前回の続きです。
今回は実際に資産管理会社を設立する際のポイントについて説明します。
ポイントは、3点。資本金額、及び株主構成と代表者・役員についてです。
■ 1、資本金はいくらにするか?
以前は、株式会社設立時の資本金は、最低でも1,000万円必要でした。それが現在では資本金は、法律上は1円でもよくなりました。
では、実際に大家さんが資産管理会社を設立する時の資本金額はいくらぐらいが適切なのでしょうか?
私は、資産管理会社を設立する方の法人の活用方法と考えている投資ペース、そして相続対策への取り組みを勘案して、アドバイスしています。
まず融資の点からは、最低100万円は出資した方が良いでしょう。
第4話「 銀行が融資したがる大家さんとは? 」で説明していますが、金融機関は融資先から決算資料を受け取ると、その財務内容をコンピューターに入力します。
各金融機関の入力ルールにもよりますが、百万円単位で入力し、堅めに査定する金融機関では、端数は切捨て( 赤字の場合は切り上げ )られる傾向があります。
数十万円の出資では、資本金が0円とインプットされるかもしれません。
さらに会社設立当初は、売上がないのに、設立にかかわる諸費用や税金で赤字決算になることも多いです。
資本金が少なく、いきなり1円でも債務超過になった場合、金融機関の財務データ上では、1百万円の債務超過として認識されることもあります。
資産管理会社への融資判断は大家さん個人と合算であるため、致命傷にはなるとは限らないものの、金融機関によっては審査手続き上、融資の可否に影響が出てくるかもしれません。
そのような意味でも、債務超過にならないだけの資本金は設立時に出資した方が良いといえます。
かといって、大きい資本金額で設立した方が良いかというと、それも違います。相続税対策のために会社を作る場合などは、大きな額を入れない方がいいこともあるので注意が必要です。
■ 2、株主は誰にするか?
資産管理法人の出資者は、大家さん自身でなくてもかまいません。奥さんやお子さんでも大丈夫です。
金融機関は、資産管理会社で融資を受ける時に大家さん自身が「 連帯保証 」すれば、「 一体 」として見てくれるところが多いです。
仮に大家さん自身が個人で純資産を築きつつある時に、更に自分が出資している資産管理会社で純資産を積み増したら、将来多額の相続税がかかるかもしれません。
「自分は相続税なんてかからないから関係ない」と思っていても、相続税は今後強化される方向です。今の状況ではかからなくても、将来はどうなるかわかりません。
でも、相続税のことを考慮するために奥さんやお子さんを出資者にしたくても、家族がその資金を持っていない場合はどうすれば良いのでしょうか?
早めに資産管理会社を設立した方が良いというのは、ここでも活かされます。こういう場合は、まずは大家さん自身が出資して、数年に分けて家族に持ち分を贈与していきます。
資産管理法人の株式は、純資産価額方式で評価されますので、収益不動産を自社保有せず、純資産価額が低い時に贈与していけば効果的です。
■ 3、代表者・役員は誰にするか?
資産管理法人を活用するメリットとして、所得の分散による税率引き下げによる節税があげられます。
大家さん自身がサラリーマンとして給与所得があり、大家さんとしても不動産所得がある場合、家族に設立法人の代表者・役員になってもらい、役員報酬を支払います。
所得税は、累進税率ですので、所得を分散すれば、税率も下がります。また給与所得控除という必要経費の概算額を各々差し引くこともできます。
他にも、公務員や兼業副業禁止規定が厳しい企業で働く方が不動産投資をしたい場合、家族を代表者・役員にして、自らは一株主として法人で収益不動産を購入するのも、資産管理会社を活用するメリットといえます。
資本金額、株主構成、代表者役員構成の三点について今回は説明しました。
この三点のうち、特に資本金額と株主構成については、当初から計画的に進める必要があります。
私も銀行員時代から現在にいたるまで、多くの方に資産管理法人についてアドバイスしてきてますが、それぞれの資産背景・家族構成・ライフプランによって、提案内容は千差万別です。
よく勉強し、専門家に相談のうえ、資産管理法人を活用して頂ければと思います。