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ユービーエムは氷山の一角。建築会社の倒産増加。今年は更に注意が必要な理由

岡元公夫さん_画像 岡元公夫さん 第153話 著者のプロフィールを見る

2023/5/2 掲載

昨年4月に「 今年、建築会社や工務店の倒産リスクに注意が必要な理由 」のタイトルで建設会社の倒産について注意喚起をしました。残念ながら予想は当たり、コラムに書いた通りの状況が進行しています。

結果として、中小企業庁の発表では、2022年の建設業の倒産件数は1,194件。2021年まで減少傾向で推移していましたが、転じて12%増となりました。

今回は、その要因について確認し、なぜ今年は更に注意しなければならないか解説します。

■ 倒産件数が増えた理由

1)建築資材や住宅設備の高騰・納入遅延

元々コロナ禍で、世界中の工場の操業が停止したり、物流が滞り、納期が遅延したうえに、価格も高騰していました。そこに昨年2月のロシアのウクライナ侵攻です。石油や天然ガスを主体に世界経済に大きな影響を与えました。

欧米では、急速にインフレが進み、それを抑えるため急速な利上げを開始。金利差拡大により大幅な円安になり、輸入している資材・設備・エネルギーが更に高騰する事態となりました。

建設業は、見積り・契約から竣工迄の期間が長く、資材等価格の急な高騰、納期の遅延により、利益が圧迫されました。

2)人手不足

建設業は、3K( きつい・汚い・危険 )と労働条件が厳しい職業であることから、若手が就業を希望せず、就業者の高齢化が慢性的に進行しています。

更に、昨年はコロナ禍で外国人労働者が来日できなくなっていました。人材を確保するために賃上げする傾向にありますが、それができなかったり、しない会社からは、人材が流出します。

建設業は、施工管理者など工事を進めるにあたり必要不可欠な資格が多く、有資格者が転職してしまうと、事業継続自体が困難になってしまいます。

3)資金繰り

建設業に限らず、会社が倒産する時は、資金繰りに窮した時が大半です。
2021年頃は、コロナ禍対策として、政府による各種給付金や実質無利子・無担保のゼロゼロ融資が盛んに行われ、倒産せず延命していた会社もありました。

しかし、昨年は給付金やゼロゼロ融資を枠一杯使い切り、持ちこたえきれなくなった会社が増えてきたのです。

■ ユービーエムの倒産

今年2月に投資用マンション新築工事で急成長したユービーエム(株)が破産しました。私の知人でもユービーエムで新築中の方がおり、相談を受けました。

私は、銀行員時代に主に融資を担当していたので、建設会社の倒産は直接の担当や手形の割引などを通じて、リアルに触れてきました。本件は、倒産する建設会社を見分ける上で注意すべきポイントが多いので、具体例として取り上げます。

ユービーエムは、1991年設立で、当初は小規模な建築・リフォーム工事や建築材料卸を手掛け、2014年までの売上高は3億~4億円程度でした。

その後、投資用マンションの新築工事を手掛けるようになり、売り上げは、2018年には約20億、2019年は約39億、2020年には約68億、2021年には約104億、2022年には約105億と急拡大しました。

あくまで売り上げの話です。大家業やほかの事業でも言えることですが、規模を大きくするだけでは自慢にもなりません。利益を着実に計上すること。そしてキャッシュを潤沢にして資金繰りを円滑にすることが肝要です。

建設会社・工務店の資金繰りには、大きく分けて、

①先にキャッシュを受け入れ、支払いが後になるパターン
②支払いを先にして、後からキャッシュが入るパターン


の二つがあります。

①のパターンは、私達大家が賃貸物件の新築工事を発注する場合やマイホームとして注文住宅の新築を依頼する時に多いです。施主からは、着工時・上棟時・竣工時などに分けて、先にキャッシュが入ります。

それに対し、資材・住宅設備などの仕入れや外注先への支払いは、1~2カ月後になることが多いです。①のパターンの場合、売上が増加している時は、手元資金も増え、資金繰りは楽なことが多いです。

②のパターンは、マンションデベロッパーやゼネコンから工事を請け負う場合に多いです。支払いは、①のパターンと同様のことが多いですが、問題はキャッシュの入金時期です。

投資用マンションのデベロッパーは資金調達力の弱い会社が多く、建設会社への工事代金の支払いは、着工時・上棟時10~20%程度、竣工時に80%以上というケースもあります。

また現金化されるのが3~4ヶ月後の受取手形や電子記録債権で支払われることもあります。これらの債権は銀行で早めに現金化することもできますが、金利負担が生じますし、会社によっては断わられるケースもあります。

②のパターンでは、売り上げを増やせば増やすほど、資金繰りがタイトになり、金融機関から運転資金を調達できないと、資金繰りに窮することになります。

ユービーエムは、①と②の両パターンを手掛けていましたが、スルガショックの影響か分かりませんが、直近は業者からの受注割合、つまり②のパターンの割合が高くなっていたようです。

ユービーエムの破綻は、②のパターンの割合が増えて資金繰りがタイトになったところに、コロナ禍で建築資材が急騰し利益の薄い案件が増えたことの影響が大きいのではないでしょうか。

それ以外にも架空取引に手を染め、信用を失ったなどの理由もあるようですが…。

■ 今年は更に気を付けないといけない理由

ユービーエムに限らず、昨年は資材価格の高騰や人件費増により、財務内容を傷めた会社は少なくないでしょう。それは、今年の決算書に反映されます。そこにゼロゼロ融資の返済開始です。返済開始時期は昨年末辺りから今年前半にピークを迎えます。

十分な利益を計上できておらず、税引き後キャッシュフローでゼロゼロ融資の返済をできなければ、金融機関からプロパー融資で折り返し資金を調達しなければなりません。しかし、決算内容次第では、融資を受けられないかもしれません。

その先に待っているのは資金繰り破綻です。

大家・不動産投資家としては、上記から読み取れるように、

・売上が急拡大している
・以前在籍していた現場担当者が退職している
・あまりにも受注価格が安い


といった会社は注意したほうが良いでしょう。もちろん経営努力で施工費が安く、急拡大していても優良な会社もありますから、見極めが大切です。

見極め方法については、第130話「 手抜き工事業者を回避する4つの方法 」も参考にしてください。

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※ 記事の内容は執筆時点での情報を基にしています。投資等のご判断は各個人の責任でお願いします。

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プロフィール

岡元公夫さん

岡元公夫さんおかもときみお

亡き父と2代続けての元メガバンカー。
銀行員時代は、東証一部上場の大手不動産会社から個人の大家さんまで、融資主体に幅広く担当。
実家は祖父の代からの小規模ながらの大家さん。

プロフィールの詳細を見る

経歴
  • □2004年
    実家の跡を継ぎ、東京城北エリアでマンション・アパート・戸建を取得開始。

    □2008年2月
    不動産賃貸業の修行の為、不動産開発・運営会社に転職し、プロパティマネジメントの責任者となる。

    □2009年10月
    不動産収入が年間6千万円ほどになり、デッドクロスもクリアできる目途がついたことから、サラリーマンを卒業。

    □2011年
    東京エステートバンク株式会社(東京房屋®)を設立。国内・台湾・中国の投資家・会社経営者の方にコンサルティングを行っている。
不動産投資歴
  • □築44年RCマンション
    1LDK×4戸、2K×8戸

    □築28年RCマンション
    1R×10戸

    □築21年鉄骨マンション
    2LDK×6戸、2DK×6戸

    □築14年木造アパート
    1R×5戸、2DK×2戸

    □登記上築60年 木造戸建(実態は新築同様)
    2LDK×1戸

    □木造戸建てリノベシェアハウス
    2棟×10室

    □区分所有マンション
    2LDK×1戸

    □駐車場12台
    バイクガレージ26台

    □再開発予定木造戸建
    3棟
保有資格

宅地建物取引主任者
ファイナンシャルプランナー
その他生損保等金融関連諸々
税理士試験科目合格
(簿・財・相・固)

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