当 0円
合計 38,600円
<出張旅費規程がある場合>
東京⇔大阪間往復1泊
交通費(グリーン) 19,590×2
ホテル代 18,000円
日当 10,000円
合計 67,180円
その差は、28,580円
東京⇔大阪間往復1泊
交通費 13,800×2
ホテル代 11,000円
日当 0円
合計 38,600円
<出張旅費規程がある場合>
東京⇔大阪間往復1泊
交通費(グリーン) 19,590×2
ホテル代 18,000円
日当 10,000円
合計 67,180円
その差は、28,580円
個人が受け取る旅費日当も、給料とは違い所得税も住民税も関係なく、源泉徴収の対象にもならないというメリットがあります。また、法人の方で書いたとおり社会保険料もかかりません。
つまりこれは、「 法人から個人に効率よくお金を移すことができる 」魔法のような制度といえるのです。 ただし、勝手にやってはいけません。法治国家である日本においては必ず「 旅費規程 」を作ってから運用を始めましょう。
■ 旅費規程の決め方と注意点
旅費規程を作る方法ですが、必ず旅費規程を導入するための株主総会を開き、それを決議した議事録が必要になります。
僕の場合も、僕と妻とで株主総会を開いて議事録を作り、押印した文書を残しています。その書類を税理士に渡して会計処理しています。
取締役会でも十分のような気がしますが、社長個人の節税目的という疑念を持たれないように、経営から独立した出資者の集まりである株主総会で出張旅費規程の導入を決議するのです。
株主総会であればそれは社長個人ではなく出資者の集まりです。株主総会議事録があれば、すべての株主の意向ということで社長は株主の意向に基づいた運用をしていることになります。
旅費規程にかかる法的根拠や範囲については、国税庁の「 所得税基本通達9-3 」で通達されています。その内容を簡単にまとめると次のようになります。
・出張の目的、目的地、行路または機関の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用を支給して構わない。
・通常必要とされる費用かどうかの判定は、社内の役職間のバランスと同規模の会社と比べ高すぎないよう考慮すること。
※注意点
・同業他社とのバランスが保てているかどうか?
・役員間のバランスがとれていて従業員全員対象となっているか?
・通常必要とされる費用かどうかの判定は、社内の役職間のバランスと同規模の会社と比べ高すぎないよう考慮すること。
※注意点
・同業他社とのバランスが保てているかどうか?
・役員間のバランスがとれていて従業員全員対象となっているか?
このように、必要とされる費用が具体的にいくらであるかについては示されていません。ですから、各社の経営における合理性を考慮した適切な金額を設定します。それが実費と違ってもいいということはすでに述べたとおりです。
■ 出張の定義について
最後は出張の定義です。出張と認められるには3つの要素が必要です。
1、在勤地から離れること
在勤地であれば通常の出勤となります。
2、業務上の目的を持つこと
視察と言って、ただの旅行に行くのではなく業務上の目的を客観的、合理的に説明できる必要があります。
3、旅行の費用がかかること
在勤地を離れ、業務上の目的をもって旅行の費用がかかる必要があります。
在勤地であれば通常の出勤となります。
2、業務上の目的を持つこと
視察と言って、ただの旅行に行くのではなく業務上の目的を客観的、合理的に説明できる必要があります。
3、旅行の費用がかかること
在勤地を離れ、業務上の目的をもって旅行の費用がかかる必要があります。
旅費規程の運用については必ず顧問税理士と相談してから運用を始めましょう。また、旅費精算表については必ず通帳を使って振り込み、帳票は必ず保存するようにしてくださいね。
出張で宮崎に行きました