• 完全無料の健美家の売却査定で、できるだけ速く・高く売却

×

  • 収益物件掲載募集
  • 不動産投資セミナー掲載募集

工事会社破綻のリスクにどう備えるか?

西野浩樹さん_画像 西野浩樹さん 第57話 著者のプロフィールを見る

2023/2/7 掲載

先日、大手の建設会社が営業停止状態になっていると報道されました。主に都内でRC物件を手掛けていた会社のようです。建築中の物件で会社が破綻すると建物は建築途中で止まってしまいます。

建築途中の建物は、引き継いでくれる建築会社を探さなければいけませんが、それは簡単ではありません。建築会社が見つかった場合も、建ってから問題が発生した時の責任の所在が曖昧になるなどの問題が発生します。

これまで、木造の新築アパートを13棟建ててきた経験から、僕なりのリスクヘッジを考えてみましたので紹介します。

■ 新築アパート資金の支払い方

新築アパートを建てる場合の資金は、一般的に土地の購入の他に、着工金で1回、上棟で1回( 中間金 )、竣工で1回( 最終金 )の3回に分けて融資が実行されます。

木造の場合は最短で6カ月くらいで着工から竣工までの工程となります。建築会社によって比率は変わりますが、支払いの割合は着工金3割、上棟で3割、竣工で最終金4割というのが多いのではないでしょうか。

土地の購入は、土地に抵当権を設定してお金を借りることになりますが、建物分については建物が完成していないので銀行のアパートローン・プロパーローンを使うことはできません。

そのため、着工金と中間金は金融機関から「 つなぎ融資 」として手形貸し付け等で用意する必要が出てきます。

つなぎ融資の際には、期間6カ月間程で貸していただき、アパート完成後に土地家屋調査士に保存登記してもらってから抵当権を設定して、初めてアパートローン・プロパーローンに切り替わります。

6か月分の金利を払いますが、早く建った場合は、その分の金利は返ってきます。

今回のような事故があると、つなぎ融資の期間を再設定する必要が出てきます。つなぎ融資はリスクがある分、金利も高く設定されているため、長引けば長引いただけお金が出ていきます。

最悪、つなぎ融資を断られた場合には現金を用意して、完成までなんとか工事を進めないといけなくなります。それができなければ、工事途中の建物が残るだけです。

現金を用意する場合、1億円のアパートなら着工金3,000万円、中間金3,000万円程度が必要になるかもしれません。5,000万円のアパートなら着工金1,500万円、中間金1,500万円程度になるでしょう。

■ 破綻は見抜けたのか?

新築アパートを建てる場合、いくつかの施工会社で見積もりを取り、アパートのグレードや金額について納得できたら請負契約を結ぶことになると思います。

その際に、その会社の破綻リスクが高くないかも確認する必要があります。ただし、今回の会社は財務状況も悪くなく、帝国データバンクの情報を見てもこうなることを予想するのは難しかったようです。

財務状況が悪くなかったら調べようがない気もしますが、そこは別のルートを使ってでも、情報収集に励むことが大切です。

地方の場合は、銀行の数が多くないので借入する銀行が建築会社のメインバンクであることがよくあります。そんな時は、融資を申し込む時点で建築会社の財務もこっそり調べてもらいたいところです。

ただし、銀行には「 守秘義務 」があるので真正面から聞いても教えてもらえません。ところが、オーナーがお金を借りて、その建築会社が破綻してしまったら銀行にとってもリスクですので、聞き方によっては状況は変わってきます。

繰り返しますが、銀行の担当者は守秘義務があるため、建築会社の財務を調べることはあっても、それを施主にそのまま教えることはありません。もし、教えることにより建築会社の評判が落ちて倒産したら銀行が訴えられます。

それでも普段から銀行の担当者と良い関係ができていていれば、もしかすると何かのヒントを見せてくれるかもしれません。

僕はこれまで13棟建てた中で、一度だけつなぎ融資を断られたことがあります。何度もお願いする私に、担当者は「 これだけは言っておきますが、ニーノさんの方の問題で貸せないわけではないのです 」と小さな声で教えてくれました。

ここからは推測になりますが、つなぎ融資を断られた理由は建設会社の財務状況だったのでしょう。

その当時、まだ経験の少なかった自分にはそれが理解できず、建築請負契約も終わっていたため、銀行以外で借りる方法を模索し、アプラスのブリッジローンを使ってお金を工面しました。

金利や手数料が高くて迷いましたが、他に手がありませんでした。幸いにもアパートは無事に完成しました。完成後に保存登記をして、抵当権の設定と同時にアパートローンの融資を実行し、アプラスのブリッジローンを返済しました。

その時は危ない橋を渡っているつもりはありませんでしたが、今思えば幸運なだけだったのかもしれません。

■ どうすれば良いのか?

15年くらい前に、極端に建築単価の安いアパートメーカーが潰れたことがありました。建築中に会社が潰れてしまったので、建物の基礎だけで1年以上放置されていた現場がいくつもあったのをよく覚えています。

ここ数年、建築の材料費がどんどん上がり続けている影響で、建築単価も上がり続けています。見積もりの甘かった建築会社は上手く周らなくなり、結果として建築会社の破綻はこれから増えていくように思います。

施主はリスクヘッジとして、「 着工金の割合や中間金の割合を減らす 」といったことを考えるかもしれません。しかし、体力がある建築会社でないと、そうすることで逆に自転車操業が悪化してしまう可能性もあります。

建築会社には我々が思っているよりもずっと、タイトな資金繰りで仕事を回しているところも多いのです。着工金、中間金の割合を減らすことで、経営がまわっていた会社がまわらなくなってしまう可能性もあるということです。

ではどうすればいいかというと、基本は情報収集です。例えば会社の経営が上手くいっていないと、下請け会社への支払いが遅れたり、幹部社員が辞めたりします。調べる中でそういったウワサに出会うこともあります。

初めての物件が新築で、1棟目の建築会社が工事の途中で破綻したら、リカバリーは困難です。2棟目以降でも、土地からの新築で予定の工事がダメになった場合、余程の自己資金を持っていないと乗り切れないでしょう。自己破産するしかなくなる可能性もあります。

これまで、土地からの新築アパートは、空室リスクも低く優良な手法だと捉える向きが強かったです。しかし、今後は施工会社の破綻リスクも視野に入れ、自己資金を温存しながら進めることが重要でしょう。また、レバレッジのかけすぎも万が一の時のダメージを大きくします。

この先は不動産投資についての勉強はもちろんのこと、工事を完了させるまでのハンドリング能力も大家に強く求められそうです。
 
無料会員登録

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

アクセスランキング

  • 今日
  • 週間
  • 月間

プロフィール

西野浩樹(波乗りニーノ)さん

西野浩樹(波乗りニーノ)さんにしのひろき

FPと簿記1級の資格を持つ不動産投資家

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □1973年
    石川県金沢市に誕生
    流通系会社で労働組合の書記長として、組合員たちの相談に乗る中で、お金の知識の必要性を感じ、ファイナンシャルプランナーの資格を取得
  • □2007年
    社宅について調査する中で、富山市の土地値の安さと家賃の高さの歪みに気づき、富山市内で不動産投資をスタート
    その後、新築を中心に物件を買い進める
  • □2017年
    長年勤めた流通系の企業をセミリタイア
不動産投資歴
  • □2007年
    富山市内にアパートを新築(7室)売却済み
  • □2008年
    富山市内にアパートを新築(6室)
  • □2009年
    富山市内に借家を新築(2棟)
  • □2010年
    富山市内に借家を新築(2棟)
  • □2011年
    中古戸建購入
  • □2014年
    富山市内にアパートを新築(8室)
  • □2016年
    彦根市内に中古アパート購入(8室)
  • □2017年
    富山市内にアパ―トを新築(10室)
    彦根市内に中古アパートを購入(8室)
    彦根市内にアパートを新築(8室)
    彦根市内に中古戸建購入
  • □2018年
    彦根市内にアパートを新築(8室)
  • □2019年
    アパートを2棟新築(10室×2)
  • □2020年
    アパートを新築(12室)

    中古戸建、中古アパート、新築アパートを順調に増やす

    □2024年
    満室家賃年収約1億円、返済比率は46%年

閉じる

ページの
トップへ