当時はバブル崩壊の底から不動産価格が上がり始めていた頃で、おかげさまで今の不動産相場と比較して大幅に安く取得することができました。今のキャッシュフローの基盤を作ってくれた孝行物件たちです。ただ、経年劣化は避けがたいです。
不動産投資開始直後に、既に昭和50年代築のほぼ原状回復しかしていなかったRCマンションがあり、取得直後から空室・家賃低水準に悩んでいました。
その頃は、初心者向け不動産投資本も少なく、SNSもなく、工務店さん・職人さんと試行錯誤しながらリフォーム・リノベーションをしていました。
その後、金融機関のサラリーマンを卒業し、不動産会社を立ち上げました。今では国内・海外の投資家さん達からも物件管理を受けるようになり、それらの物件のリフォーム・リノベーション・不具合修繕も手掛けるようになりました。
今回は、20年の経験の中で培ったリフォーム・リノベーションのポイントと、今になって後悔していることについて語ります。
■ リノベーションをするかどうかのポイント
原状回復・リフォーム・リノベーションの定義について、私は次のように解釈しています。
・原状回復は退去時に入居時の状態に戻すこと
・リフォームは、老朽化した設備や床材等を新築時に近い状態に戻すこと
・リノベーションは、リフォームに加え、間取りの変更や水まわりの移動など住宅に新たな価値をプラスすること
原状回復は、程度の差はあれ退去時には必須です。リフォームも経年劣化により必要になってきます。一方、リノベーションは必ずやらなければならないものではありません。
では、どのような場合に、やる必要があるのでしょうか。それは、次の2つだと私は考えています。
1)高い費用対効果が見込めること
リノベーションは、リフォームに比べて多額の費用が掛かります。不動産投資においてリノベーションをするのは、掛けた費用以上に収益獲得が見込める時です。
リノベーションによって、どれだけ空室期間を短くし、家賃を上げられるか。また、出口戦略として売却を検討しているなら家賃増加による利回り上昇により、売却価格がどの程度上がるか、総合的に検討する必要があります。
2)リノベーション後の物件に需要があること
リノベーションでは間取りの変更や水まわりの移動などを行いますが、それらをすることによってできた部屋を望んでいる方々が、その物件のエリアにどれだけいるか把握することが重要です。
■ 築古マンションのリノベーションの成果と後悔していること
一例として、私が所有している昭和50年代築のRCマンションを取り上げます。
この物件の当初の間取りは、14戸中12戸が2Kでした。しかも二室とも畳の和室です。トイレは和式で風呂はバランス釜。東京都区内山手線沿線でも家賃は8万円台でした。
試行錯誤で原状回復やリフォームを行っていたものの、入居付けは苦戦が続きました。そのうち、いろいろなセミナーや勉強会、書籍などで知識を得て、費用を掛けてもリノベーションをしたほうがメリットあるという決論に達しました。
そして、実際にリノベーション工事を行いました。下記がリノベ後の間取り図です。

バルコニー側の部屋と台所の間の引き戸を取っ払い、キッチンと合わせてLDKにしました。和式のトイレは壁ごと撤去して、脱衣所兼洋式トイレにして独立洗面台も新設しました。またベランダにあった洗濯機置き場は、玄関キッチン横に移設しました。
次が室内のビフォーアフターの写真です。
ビフォー

アフター

雰囲気が一新されているのがわかると思います。コストを抑えるために気を付けたことは、水回りの位置を極力変えないこと。給水管はともかく、排水管の一部は下の階の天井内にありますので、入居者がいる時の工事は困難です。
もう一つは、壁の増設・移設を少なくすること。これもコストが掛かります。この物件では、トイレ等の壁を一部撤去しましたが、増設はしていません。
この物件で退去があるたびに、上記のようなリノベーションを行うと同時に、家賃を3割程度アップしています。かかった費用は7〜8年で回収見込みです。
更に、リノベ資金はその都度、期間15年のリフォームローンで調達していますので、リノベーション工事を行えば行うほど、キャッシュフローはプラスになります。
ただ、本物件は都区内にあり、リノベ後に家賃をアップしても賃貸需要があるから、これが成り立ちます。家賃相場が低く、似たスペックの物件が供給過多なエリアの場合、かけた費用を家賃に反映できるとは限りません。
そのような場合は、リノベーションせずに家賃を現状維持か、下げたほうが費用対効果が良いかもしれません。
■ リフォーム・リノベーションで、今になって後悔していること
平成初め頃までに建てられた物件は、水道管に鉄管を使用していることが多いです。鉄管は内部が錆びてきて漏水しやすくなります。
リノベーションをするようになってからは、水回りを取り替える時は、共用部から給水管を引き直しています。しかし、不動産投資を始めたころは、リフォームをしてもそれをしないこともありました。
そのため、後になって漏水が起き、工事が発生することがあります。入居中の漏水やその工事は費用も手間もかかりますし、入居者に迷惑もかかります。最初から交換しておくべきでした。
更に、最近ガスの点検時に、ある部屋でガス漏れしていることがわかりました。水道管は錆びたりすることもあるかなと思っていましたが、室内のガス管からガス漏れするとは想定外でした。
ガス会社さんがすぐに来てくれて、ガス管内のライニング工事でガス漏れを止めようとしましたが駄目でした。共用部から仮配管をつないで、入居者さんはガスを即日使用できましたが、本工事がまた必要です。

リノベーションの際に、水道管のチェックだけでなく、ガス管のチェックも行い、交換しておくべきでした。建物の老朽化は待ったなしです。私の反省が皆様の参考になれば幸いです。