多くの人にとって、家で過ごす時間が増え、今まで以上に賃貸住居の快適性が求められます。自分のアパートの空室もあと少し。居心地の良さをアピールして、9月の繁忙期中には決めたいですね。
今日はドミナント戦略についての話題です。ドミナント戦略とは、僕がもともと勤めていた流通業で使われている言葉です。具体的にはチェーンストアが一つの地域に出店を集中させる戦略で「 優勢な 」「 支配的な 」という意味があります。
そして、実際に多店舗展開している地域を「 ドミナントエリア 」と言います。僕もアパートを関西( 彦根 )と北陸( 富山 )の2拠点で約50室ずつドミナント展開しています。
■ ドミナント戦略の5つのメリット
最初に、ドミナント戦略のメリットを紹介します。
1)地域内でのリーシング会社の認知度が高まる
戸建て一つしか持っていない大家さんより、アパートを何棟も持っている大家さんの方が年間に複数回店舗に顔を出して会話することになるので、認知度は上がります。
僕も物件数が少なかった頃は、何年かに一度の入居者が退去したときしか店舗に顔を出さなかったので、担当者も変わり、「 誰でしたっけ? 」みたいなことになっていました。
一方で今は1年に数回は空室の相談や新しい案件の相談でリーシング会社に出向いており、話をする機会が増えたので、情報が入りやすくなり、客付けもお願いしやすくなりました。
2)地域内での共有ができる
リーシング会社だけでなく、清掃業者、クロス職人、大工さん、プロパンガス屋さん、配管屋さん、建築会社、土地家屋調査士、司法書士、保険屋さんなど、毎回違う地域でやっていたら毎回新規開拓が必要で、かなりの手間がかかります。
ドミナントエリアなら不動産会社や工事業者だけでなく、自治会長や近隣の人とも人間関係ができるので、ゴミ箱や電灯の設置や除雪まで、スムーズに話を進めることができます。
僕の場合、アパートを隣同士、並んで建てているエリアがあるのですが、ここでは一つのアパートの駐車場が埋まっていても、隣のアパートの駐車場で代替えが利きます。
ゴミ箱も一つのアパートごとに設置していたら5つ必要なところを、一つの大型ゴミ箱で対応することでコストや手間を大幅にカットすることができました。
3)地域に合わせた広告宣伝ができる
地域が変わるとADや敷金・礼金の目安が変わってきます。この点、エリアを絞っていると相場がわかるので効率的な広告宣伝ができます。
法人需要が多いエリアでは特に注意が必要です。法人によって社宅規定の家賃の上限や間取り平米数が異なるので、間違って建てると全く入らないなんてことにもなりかねません。
また、近隣の変化や情報をいち早く入手する事も可能です。例えば学校、コンビニ・スーパー、病院等の新設や撤退などの情報は賃貸経営に直結します。
4)巡回しやすい
大家である以上、管理会社に物件を任せているとしても、今の自分の物件がどのようになっているかを定期的にチェックしなくてはいけません。
共用部の電気が切れていないか? 共用部が汚れていないか? 放置自転車が増えていないか? 不法駐車がないか? ゴミ箱がきちんと分別されているか? 雑草が生えていないか? などです。
遠くに物件が散らばっていると巡回するだけで一苦労です。ところが、物件が固まっていれば時間がかかりません。僕の場合、それぞれのドミナントエリアでは1時間あれば全ての物件をまわることができます。
5)仕入れやすい
ドミナントして得意な地域を作ることで、不動産売買会社の認知度が上がるといったメリットがあります。ドミナントエリアなら土地情報や売り物件情報も事前に言っておけば表の市場に出る前に知りえることも可能になります。
ポータルサイトに出たての情報も知り合いの不動産売買会社が元付け会社なら、売却理由や最低このくらいでならまとまるといった情報もつかめたりします。
融資においても、地域が同じなら以前使った銀行を使うことができます。ドミナントエリアで金融機関を開拓しておけば複数の銀行を使ってドミナントエリアの融資を拡大することができます。
■ ドミナント戦略にもデメリットはある
一方で、デメリットもあります。
1)自然災害のダメージが大きくなってしまう
僕のドミナントエリアである滋賀と富山は、災害に強い都道府県ランキングで1位と5位とされています。
〈災害に強い都道府県ランキング-週刊アサヒ芸能より-〉
1位 滋賀/2位 佐賀/3位 香川/4位 徳島/5位 富山/6位 長崎/7位 福井/8位 鳥取/9位 石川/10位 高知
11位 山梨/12位 大阪/13位 青森/14位 三重/15位 奈良/16位 和歌山/17位 秋田/18位 愛媛/19位 島根/20位 愛知
21位 岡山/22位 山口/23位 宮崎/24位 沖縄/25位 宮城/26位 大分/27位 群馬/28位 広島/29位 福岡/30位 山形
31位 岐阜/32位 岩手/33位 長野/34位 栃木/35位 埼玉/36位 静岡/37位 京都/38位 東京/39位 茨城/40位 熊本
41位 北海道/42位 福島/43位 兵庫/44位 千葉/45位 神奈川/46位 新潟/47位 鹿児島
1位 滋賀/2位 佐賀/3位 香川/4位 徳島/5位 富山/6位 長崎/7位 福井/8位 鳥取/9位 石川/10位 高知
11位 山梨/12位 大阪/13位 青森/14位 三重/15位 奈良/16位 和歌山/17位 秋田/18位 愛媛/19位 島根/20位 愛知
21位 岡山/22位 山口/23位 宮崎/24位 沖縄/25位 宮城/26位 大分/27位 群馬/28位 広島/29位 福岡/30位 山形
31位 岐阜/32位 岩手/33位 長野/34位 栃木/35位 埼玉/36位 静岡/37位 京都/38位 東京/39位 茨城/40位 熊本
41位 北海道/42位 福島/43位 兵庫/44位 千葉/45位 神奈川/46位 新潟/47位 鹿児島
それでも最近は100年に1度レベルの地震、洪水、台風といったことが日常茶飯事ですので大丈夫とは考えていません。ドミナントで物件が固まっていますので下手をすれば、全部の物件に被害が出ることになるかもしれません。
そのため、自然災害保険にはフルサポートで入っています。また、滋賀県と富山県の両エリアに半分ずつ持つことで、万が一どちらかで大きな災害が起こったときのリスクヘッジとしています。
また、僕の最大のドミナントエリアである富山の物件では、災害時、電気の供給が止まった場合に太陽光発電を使えるようにして、それを入居者や地域住民に解放しようと考えています。
それだけでなく、将来的には食料の備蓄や井戸水や災害用のトイレや野外での風呂なども設置していくことで、災害に強いアパートに進化させたいという狙いを持っています。
2)ドミナントエリア内での入居者の奪い合いがおきる
同じエリアで同じような間取りを供給し続けた場合、自分の物件のライバルが自分の物件になる可能性があります。僕自身はそうならないように8部屋~12部屋くらいを1棟にして、建物のコンセプトやデザイン間取りを変化させることで、ターゲットを広げています。
3)地域の事情が変わると売り上げ( 入居率 )に大きく影響する
例えば大きなメーカーの工場に依存した地域で、その工場が閉鎖したり、一つの大学に依存した地域で大学が移転したりしたら、一気に需要が減少します。そこで重要になるのがエリアマーケティングです。
エリアを選ぶ際には、地域の人口動態を確認し、将来性を予測します。過疎化の進んでいるところやこれから進みそうなところは避けて、将来的にも市場規模が大きくなりそうなエリアを選びます。
具体的には、利便性が高くニューファミリー層の流入が多い地域がいいと思います。また、そのエリアの需要特性をつかんだ物件を提供することが大事であることは言うまでもありません。
■ ドミナントエリア外に物件を持って困ったこと
僕は一棟だけドミナントエリア外に2部屋のアパートをもっているのですが、リーシング会社にとっては2部屋しか持っていない大家さんなので知名度も低く、積極的な協力は望めません。物件のディスプレイをもって行くのも「 わざわざ 」という感じで一苦労です。
また、この物件は買ってから浄化槽ということがわかりました。見積もりを取ると清掃業者も定期点検業者の価格も予想以上に高いものでした。
もっと調べたかったのですが遠方で情報も少なく、それほど手間もかけられないために、そのまま契約しました。ドミナントエリアなら、もっと良い業者を探せていたと思います。
僕の周りの成功している大家さんは、多くがドミナント戦略を使って規模を拡大しています。拡大のためには地場に根差した信用金庫等の融資が必要になることが理由のひとつでしょう。
また、賃貸需要に恵まれているスイートスポットを把握できることも大きいといえます。道一本違えば町の雰囲気が変わることはよくありますし、目には見えない学区で賃貸需要がまるで違うなんてことも珍しくありません。
不動産投資のやり方は人それぞれです。ただ僕自身は、地場に根ざした状態で小さな変化も自分で把握しながら賃貸事業を展開していくやり方があっていましたし、これからもこのやり方を続けていこうと思っています。