参照:アパートローンとプロパーローンの違い。プロパーローンでの銀行との付き合い方
前置きとして、前回説明したように、最近の銀行は、プロパー融資やアパートローンを支店で取り扱わず、法人営業部やブロック、ローンプラザなどのフロント専門部署が担当していることがあり、責任者の役職も支店長以外に部長等いろいろな肩書で呼称されています。
ですので、このコラムでは便宜上フロントを「 支店 」、その責任者を「 支店長 」に統一します。
■ 保証付アパートローンとプロパー融資の手続きの流れ
プロパー融資でもアパートローンでも、銀行と上手く付き合うには、まず融資を申し込んだときに、どのような流れで審査され、実行されるかについて知っておく必要があります。
銀行の融資審査は組織として動いています。一人の裁量で決まるものではありません。何段階ものチェックを経て、融資の可否を決定します。
下記の流れは、一例です。
<支店>
担当者 → 融資課長 → 支店長( プロパー融資支店長決裁権限内だと、ここで審査終了 )
アパートローンもプロパー融資も、まずは支店の担当者が案件の受付をします。融資希望者から書類・資料等を提出してもらい、融資の可否を検討します。
銀行によっては担当者ベースでもこの融資は無理だと判断し、上席に回付しないで謝絶するケースもあります。特に既存のプロパー融資先だと銀行内での格付けが決まっており、融資検討を上席がしたこともあるので、判断が早くなる傾向にあります。
支店内で融資の可否について検討し、支店長の承諾を得ると、プロパー融資の場合で支店長の決裁権限範囲内だと、それで審査は終了となり、融資実行可の状態となります。
支店長の権限は銀行によって違いますし、同じ銀行でも支店の規模よっても違います。
信金→地銀→メガバンクのように銀行の規模が大きくなるほど、また、住宅エリア店→郊外主要繁華街店→都心繁華街・都心ビジネス街にある支店、のように店格が上になるほど、支店長までで決裁可能な融資限度額は変わります。
銀行によっては、店格が低い支店だと1千万円程度、店格が高い支店だと数億円以上と大きく差があります。
もし、ある銀行に新規に融資を申し込む場合に、支店ごとのテリトリーが決まっていないか緩いかで、取引支店を選べる場合には、店格が高い支店にいったほうが有利なこともあります。
ただし、メガバンクは支店でなく、いくつかの支店を所管する法人専門部署が融資を担当し、融資希望者の規模に応じた部署に振り分けられるので、あまり関係ないことが多いです。
余談ですが、下記の本部審査になる場合、支店長の承認を得た段階で「事前稟議」「事前審査」が通ったと言われることが多いのではないでしょうか。これは銀行共通のルールではないので、一概には言えませんが。
<保証付アパートローン場合>
→ 保証会社
保証会社の保証付きのアパートローンの場合、支店長の承諾を得ると、通常提携する保証会社に審査書類が送付されます。そして、保証会社の承認を得ると融資実行可能になります。
<プロパー融資本部審査>
→ 審査部審査役 → 審査部上席審査役 → 審査部長→ 審査担当役員 → 常務 → 専務 → 役員会
プロパー融資で融資金額が支店長権限を越える場合や融資期間・利率・担保保全額などの融資条件が支店長の裁量からはずれる場合は、支店長承諾の後に稟議書が本部の審査部(銀行によって他の名称のことも)に送付されます。
そこで各銀行毎の行内規定に従い、主に金額を基準にして、融資額が多いほど上席に稟議書が回付され決裁されます。
メガバンクの場合、個人の大家さんは審査役か、その上席までなことが多いです。しかし、同じ融資額でも信用金庫や信用組合では役員会に稟議がのぼることもあります。
プロパー融資で本部の各段階の方が稟議決裁に難色を示した場合、その融資はすぐさま否決されてしまうのか。そんなことはありません。一方的に否決されるのではなく、支店と可否について、やりとりします。
稟議書では「 モノ 」( =事業計画 )や「 カネ 」( =財務内容 )についてはわかりやすいですが、「 ヒト 」( =経営者 )については比較的わかりづらいです。
支店担当者や支店長が審査部と稟議検討についてやりとりしますが、場合によってはリアルに本部に出向いて、直接説明することもあります。そして、融資が出るか出ないかのギリギリのラインの場合、最後は支店担当者や支店長の熱意のこもった説明で決まることもあります。
■ プロパー融資での支店との上手な付き合い方
では、本部に対して支店の担当者や支店長に熱意のこもった説得してもらうには、どうすれば良いか。そのためには、普段のコミュニケーションや融資以外の取引が重要です。
プロパー融資の基本は経営者と担当者・支店長との日常のコミュニケーションです。まず、プロパー融資の支店担当者や支店長は、不動産賃貸業者だけを相手にしているわけではないことを念頭においてください。
時々、大規模な不動産投資家の方々と話していて、「 銀行員は不動産投資のことを理解していない 」と、お聞きすることがあります。まったく、その通りです。
私も、元々不動産好きで、大学時代に宅建の資格を取得し、メインの志望業種は銀行でなく不動産会社で、銀行員時代に大手上場企業の不動産会社も担当していましたが、今思えば、現役銀行員時代は不動産投資素人でした。
続きは次回に