■ 法人化の4つのメリット
①個人と法人の所得分散
②経営セーフティ共済を利用した退職金の積立
③損失の繰り越し
④相続対策
②経営セーフティ共済を利用した退職金の積立
③損失の繰り越し
④相続対策
①個人と法人の所得の分散
なぜ、節税になるのか? その理由は、個人と法人の税率の違いによります。
不動産投資の利益にかかる税金は、個人なら所得税で法人なら法人税です。所得が少なければ個人の方が税率は低いですが、一定以上だと法人の方が低くなります。
個人の所得税は、所得が増えれば増えるほど税率が上がっていく累進課税率が採用されています。最低税率は5%ですが、課税所得が4,000万円超えると45%にまで上がります。実際は、ここに住民税10%も加わるので最高税率は55%と半分以上、所得税・住民税で払うことになります。
一方で、法人税率は課税所得800万円以下だと19%( 軽減税率が適用される期間は15% )で、800万円超えの部分は23.2%になります。
ここに、法人住民税・地方法人税・事業税・地方法人特別税など、法人の所得に関する様々な税金を加えると実質的な実効税率はもっと高くなるのですが、所得税率だけで比べると個人の最高税率が45%に対し、法人は23.2%と差は歴然です。
なお、法人税は下がっていく傾向にあり、平成27年の税制改革で25.5%から23.9%に、さらに平成28年には23.4%になりました。平成30年4月以降は23.2%にまで引き下げられています。
課税所得が800万円以下の中小法人については、さらに税率が低くなり15%になっているので、不動産事業を拡大していくには法人を設立したほうが、ますますお得になってきています。
それでは、具体的に収入がいくら以上になったら法人化すればよいのでしょうか?
個人の課税所得金額が900万円を超え、税率が33%になると法人税率を上回ります。そう考えると、法人化したほうが節税になるのは課税所得で900万円以上が目安になるでしょう。
課税所得は給与所得も合算して考えますので、例えばサラリーマンの課税所得が400万円くらいなら、不動産の課税所得が500万円を超えたくらいでこのラインに到達します。
②経営セーフティ共済を利用した退職金の積立
法人は経営セーフティ共済( 中小企業倒産防止共済 )に加入できます。月20万円( 最大800万円 )を損金( 経費 )計上できるため、法人の課税所得を圧縮することがでます。
個人事業主は、自分に退職金を払うことができませんが、法人の場合は退職金として任意解約したタイミングで個人に支払うことが可能です。40カ月以上積み立てれば、任意解約でも100%返金されます。
ちなみに法人から支払った退職金を受け取った個人は、「 退職金控除 」を使うことで節税が可能です。経営セーフティ共済と組み合わせることで、法人と個人で二重の節税効果を生むことになります。退職金控除は、以下の金額が対象となります。
③損失の繰越が9年間になる
個人事業でも法人でも、年間の収支がマイナスだと赤字分を翌年に繰り越すことができます。この繰り越し年数は個人だと3年間ですが、法人だと9年間、繰り越しが可能になります。
④相続対策
個人事業主に相続が発生すると、事業で使っていた不動産も含めて事業主名義のすべての財産が相続税の対象になりますが、法人の場合は法人名義の財産は相続税の対象になりません。
ではどうなるかというと、死亡した株主の株式分が相続の対象となります。そのため、生前中に株式を贈与税が発生させないように資産分配することで、合法的に節税対策が行え、贈与税の負担を減らすことが可能になります。
■ 法人化の2つのデメリット
①コストがかかる
法人設立には株式会社の場合で、約25万円の費用がかかります。僕は、「 ひとりでできるもん 」というサイトで勉強もかねて自分で設立しました。
最初に法人の株主と、代表取締役がそれぞれ最低1名必要になります。かかる費用はシステム利用料3,500円、電子定款作成代行料5,000円、登録免許税15万円、公証人認証手数料52,000円です。
次に定款を公証人役場に取りにいって、印紙4万円を貼り、管轄法務局に設立登記申請書と必要書類と会社の実印にする予定の印鑑、役員の印鑑証明書を提出します。
僕はそのタイミングで法人の判子も作りました。判子は、黒水牛の3本セット( 実印、銀行印、角印 )で1万円程度のものにしました。
印鑑を作る時、郵便番号と住所と会社名と代表取締役と電話番号のセパレートスタイルのゴム印( 5,000円程度 )も作っておくことをお勧めします。僕はケチって作らなかったことを後で後悔しました。
おかげで融資を受ける際に、たくさんの書類に社名と代表取締役西野浩樹という署名を数えきれないくらい書いて、手がつりそうになりました( 笑 )。皆さんは、そうならないようにしてくださいね。
まとめると、僕の場合は法人設立にかかった費用はセパレートタイプの判子も入れて、トータル265,500円でした。他にかかるお金は資本金です。資本金は1円から可能ですが、僕は50万円で設立しました。
がんばって自分でやりましたが、今思えばかかった時間がもったいなかった気もします。1回きりですし間違いがあってもいけないので、司法書士さんに頼んだ方が良かったかなと思います。
他に必要なお金には、税理士費用があります。また、赤字の年でも住民税の均等割分の7万円がかかります。それとここは重要ですが、税引き後の利益は法人の余剰金であって社長のものではないので、会社のお金は個人事業主のように自由には使えません。
②長期譲渡の売却益にかかる税金が高くなる
個人の場合、物件の所有期間5年以内で売却をすると、短期譲渡となって税率は約39%です。5年を超えた場合は長期譲渡となり、税率は約20%にまで下がります。一方、法人の場合は期間に関係なく約30%なので、長期保有の場合、売却は個人の方が有利になります。
■ まとめ
課税所得が900万円くらいになったら、法人を設立した方が税率を低くすることができるとは思います。どんどん拡大していくと累進課税と法人税率との差は開いていくので、法人化のコストは大きなものではなくなるかもしれません。
法人を設立すると、登記簿謄本に法人名・本店所在地・役員の氏名・代表者の住所が記載され、謄本は原則、誰でも取得することができます。
サラリーマンが会社を設立した場合で、法人名が会社に知られてしまうと、謄本は簡単に調べられてしまうため、会社に副業としてバレて、呼び出しを受ける可能性があります。
それを避けるため、僕は妻を代表取締役社長にして法人を設立しました。妻を代表取締役社長にしておけば、会社を辞めたときの失業手当の申請もスムーズです。( 自分が代表取締役社長の場合、失業手当はもらえません )。
そのためには、配偶者や両親や兄弟を発起人や代表取締役にすることをお勧めします。僕自身、失業手当を貰ったあと代表取締役に就任しました。
今は個人事業主として約半分の不動産を青色申告し、もう半分は法人として不動産を所有しています。どちらも低い税率で、それぞれの良い点を享受できるようにリスクヘッジしています。( 個人で不動産を持っていても失業手当はもらえます )
皆さんに伝えたいのは、単年~数年での節税だけを考えて、法人の方が有利かどうかを検討するのではなく、相続まで考えてどうするかを考えた方がいいということです。
例えば、お子さんがおらず、サラリーマンを続けながら不動産投資拡大をしていく予定がない人は、社会保険料のメリットも享受できないので法人はいらないかもしれません。
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