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築40年アパートの建替え顛末記 〜ハウスメーカーの営業マンたちから学んだこと〜

落合淑彦さん_画像 落合淑彦さん 第18話 著者のプロフィールを見る

2012/5/10 掲載

■ 築40年のアパートと築70年の自宅をどうするか?

私は専業大家になる前の20数年間、会社勤めをしていました。今でこそ自分なりの賃貸経営の「 軸 」がありますが、大家になったばかりの頃は、知識もまだまだ。

そんな中で、私に学ぶ場を与えてくれたのは、実はハウスメーカーや建築会社の営業担当者でした。

私が大家業にかかわり始めた当時、物件は4棟44室ありました。そのうち1棟( 8室 )は築40年の古い木造アパート。古いとはいえ、家賃5万円で常に満室でしたし、これだけ古いと修繕費も逆に掛からず、納税を除いても400万以上のキャッシュがありました。

当時は「 賃貸経営とはなんぞや 」という状況でしたので、自分から規模を拡大するつもりはなく、この物件も建て替える予定はありませんでした。

しかし、2度に渡る信越・中越での地震で、古い建物が倒壊し、多数の住人が亡くなったと聞いたことで、気持ちが変わりました。

この築40年のアパートと同じ敷地内にある母の住まいが、このアパートより更に古い「 築70年 」だったことも関係しています。10年前に耐震工事はしたものの、その実力は未知数です。

A、何もしなければ、借入もなく、400万のキャッシュを確保できる
B、地震が来れば、実家もアパートもひとたまりもない


そのふたつの間で迷った結果、最終的には入居者様と母の安全を優先するために、銀行から融資を受けて「 自宅兼賃貸物件 」の新築にチャレンジすることにしました。

2007年の夏。本当に実現できるのか先が見えない中で、住宅展示場めぐりを始めました。

■ 10社のハウスメーカーのプレゼンを受ける

展示場をまわったあと、10社程にこちらの条件を提示して、プランを出してもらうことにしました。

私は東京在住で、物件は静岡にある遠隔地大家ですので、管理に関しては「 サブリース 」が絶対条件です。サブリースをつければ利益は減りますが、それでも回るビジネスプランを構築することを目指しました。

最も重要な収支に関しては、「 できるだけ自己資金を使わずに新築し、賃貸部分から年間400万円のキャッシュが確保できること 」を提示しました。

それがクリアできれば、実家がタダで建てられて、アパートの収益も変わらないことになります。戸数・総工費・借入には細かい条件はつけませんでした。

その中に面白いものがいくつかありました。例えば、以下のように2段階で目的を達成するプランです。

1、キャッシュを生み出しているアパートは温存し、自宅部分のみ先行して「 自宅兼賃貸物件 」を建設する
2、ある時期に古アパートを賃貸に建て替える


こちらは建設コストは割高( 無駄がある )になるものの、借入期間を30年で考えれば、当初10年のキャッシュはかなり多く確保できます。「 400万を生む古アパートを活用する 」という、我が家の事情がしっかりと勘案されていました。

RC4階建ての提案もありました。4階となると近隣との調整を含め、営業リスクはかなりあるはずです。営業マンはそれも承知していたのか、3階建プランも同時に持ってきました。

また、2x4を得意とする会社は、構造上、大規模な建物が難しいため、3階建てを2棟造る案を出してきました。ただ、この場合は駐車場の確保という問題が出てきます。

この3社はどれも、ファミリータイプをベースにしていました。我が家の敷地は駅から徒歩20分ながら、学区・スーパー・交通の便からして、確かにファミリー向きでした。

その他の会社は、単身者向けの1Rを提案してきました。戸数を稼ぐ30平米タイプから高めの家賃設定の40平米超タイプまで様々ありましたが、正直、どれも似たり寄ったりで「これは」という訴求力に欠けたことは事実です。

■ 判断基準は「 キャッシュフロー 」ひとつだけ

当時の私は「利回り」という言葉も知らなかったので、判断基準はすべて「キャッシュフロー」でした。「 400万円確保出来るか? 」からその企画がスタートしたことも影響しているといえます。

ところが、営業マンたちが持ってくる「 提案書 」は初年度の計算値のみ。
「 売上―必要経費( 固定資産税他、金利他 )― 返済( 元金 )>400万円 」
というパターンです。

しかし、実際のキャッシュフローは、この計算では出てきません。正確には、「 お尻の数字 」から「 所得税・住民税・事業税 」を払った残りが手残りとなるはずです。

さらに、5年で「 固定資産税の軽減 」が終わり、15年で「 設備の減価償却 」が終わり、工法によって22年・27年・34年・47年で「 建物の減価償却 」が終わり・・・・となってきますから、計算は複雑になります。

「たった一枚の計算書」からは、そのようなことは見えてきません。大きな借金をするのに、この提案書一枚で、ベストのひとつを選定することは不可能でした。

■ 50年分を検証すると脱落した「 ワンルーム 」

それからは、正しいキャッシュフローを求めるために、独学で税法を学びました。

そして、1年毎のキャッシュを計算し、それを50年続けた場合のグラフを作成。さらに、借入は30年/35年( いずれも固定金利 )、元金均等/元利均等で一社当たり数パターンのキャッシュフローをグラフ化しました。

このグラフ見れば、それぞれのプランの損益の差は一目瞭然でした。

これを各社の営業マンたちに見せた時点で、数社が脱落。「 建設費を○百万円下げますから 」という営業スタイルの会社は、もはや私に提案する術を持ちません。生き残った4社のうち、3社が税理士を連れてきました。

素人が独学で作った「 キャッシュフロー 」計算書でしたが、幸いにも致命的な間違いはなく、逆に税理士から「 お墨付き 」をいただきました。この過程で、「 消費税還付の仕組み 」も学び、私の知識レベルは飛躍的( 元々ゼロですから )に伸びました。

ここから先は、どのように「 売上=家賃 」を確保していくのか、50年分のビジネスプランを検証しました。 

最後に3社が残りましたが、築11年目以降、新築の強みを失ったあとの空室率や家賃の下落率を折り込んでみると、「 ワンルーム 」のプランを出していた会社が劣勢になり、脱落しました。

■ 決断の決め手となった銀行員の言葉

最後に残ったA社とB社は、キャッシュフローで見ると、年間の差が10数万円ありました。結局、私が選んだのは、キャッシュフローが10数万円多いA社のプラン。

最後の最後で決め手になったのは、アパートローン担当の銀行員が言った、「 A社で建てた大家さんはすべて満足していて、事故も一度も起きていません 」という言葉でした。

付けくわえると、私はここまで、「 建設費を○万円下げて」「家賃を○万円上げて 」というようなことは一度も言いませんでした。

交渉期間約4カ月、各社の営業マンたちの提案を読み解くために「 賃貸経営の外堀 」を学び、営業担当の提案を自分なりに加工するため、「 内堀を独学( これも各社営業がテーマを与えてくれました ) 」しました。各社をマネッジする際には、サラリーマンとしての感覚が活きました。

大変なこともありましたが、このとき、ハウスメーカーの営業マンたちとのやりとりから学んだことは、賃貸経営をする上での貴重な財産になっています。

※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

■ 落合淑彦さん

落合淑彦さん

4棟50室管理の専業大家
行動する大家さんの会スタッフ
全国大家ネットワーク会員

行動する大家さんの会のHP
行動する大家さんの会スタッフのブログ
全国大家ネットワークのHP

■ 経歴

1959年生まれ、東京都出身

早稲田大学卒業後、事務機メーカーに入社、海外営業および国内マーケティングを担当。

2006年、相続をきっかけに23年間勤めた会社を退社し、専業大家に。

2011年、不動産賃貸業を取り巻く環境や法律の理解と改善を目的に「 行動する大家さんの会 」を大家仲間6人で設立。

話題の更新料問題、消費税問題などに真正面から切り込むちょっと過激で真摯な姿勢が、大家仲間から珍しがられている( 「 珍しがられている 」の部分は本人談 )

■所有(管理)物件

・RC4階建て14戸
 ( 築40年の木造アパートを建て替え )

・RC3階建て12戸
 ( フルリノベーション中 )

・RC4階建て20戸
 ( フルリノベーション中 )

・軽量鉄骨4戸

場所はすべて静岡市内。
5年前に物件を引き継いでからの平均空室率は3.7%。


全国大家ネットワーク

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