前回の続きです。
私は、リフォーム・大規模修繕にかかる費用を、銀行のプロパー融資以外に、以下の3つの機関から調達しています。
1.日本政策金融公庫からの融資
2.( 東京 )信用保証協会保証付きの銀行からの融資
3.信販会社からのクレジット
どう使い分けているかのポイントは、大きく分けて次の3つです。
1)リフォームしようとしている物件が私個人の名義か、それとも私が大家業拡大の為に設立した資産保有法人の名義か。
2)リフォーム費用が多額なのか少額なのか。
⇒賃貸経営をしていると、1室だけの数十万円~2、3百万円程度のリフォームもあれば、外壁・鉄部塗装、屋上防水、配管交換を一斉に行う1千万円以上かかる大規模修繕もあります。
3)今後の取引金融機関団の構築をどうするか。
⇒これは信用保証協会を使うタイミングを考える上でのポイントになります。
使い分けのポイントの具体的な説明については、各機関を活用した調達方法を説明してからにします。今回は、まず「 日本政策金融公庫 」の特色等について説明します。
■「 日本政策金融公庫 」は名前に反して敷居が低い
実際に利用して慣れてくるとあまり感じないのですが、あらためて意識して読むと敷居が高そうなネーミングですね。確かにこちらは、日本を代表する政策金融機関、政府系金融機関なのですが、発足当時から、もっと中小企業や個人の事業者に親しみやすいネーミングの方が良いのでは、と個人的には思ってます。
以下、正式な略称でもある「 日本公庫 」と呼びます。
日本公庫は、100%政府出資の政府系金融機関です。国の政策に則った低利、固定金利、長期の民間金融機関に比べて基準の緩い融資制度を用意しておりネーミングに反して敷居は低いといえます。
日本公庫の前身は、国民生活金融公庫( 以下、国金 )、中小企業金融公庫( 以下、中小公庫 )、農林漁業金融公庫です。
私は銀行員時代、主に東京都区内と名古屋の支店で融資を担当していましたが、融資先の会社は大抵、国金か中小公庫から融資を受けていました。
借りる側にとっては魅力が高い「 無担保で長期・低めの固定金利での融資 」ですが、民間銀行の基準では難しいことも関係しています。
イメージ的には、町の八百屋さんやパン屋さんなどの小さなお店が融資を受けているのが国金。数十人以上の社員がいるような会社や工場が中小公庫といった感じだったでしょうか。中には、国金からも中小公庫からも融資を受けている先もありました。
2008年に統合して、日本公庫となった今も、旧国金の流れを組む「 国民生活事業 」と旧中小公庫の流れを組む「 中小企業事業 」は明確に窓口が異なります。
残念ながら不動産業のうち「 住宅の賃貸業 」については、融資限度額が大きく、融資期間も長い「 中小企業事業 」の融資対象にはなりません。ですので、主に住宅を貸している大家さんが利用できるのは、日本公庫の「 国民生活事業 」部門となります。
■ 無担保融資が8割、創業したての企業にも優しい
「 国民生活事業 」部門の融資先の約9割は従業員9人以下であり、約4割が個人企業です。約8割が「 無担保融資 」で、第三者の保証によらない融資の割合も全体の件数の7割を超えています。「 国民生活事業 」の主な制度の融資限度額は7,200万円ですが、1企業あたりの融資額の平均は600万円台と少額です。
日銀の調査によると全国の信用金庫の1企業あたりの融資額の平均は約3,500万円、国内の銀行の1企業あたりの融資額の平均は約8,100万円。その小口ぶりがよくわかりますね。民間の金融機関で日本公庫のような少額融資ばかりしていたら採算が合わないのでしょう。
また、民間の銀行があまり相手にしない創業前および創業したての企業に対しても積極的に融資を行っています。このように、日本公庫は大家さんになりたての方にとって優しくて頼もしい存在なのです。
■ 1棟物の購入には不向きだが、修繕費等の調達には便利
ただ、「 超長期 」の融資をあたりまえのように望む大家さんの基準から考えると、融資期間はあまり長くはありません。
設備資金で原則10年以内。制度により10年以上~20年借りられる場合もありますが、基本10年以内と考えた方が良いでしょう。
金利は無担保・第三者保証人無し・期間10年の条件で、このコラムを書いている時点で固定3.0%ですが、いろいろな融資制度を利用できれば、それより低くなることもあります。
私が最近日本公庫から借りた時の金利は、当初2年間の金利が1%台前半、その後8年間の金利が1%台後半でした。
日本公庫の融資は固定金利ですが、繰上返済しても違約金がかからないこともメリットです。
また1企業あたりの融資額の平均は600万円台と述べましたが、不動産賃貸業として既に実績があれば、無担保でも1,000万円以上融資してくれます。
しかし、融資限度額は7,200万円ですし、融資期間の縛りもありますから、1棟物の収益物件を取得するのに利用するのは難しそうです。とはいえ、リフォーム・大規模修繕の費用を調達するには使い勝手の良い金融機関といえます。
続きは次回に。